有料老人ホーム4割が料金引き上げ検討 価格高騰で高齢者施設は

さまざまな価格高騰の影響で、高齢者施設では運営コストの上昇が課題になっていて、有料老人ホームへの調査では4割が料金引き上げを検討していると回答しました。
介護保険制度で運営される施設は値上げも難しく、専門家は「公的な支援が無ければ、経営はさらに悪化し、サービスを受けられなくなる高齢者も出るおそれがある」と指摘しています。

「全国有料老人ホーム協会」は、ことし4月に加盟する有料老人ホームの事業者に緊急のアンケート調査を行い、413法人のうち130法人から回答を得ました。

その結果、回答の45%に当たる58法人が「利用料を引き上げる意向がある」と答えました。

58法人に検討している項目を聞いたところ、
▽「食費」が最も多く63%、
▽次いで「水道光熱費」が46%、
▽人件費などの「管理費」が42%となりました。

回答した施設からは「厨房を委託している業者から食材費の高騰で値上げを要請されている」とか、「電気代が2倍になった」、「大浴場やエアコンなどの使用で値上げせざるをえない」などといった声が相次いだということです。

「全国有料老人ホーム協会」の松本光紀事業推進部長は「物価がどこまで上昇するか分からず、『判断に揺れている』といった声も出ている。どの事業者も利用者のためには積極的に引き上げたくないと考えているが、ここまでさまざまな価格が上昇すると料金の引き上げに踏み切らざるをえなくなる。こうした事態は初めてだ」と話しています。

また、高齢者のリハビリなどを行う施設が加盟する「全国老人保健施設協会」によりますと、影響は出ている一方で、国の介護保険制度をもとに料金が設定されているため、柔軟に引き上げられない中で対応に悩む施設があるということです。
高齢者施設の経営や介護保険制度に詳しい東洋大学の高野龍昭准教授は「もともと高齢者施設は介護保険制度により報酬が低く抑えられ厳しい経営が続いていた。今回の物価の高騰で今後は赤字となったり、経営を続けられなくなったりする事業者が出るだろう。公的な支援がなければサービスを受けられなくなる高齢者も出るおそれがある」と指摘しています。

価格高騰も値上げに踏み切れない現場も

さまざまな価格の高騰が重くのしかかっても、料金の値上げには踏み切れない現場もあります。

東京 三鷹市のおよそ90人が入所する介護老人保健施設では、水道光熱費に加え、せっけんや紙コップなどのあらゆる備品が値上がりしているといいます。

リハビリを行う利用者が転倒しないよう足もとも照明は欠かせず、リハビリ後の熱中症を防ぐためエアコンの温度を低く設定する必要があり、電気の使用頻度が高くなるといいます。

去年11月には、エアコンを省エネ性能が高いものに、照明をLEDに切り替える工事をおよそ1億5000万円かけて行い、水道光熱費を月50万円ほど削減できると見込んでいました。

しかし、電気代などの高騰で、施設によりますと、ことし1月から4月までの水道光熱費は月に40万円近く増え、去年の同じ時期に比べて4か月で150万円余り増加しているということです。
また、一日およそ40人がデイケアを利用していますが、ガソリン価格の値上がりを受け、送迎に使う車のガソリン代も4か月で12万円余り増えました。

ただ、運営費のほとんどは国からの介護報酬でまかなわれていて、みずからの経営判断で介護サービスの料金を値上げすることはできないといいます。

食費など一部は利用者から徴収している費用についても、原材料の価格が上がっており、食事も委託業者から値上げを求められる可能性があるということです。

施設では、部屋の電気をこまめに消したり、エアコンの温度を28度に設定したりして、地道に節電することでしかコストを抑えられず今後の運営への影響を懸念しています。
施設の岡誠事務長は「厳しい状況だ。サービスの質は落としたくないので、このまま値上げが続くと最終的には人件費を削ることを考えなければならない。一時的なものでもいいので国や行政は価格高騰への対策や支援を考えてほしい」と話していました。