ワクチン接種歴“厚労省と感染研で統計差は不適切”後藤厚労相

新型コロナ感染者の集計をめぐり、後藤厚生労働大臣は、厚生労働省が感染者の情報を一元管理するシステムで、ワクチンの接種歴が記入されていない場合は「未接種」と分類したため、国立感染症研究所と統計に差が生じていたのは不適切だったと釈明しました。

新型コロナ感染者の集計をめぐり、厚生労働省は、5月まで、感染者の情報を一元管理するシステム「HERーSYS」にワクチンの接種歴が記入されていない場合は「未接種」と分類してきました。

これについて、後藤厚生労働大臣は、記者会見で「当初は接種者が非常に少なかったことから、医療機関や保健所など、現場の入力負担を少しでも軽減する観点から、接種歴を選択していない場合は『未接種』と分類していた。入力画面のデフォルトを『未記入』に変更したあとも、従来通りの取り扱いにのっとって発表していた」と述べました。

一方、5月に国立感染症研究所に合わせる形で「接種歴不明」と分類するよう扱いを見直したことについて「厚生労働省と感染研の数字のかい離が時間の経過とともに大きくなったため、整合性を確保する観点から『接種歴不明』と取り扱うことにした」と釈明しました。

そのうえで、後藤大臣は「同じ種類の数字について、厚生労働省と感染研の扱いが違い、統計数字が異なってくるというのは不適切だ」と述べました。

集計見直しの経緯は

今回、厚生労働省が集計を見直したのは、人口10万人当たりの新型コロナウイルスの新規感染者数をワクチンの接種回数ごとにまとめたデータです。

厚生労働省は新規感染者のデータを集約する「HERーSYS」と呼ばれるシステムを使って「未接種」と「2回目接種済み」「3回目接種済み」それに「接種歴不明」に分類して、医療機関や保健所にデータを入力してもらっていますが、入力がない場合は「接種歴不明」でなく「未接種」に計上してきました。

一方、所管する国立感染症研究所は接種歴の入力がない人について、去年12月から「未接種」ではなく「接種歴不明」に計上して公表するよう改め、厚生労働省も先月11日の公表分から感染症研究所と同じ集計方法に見直したということです。

この結果、10万人当たりの新規感染者数は、集計を見直す直前の1週間ではすべての年代で「未接種」が「2回目接種済み」を上回ったのに対し、見直した直後の1週間では40代と60代、70代で「未接種」が「2回目接種済み」を下回りました。

厚生労働省は先月になって集計方法を見直した理由について、国立感染症研究所の公表データとのかい離が大きくなったためとしていて「もともとはワクチンを接種しても感染する『ブレイクスルー感染』を把握するために集計を始めたが、当初は接種歴がある新規感染者が少なかったので、医療機関や保健所の入力業務の負担を軽くするために未接種として集計していた。ワクチン接種の効果を高く見せようとしたり、未接種の感染者数を多く見せたりしようとする意図はなかった」としています。