なんでせんそうしてるの?ウクライナ侵攻 小学生1000のギモン

なんでせんそうしてるの?ウクライナ侵攻 小学生1000のギモン
「なんでせんそうしているの?」
「どうして人がころされてしまうの?」

ウクライナでの戦争(せんそう)で、小学生のみんなが「わからない」と思っていることを聞かせてくれました。そんな質問にNHKの解説委員(かいせついいん)の人が答えます。

※大人のみなさまへ※
子どもたちが寄せてくれた1000もの質問は、大人でも簡単には答えられないものばかりです。鋭く本質を突いた子どもたちの疑問、よろしければご一緒に考えてみていただければと思います。

目次

※質問をクリックするとその場所に飛びます
「なんでプーチン大統領は、ウクライナを攻撃するの?」
(愛知県 小学6年生)
「戦争は人の命を多く奪ってしまう危険なものなのに、どうしてそんなひどいことをするの」
(長野県 小学4年生)
「なぜプーチン大統領は自分の国の人や、ウクライナの人を殺してまで国を奪いたいのか」
(静岡県 小学5年生)
寄せられた質問の一部です。

ことし4月、静岡、長野、岐阜、愛知の4つの県の10の小学校に協力してもらい、4年生から6年生までの児童に「ウクライナとロシアのニュースを見て疑問に思うこと、わからないこと、気になっていること」をたずね、980人から回答が寄せられました。

ほとんどの子どもたちにとって、メディアで連日戦争のニュースが伝えられるのを見るのは初めてのこと。回答の多くは質問というよりむしろ「率直な疑問」で、大人でも簡単に答えられるものではありません。

その問いと向き合うのはこちらの2人。
NHK解説委員の安間英夫と鴨志田郷。

安間解説委員はモスクワ駐在経験もありロシア取材一筋28年。一方の鴨志田解説委員は各地の紛争現場を取材し国連取材の経験も豊富。

それぞれ、ロシアのこと、紛争のことにとても詳しい2人ですが、今回の子どもたちの質問にはどう答えればいいのか悩み、迷い、考えに考えました。

それでもわからないところもあり、そこは率直に「わからない」としたうえで、別の考え方や見方もあることを前提に、自分自身の考えにも踏み込んで解説しています。

現場では日々事態が動いていますが、この記事は6月2日時点の情報で書いています。

ではまずはじめに、最も多かったこちらの質問からです。
Q1 ロシアはなぜウクライナを攻撃しているのか、どうして戦争がはじまったか
(静岡県 ゆりさん 5年生、長野県 るきさん 6年生ら 397人)
鴨志田解説委員(かもしだ かいせついいん)

日本で暮(く)らすみんなにとって、どうして今「戦争」が起きているのか、どうしてロシアという国がウクライナという別の国を攻撃(こうげき)しているのか、よくわからないと思います。

いま起きているのは、ロシアが世界のルールをやぶってウクライナに攻(せ)めこみ、力づくで国の一部をうばおうとしているということです。それにウクライナが抵抗(ていこう)して、国を守ろうと戦っています

悲しいことだけど、戦争は、実はむかしから世界中で何度(なんど)も繰(く)り返されてきました。

「国」というものができてからは「国と国」との戦争が繰り返されて、たくさんの人が亡(な)くなるという、悲しい結果をもたらしてきました。戦争に勝った国が負けた国を支配(しはい)し、「勝ったほうが正しい」という考え方があたりまえだったんです。

その後、きみたちが生まれる100年ほど前に多くの国が集(あつ)まって、国と国との問題を解決(かいけつ)する方法として『戦争をするのはまちがっている』という考え方について考えるようになりました。

たくさんの国をまきこんだ2度の大きな戦争「世界大戦(せかいたいせん)」で多くの人が傷(きず)ついたり亡くなったりしたので『おたがいを傷つけ合ったり、たくさんの人が死ぬ戦争をやめないといけない』という考え方がだんだん広がっていったんです。
その後、世界中の国で一緒(いっしょ)につくる「国際連合(こくさいれんごう)」という組織(そしき)もできて、戦争が起きそうになったら止めるための仕組みもできました。それでも、止められなかった戦争もたくさんあります。

今回のロシアも止めることができませんでした。ロシアは国際連合で大きな力をもつ5つの国のうちの1つで、そういう世界のルールを無視(むし)して戦争を始(はじ)めてしまったからです。
▼安間解説委員(あんま かいせついいん)

「ロシアはどうしてウクライナを攻撃しているのか」

これはロシアを取材してきた私(わたし)も理解(りかい)がむずかしく、疑問(ぎもん)に思っていることなんです。

ロシアのプーチン大統領(だいとうりょう)はいろんな場所で理由(りゆう)を説明(せつめい)していますが、それを聞いても、ほかの国を攻めるほどの理由だとは思えないからです。

みんなには、プーチン大統領が話していることと、ウクライナ側はどう考えているのかを説明したいと思います。
<プーチン大統領はどうして?>
まずプーチン大統領は、隣(となり)の国のウクライナに特別な思いを持っていました。

「同じ民族(みんぞく)の国で、同じ歴史(れきし)や文化を持っている。ロシアもウクライナも昔は1つの国だった」などと話しています。
ロシアとウクライナは「兄弟」とも言っています。

でも、ウクライナがアメリカとヨーロッパのたくさんの国が入っているグループ「NATO(ナトー)(=北大西洋条約機構・きたたいせいようじょうやくきこう)」に入ろうとしたので、ロシアは自分たちが攻められるかもしれないと心配(しんぱい)だというのです。

NATOは長いあいだ、ロシアの敵と考えられてきたため、ロシアは「NATO」のことを信じることができないからです。
「NATO」に入ろうとしただけで、どうしてロシアはそんなに心配するの?と思うかもしれません。そのわけはロシアがたどってきた歴史にあります。

日本は「島国」でまわりを海に囲(かこ)まれているので、陸続き(りくつづき)でほかの国とつながっているところはありませんね。でもロシアは陸でたくさんの国とつながっています。

今ロシアがある地域には昔から繰り返し、ほかの国が攻めてきていて、第2次世界大戦ではナチス・ドイツが攻めてきて戦いになり、たくさん人が亡くなったことがあります。だからプーチン大統領は、今もほかの国から攻められることをとてもこわがっているんです。

そしてまわりの国を仲間にして、敵(てき)がすぐに攻めてこれないようにしたいと思っています。そのため、ロシアとは仲間にならずに「NATO」に入ろうとする今のウクライナのことを、プーチン大統領はよく思わないようになりました。
また、ウクライナとロシアとの国境(こっきょう)近くの地域にはウクライナ政府よりロシアやプーチン大統領をよく思っている人たちも住んでいます。

プーチン大統領はこの人たちが「ウクライナ政府(せいふ)からひどいことをされているので、たすけないといけない」と言って、ウクライナを攻めているのです。
<ウクライナ側はどう考えているの?>
ロシアの攻撃は世界のルールをあきらかにやぶった、まったく許されないもので、ウクライナはこのような戦いをしたいわけではありません。もともとロシアに攻められる理由はないと考えています。

ウクライナからすれば、ウクライナはロシアとは別の国で、ウクライナ人はロシア人と近い民族ですが、同じではありません。「NATO」に入ってもいいはずで、そもそもロシアがこわいからアメリカやヨーロッパの国に守ってもらいたいと考えています。

ロシアは8年前の2014年にウクライナの「クリミア半島」という地域も、軍の力をちらつかせて自分たちのものにしていますが、ウクライナはこれもまったくゆるすことはできないと考えています。

ウクライナにとっては、ロシアに攻められている理由はまったく受け入れることはできないものなのです。
なぜプーチン大統領は関係のない人も戦争に巻き込ませているのか?
(岐阜県 のりまささん 6年生ら 65人)
▼安間解説委員

ほかの国を攻めて戦争をすることは許されることではないはずです。それでも戦争が起きてしまった時に守るべきルールも決められています。そのひとつが「兵士ではない人=(民間人)(みんかんじん)」を殺してはいけないというものです。

ただ、本物の戦場にいる兵士は自分の命がかかっていて、こわがっています。目の前の相手が兵士ではないように見えても「もし兵士だったら自分が危ない」と考えることもあります。

「なぜ罪のない子どもを巻き込むの」という質問もありました。でも、悲しいことに子どもも巻き込まれてしまうのが戦争です。

攻められる場所から逃げたくても、味方(みかた)の兵隊が戦っていて、安全に逃げることができないのです。わざとでも、わざとではなくても、ふつうの人が巻き込まれてしまうのが戦争なんです。

「ロシアはわざと兵士ではない市民を攻撃しているのではないか」と疑う声も出ています。ウクライナが頑張って戦い続けようとする気持ちをなくさせるために、わざと人々が住むアパートをねらったりしているのではないかということです。

一方、ロシアは「兵士ではない人たちをねらってはいない」と言っていますが、ウクライナをはじめアメリカやヨーロッパ、日本からも「戦争のルールでは許されていないこと、戦争犯罪(せんそうはんざい)だ」という意見が出ています。
▼鴨志田解説委員

「戦争犯罪」を裁くための裁判所(さいばんしょ)もできています。でもそんなルールや裁判所を、喜んで受け入れていない国もあります。
ロシアもそのひとつです。

いま、ロシアがウクライナでしていることに世界中のたくさんの人が驚き、戦争犯罪だ、という声が出ていますが、ロシアはこの裁判所を受け入れていないので、責任(せきにん)を取らせることはすごく難しいです。

今、ウクライナで起きていることをインターネットやスマートフォンで見られるようになっていますが、それは大人でも見たことのない、信じられないほどひどいことです。武器を持っていない、ふつうに街で暮らしていた人たちや、小さな子や若い人まで巻き込まれています。大人たちも受け止めきれないほどのショックを受けていて、ふるえ上がっているんです。

だからこそ、このまま放っておけないという気持ちは強くなっています。まず、戦争を終わらせなければなりません。戦争で行われたひどいことは責任を問(と)うべきだとも考えています。

許されないひどいことだからこそ、何があったのか、この先どうしたら防げるのかを考え続けていかないといけないと思います。
Q3 プーチン大統領とゼレンスキー大統領は、なぜ話し合いをし戦争を止めることができないのですか?
(静岡県 しょうたさん 5年生ら 22人)
▼安間解説委員

みんなは学校ではけんかをしても話し合うのに、なんで大人たちはできないのかふしぎですよね。

ゼレンスキー大統領も3年前にウクライナの大統領になったときには、それまでずっと仲よくなかったロシアと話し合いたいと言っていました。「話し合いをして仲直りしたい」と思っていたんです。
でもウクライナは2014年に「クリミア半島」(前にも出てきましたね)という自分たちの土地をロシアに取られていました。ゼレンスキー大統領は、ロシアにクリミア半島を返してほしいと呼びかけます。

プーチン大統領はもちろん返す必要がないと考えているし、ウクライナが反発するのが許せない。意見が違いすぎたから、話し合っても意味がない…となってしまったんです。

ゼレンスキー大統領は一度、フランスの大統領とドイツの首相といっしょにプーチン大統領と会って話をしたことがありますが(2019年12月)、その時もふたりの立場(たちば)の違いが小さくなることはありませんでした。

いまの戦いが始まる前の去年11月、ロシアはウクライナとの国境の近くに10万人くらいのとても大きな軍隊を集めていました。

その時プーチン大統領はアメリカのバイデン大統領とは3回話し合いましたが、ゼレンスキー大統領とは一度も話し合いをしませんでした。
プーチン大統領は「ウクライナはアメリカやヨーロッパが操(あやつ)っているんだ、だからウクライナと話をしても意味ないんだ」と思い込んでしまっているのかもしれません。

今ではウクライナの多くの市民が巻き込まれて亡くなっていることが分かってきたり、戦いが激しくなっていたりして、お互いにもっと「許せない」と思ってしまっているから、話し合いがなかなか進んでいないんです。
▼鴨志田解説委員

戦争は急に起きるのではなく、仲が悪くて話もできない関係が長い間続いたあとに起きます。だからいったん戦争が始まってしまうと、すぐに相手と話し合おうとはなりません。

戦っている国とは別の国や人が「もうやめなよ、仲直りしなよ」と戦争している国に言って回って、話し合いを始めてもらう。これを「仲介(ちゅうかい)」と言います。
「仲介」で大事なのは、戦争をしている国と「仲介」をする国が、お互(たが)いをちゃんと信じあって話をすることです。でも、いまの戦争では「仲介」をできる国がなかなか見つからないんです。

ロシアがとても大きな国だからというのもひとつの理由です。

もうひとつの理由が、戦争でひどいことがたくさん起きてしまっていることです。

「仲介」をする人はウクライナも、そしてロシアも、ちゃんと信じて話をしないといけません。でも、ひどいことをした人と話しをするって、とても難しいですよね。ひとつ間違うと「お前も向こうの味方なのか!」と言われてしまうかもしれない。それを怖がって「自分が仲介をします」と言いだす国がなかなか出てこないのです。
Q4 戦争はいつ終わるのか?
(長野県 ゆずさん 4年生ら 71人)
▼安間解説委員

いつまで続くのか、正直わたしも分かりません。数か月か、もっと続くと考えている人もいます。

いつ戦いが終わるか決められる人が1人だけいます。プーチン大統領です。今回の戦いはプーチン大統領が決めた「プーチン大統領の戦争」だからです。

プーチン大統領は、ロシアの人たちに「ウクライナに勝ちました」とか「こういうものを得られました」と言いたい。でもアメリカやヨーロッパなどロシアに反対しているたくさんの国はそんなこと許せない。

ゼレンスキー大統領だって、国を守る責任があります。大きな被害を受けたのに「この土地はあきらめます」って言えない。

戦いを終えるために、みんながいいと思える解決方法をどうするかが、いちばん難しいところです。
▼鴨志田解説委員

なかなか終わりそうにないと、わたしは思っています。

ニュースでみなさんも、ウクライナの子どもたちが亡くなったり、街が壊されたりと、ひどいことを見ると思います。世界の人たちは「ロシアの軍もプーチン大統領も絶対に許せない。かならず罰(ばつ)を与えなければならない」と思うようになっています。

ウクライナの人たちは「もしいま降参(こうさん)してしまうと、ロシアはウクライナのあちこちで同じようなひどいことをするに決まっている。だから、どんなに犠牲(ぎせい)を出しても負けるわけにはいけない」ということになります。

でもプーチン大統領は、自分を絶対に許さないと言っている相手と仲直りなんかできない、負けることなんてできない、自分が勝つまで戦わないと安心できない、と考えていると思います。

だから残酷(ざんこく)なこと、ひどいことが起きていると伝えられても「もうこんなことはやめよう」とはならず、逆にロシアもウクライナもどんどん譲(ゆず)れなくなって、戦争がどんどん長引いてしまうんです。
Q5 ウクライナの人が何百人もなくなっているのにロシアの人はなんとも思わないの?
(静岡県 あおいさん 6年生ら 16人)
▼安間解説委員

ロシアの人に見えているものって、みんなが見ているものと全然違うんです。

ロシアのテレビでは、ウクライナやアメリカ、ヨーロッパ、そして日本のテレビで流れる映像と同じものを使っていても、反対の説明をしていることがあります。これは、ロシアの政府が「ロシアがやっていることはいいことだ」と言っているからです。そして、ロシアの人たちの多くはそれを信じています。

ロシアの会社の調査(ちょうさ)で考えを聞かれたロシアの人のうち77%が、ロシアがウクライナに攻め込んだことに「賛成」と答えています。その多くはこの戦争を主にロシア国内のテレビで見ている人たちだと思います。

でも、少なくとも17%の人は「反対」だと思っています。この人たちの中には、インターネットで外国のメディアを見て、アメリカやヨーロッパなど外国が出している情報を知っている人たちが多いと思います。
ロシアがウクライナに攻め込んだことについて
「賛成」・・・77%
「反対」・・・17%
「答えられない」・・6%

(ロシアの民間の世論調査機関「レバダセンター」)
(5月26日から31日にかけ、ロシア国内の18歳以上 1600人あまりを調査)
「賛成」という意見が77%あるというのも、自由に意見を言うのが難しくなっている中でつくられた意見だ、ということも忘れてはいけません。

プーチン大統領やロシアの政府に「そうじゃない」と厳しい意見を言うような新聞社などもありましたが、戦争が始まってから情報を出すことを法律(ほうりつ)でやめさせられているんです。

じゃあ、ロシアの人たちってなんでそんなに乱暴(らんぼう)なの?とも言いたくなりますよね。私が答えられるのは、悪いのは政府の人たちだ、ということです。ひとつ聞いてほしいのは、戦争をしている国の人だからと言って、ロシアの人たちがすべて嫌いになるような人たちではない、ということです。

私はたくさんのロシア人に会ってきました。ロシア人がどういう人かと言えば、私から見たら「私たちと同じ」なんです。「お皿洗い大変だよね」とか、「子どもの誕生日に何をあげようか」とか、そういうことに悩んでいる人たちです。

戦争をしている国の人だということと、嫌いな人だということを、一緒にしてほしくないのです。
ロシアの兵隊は、ひどいことや悪いことをしているかもしれません。
だけど、その人たちもおうちに帰ったらふつうのお父さんで、お兄さんなのかもしれません。私たち、ふつうの人が許せないと考えることができるのは、軍隊、兵隊という立場だからなのかもしれないです。悪いのは、戦争を始めるとプーチン大統領が決めたことであり、ロシアの政府であり、戦っている軍だということです。

ロシアにも選挙がありますから、ロシアのふつうの人たちにはプーチン大統領に反対の声をあげてほしいと思います。プーチン大統領は、その声に耳を傾けてほしいと思います。

ただ、はじめに言ったように、情報をあやつっているのも本当のことです。

日本にいるロシアの人たちも、ものすごくつらいと言っています。自分の国が戦争を始めて、それを別の人に責められなくても「なんでこんなことをしたんだ」と思っています。悪いことをしていない人が殺されていることに、みなさんの隣で暮らすロシアの人がみんな賛成しているわけではありません。

ロシアの人たちがみんな悪いとは、私は思わないです。つらい思いをしているかもしれないロシアの人たちのことも、考えてもらえたらなと思います。
▼鴨志田解説委員

戦争が長くなって、苦しくなってくると「自分たちのほうがひどい目にあっている、いじめられている」という気持ちになってしまうことがあります。いまのロシアの人たちもそうです。

世界のほかの国がロシアとお金のやりとりをやめたり、商品を売ったり買ったりしないようにする「制裁(せいさい)」をしています。制裁でロシアが苦しんで、戦争をやめようという考えになるかというと、なっていません。

ロシアの人の気持ちからすると、みんなで一緒に我慢(がまん)しよう、がんばろうという気持ちになってしまうんです。
これは昔、第2次世界大戦でドイツが戦争を起こした時もそうでした。

「ドイツがいじめられている!」という気持ちがあって、ドイツが持っていたものを取り戻したいと戦争を始めました。日本も、中国や朝鮮半島で戦争をしていた時、日本にいた国民は正しいことをやっていると信じて支えてきました。どこの国でも昔もあったし、これからもあるかもしれないことです。

「ロシア人だから」よろこんで戦争をしている、正しいことをしていると思っている、と考えることは間違っています。たまたまロシアの人たちがプーチン大統領のもとで、こういう考えになっているということです。

私たちはどうやったらロシアの人たちに起きていることを正しくわかってもらえるか?ということを一生懸命、考えるしかありません。そして将来、自分たちの国が同じようにならないように、ということも考えなくてはいけないんです。

自分の国が「正しい」と言って戦争を始めた時、世界から孤立した時、自分の国の中で、「おかしいのではないか?」「戦争は間違っている」という声を上げるのは、本当に勇気のいる大変なことです。

どうやってロシアの人たちに戻ってきてもらうのか。もし自分たちがそうなったら、どうすればいいか。それを考えることが大切だと思います。
Q6 ロシアは日本を攻めてくるのか?
(静岡県 さくらさん 6年生ら 29人)
▼安間解説委員

攻めてくることがあるのかどうか分からないというのが、正直(しょうじき)なところです。

今回の戦争でロシアは国際的なルールを守らず、ほかの国を攻めることがある国だということがわかったので、信じることはむずかしくなりました。でも、そういうことは起きないように大人たちが頑張っています。

日本とロシアとの間には「北方領土問題(ほっぽうりょうどもんだい)」というむずかしい問題はあるけれど、日本の総理大臣とロシアの大統領が直接会って話し合いを続けてきたし、いろいろな分野で交流しながら解決方法を見つけようとしてきました。アメリカをはじめほかの国々と協力しながら、対応していかないといけないと思います。
▼鴨志田解説委員

今すぐ攻めてくるということはない、と思います。

ウクライナと戦争しているロシアが、すぐにほかの国に戦争をしかけてくる力があるとは思えません。アメリカと助け合う同盟(どうめい)関係にある日本を攻めてくるというのも考えにくいです。

でも今は日本の政府も悪いことがおきたらどうするかを想像して、どうやって国と国民を守るかを考えています。

国を守るためには戦車(せんしゃ)や戦闘機(せんとうき)といった「軍事力(ぐんじりょく)」を強化しなければならないという声もあります。ロシアの隣にあるフィンランドやスウェーデンでは、NATOに入り、軍事力でお互いを守りあおうという動きも進んでいます。

同時に忘れてはならないのは、国と国で話し合う「外交(がいこう)」で、あきらめずに相手と話を続けることで、戦争そのものが始まらないように手をつくすことが大事だということです。大人たちはその努力もしなければなりません。

若いみなさんが「ロシアが日本に攻めてくるかもしれない、ロシアは信じてはならない」と思ってしまうと、日本とロシアがいつまでも信じあえない関係になってしまいます。

今のプーチン大統領も、いつかはいなくなります。

だから、日本とロシアがいつかきちんと分かり合える国になるにはどうするか、よい関係をつくるにはどうすればいいか、考えるようになってほしいです。
Q7 ウクライナの小学生は今どうなっているのか?
(愛知県 ななこさん 6年生ら 6人)
▼取材班がお答えします

ウクライナで授業を受けている子もいるし、ロシアが攻めてきて授業を受けたくても受けられていない子もいます。たくさんの学校がロシアに壊(こわ)されました。

国の外に避難(ひなん)している子もいて、パソコンなどをつかってもともと通っていた学校のオンラインの授業を受けたり、避難先で新しい学校に通っていたりします。でも、避難先で学校に通うことは簡単なことではないんです。

ウクライナから隣のポーランドに避難した12歳のマクシムくんは、ポーランドの子どもたちといっしょに授業を受けながら悩(なや)んでいます。
勉強したいのに、ポーランドの先生やクラスメイトが話しているポーランド語が分からないからです。

通訳してくれる人がいるときは分かっても、いないと分からない。避難先では、ことばの壁があります。

親が戦争で亡くなった子もいて、歴史の授業で昔の戦争の話になると泣き出してしまった子どもたちもいます。心のケアもとても大切になっています。

ウクライナの子どもたちのなかには、日本に避難してきて日本の学校に通っている子もいて、日本語を勉強しながら授業にも参加しています。

子どもたちもふくめて日本には、これまでに1000人を超えるウクライナの人たちが避難していて、日本の政府や都道府県、市町村が彼らを手助けするための窓口をつくっています。

また、日本の政府は、ウクライナやウクライナから避難する人たちが暮らすまわりの国にむけて、食べ物や医薬品などを送って支えています。日本のボランティア団体なども避難する人たちを助けています。
最後に 小学生のみなさんへのメッセージ
▼安間解説委員

みなさんの質問を読んで、本当によく考えているなあと驚きました。そして、わたしもみなさんにうまく説明できないことばかりでとても悩みました。

静岡県のはるあさん(6年生)の質問を紹介します。

5年生の時に、国語で「やなせたかしアンパンマンの勇気」について勉強しました。「どの国も自分たちこそが正しいと思って戦争をする。でも戦争は結局殺し合いだ。いろいろなりくつをつけて戦うけれど、正義の戦争なんていうものは、ないんだ」と書いてあった(中略)のに、なんで戦争という恐ろしいこと・殺し合いをするのですか?

わたしはたくさんの人に話を聞いてきましたし、悲しいことからうれしいことまでいろんな思いをともにしてきました。戦争の取材もしてきました。

でも、なんでプーチン大統領がこの戦いを始めたのか、どうしてこんなひどいことをするのか、わたしもわからないです。プーチン大統領がちゃんと説明できているとも私は思いません。

だから、テレビやネットで悲しくて怖いニュースを見ているみなさん、そして世界の多くの人たちがプーチン大統領のやっていることに「どうして?」と思ったり「やめてよ!」って怒ったりするのは当然だと思います。

分からないことばかりだけど、ひとつだけ言えるのは、はるあさんの考えたとおり「人を殺し合ってはいけない」ということだけです。

ウクライナだけではなく、今も世界のいろんなところで戦争があります。多くの人たちが悲しい思いをしています。そんな人たちがいることを忘れないでください。

そして困っている人たちを助けられる、優しくできるような人になることが大切だと思います。
▼鴨志田解説委員

今みんなは戦争のニュースを見て、どうしてこんなことが起きているの?なんで戦争で人が死なないといけないの?と、怒ったり、怖くて悲しい気持ちになったりしていると思います。

大人も同じです。

これまで大人たちは、どうやって戦争をしないようにするか、戦争が始まってもすぐに止めるかを考えてきました。でも、残念ながら今回の戦争について言えば、それはできませんでした。

みんなは、国が違う人でも友だちになっていっしょに遊べるでしょう?だから、ウクライナの小学生たちが戦争で泣いていたり、暗いところで隠れていたりするのを見て、とても悲しい気持ちになるんだと思います。

実はウクライナだけじゃなく、世界のいろんなところで、きみたちと同じくらいの子どもたちが、何も悪くないのに、戦争で死んでしまったり、怖い思いをしたりしています。

きみたちがいま、そんな子たちのことを考えていること。遠い世界、自分と関係がない話だと思うんじゃなくて、一緒になって考えてくれている今の気持ちを、大人になっても大切にしてください。

そして、もう戦争で悲しい思いをする人がいなくなるように、将来、力を貸してくれたらとてもうれしいです。
(取材班:ネットワーク報道部 清水阿喜子 國仲真一郎 柳澤あゆみ)