企業の採用面接本格化 学生向け「就活エージェント」とは

来年春に卒業する大学生などを対象にした大手企業の採用面接が6月1日から本格的にスタートしました。新型コロナの影響で採用を見送っていた航空や旅行、宿泊などで経済活動の正常化に伴い採用を再開する動きが出ていることなどにより、求人倍率は4年ぶりに上昇に転じています。

▽ことしの就職活動の傾向は?
▽利用が広がっているとされる「就活エージェント」とは?

一日の動きと合わせて、詳しくお伝えします。

東京 新宿区にある損保大手の「損害保険ジャパン」の本社です。

6月1日から来年春に卒業する大学生などを対象にオンラインによる1次面接が始まり、面接担当の社員はタブレット端末を通じて、学生に志望動機や学生時代に取り組んだことなどを質問していました。

この会社ではオンライン形式で面接を進めたうえで、最終面接は対面で行うということです。面接を受けた都内の学生は「オンラインの就職活動に慣れてしまっているので、対面の面接は緊張しそうですが、冷静に頑張りたい」と話していました。

3年ぶりに選考を再開する動きも

全日空は、来年春に大学を卒業する人などを対象に事務系と技術系の総合職の選考を1日から再開。今月10日から外国人観光客の受け入れが再開されるなど航空需要は回復傾向にあるため、会社では3年ぶりの選考再開に踏み切り、総合職を55人程度採用する計画です。

ただ総合職の採用人数は感染拡大前の半分程度にとどまり、客室乗務員の採用は見合わせるなど、いまだ新型コロナの影響は続いています。

全日空人事部の片桐伸樹担当部長は「採用が再開できたことは率直にうれしいことで、会社の活力につながると思う。客室乗務員の採用の再開も今後、検討を進めたい」と話していました。

ことしの傾向(1)「売手市場」

情報サービス大手のリクルートがことし1月から3月にかけて7000社余りの企業を対象に実施した調査によりますと、全国の企業の求人の数は推計で70万人余りで、前の年の同じ時期よりおよそ3万人増加しています。

その一方で、来年春に卒業を予定し企業への就職を希望する大学生や大学院生の数は推計でおよそ45万人とほぼ横ばいで、学生1人に対して企業から何人の求人があるのかを示す求人倍率は1.58倍となりました。前の年の同じ時期に行った調査を0.08ポイント上回り、4年ぶりに上昇に転じています。

ことしの傾向(2)「採用活動の早期化」

一方、リクルートが先月中旬に行った来年春に卒業する大学生を対象にした調査で、すでに内定を得ている学生の割合はおよそ65%に上り、前の年の同じ時期より6ポイント余り上昇しました。また内定を得た人のうち半数以上の56%が2社以上から内定を得ていて、去年より2ポイント余り、おととしと比べると12ポイント余り高くなっています。

さらに、すでに進路を確定したとする学生も、学生全体のおよそ45%と前の年の同じ時期よりおよそ6ポイント上回っていて、コロナ禍からの経済活動の正常化や人手不足などを背景に採用活動を早める企業が広がる形となっています。

専門家「人材をしっかり獲得していく動き」

ことしの採用活動について、調査を行ったリクルートの就職みらい研究所の栗田貴祥所長は「新型コロナで影響を受けた企業も多いが、コロナ禍も3年目となり、影響が続くことを前提としてどのように成長していくのかという戦略を考える中で、人材をしっかり獲得していこうという動きになっているのではないか」と分析しています。

そのうえで採用活動の前倒しが進んでいることについては「社会のデジタル化が進む中、IT業界を中心に採用意欲が高いことに加えて、企業側も採用活動のオンライン化が進んで選考のスピードが上がっていることが、幅広い業種で早い時期に内定を出すようになった要因ではないか」という見方を示しました。

「就活エージェント」サービスとは

一方、就職活動中の大学生などが面接指導や求人の紹介を受ける「就活エージェント」と呼ばれるサービスが広がっています。

東京 渋谷区にある人材サービス会社は2014年から「就活エージェント」のサービスを始めました。就職を希望する大学生などがこの会社のサイトに登録するとサービスを利用できるようになり、「アドバイザー」と呼ばれる社員からエントリーシートの添削や面接の指導などを対面やオンラインで受けることができます。

「就活エージェント」の仕組み

人材サービス会社は、学生の採用を希望する企業からの求人情報を学生に紹介します。その紹介に応じて学生が採用試験を受けて、内定・入社の承諾まで進むと企業から紹介料が入る仕組みです。

学生はこのサービスを原則として無料で受けることができます。

人材サービス会社に取材すると、学生にとっては就職活動の相談をできたり希望する業種や働き方などに応じて企業を紹介してもらえたりするメリットがあるといいます。

一方、学生の採用を希望する企業は、人材サービス会社を通じて学生に求人を紹介してもらうことで採用試験を受ける学生が増えることになり、優秀な人材の確保につながるというメリットがあるといいます。

コロナ禍で相談できない中で…

この会社では2018年ごろから利用者が増え始め、登録した人はことしの春就職した学生ではおよそ6万6000人で、前の年よりおよそ1万1000人増加し、2年前と比べるとおよそ2万人増えたということです。

会社では人材を確保したいというおよそ800の企業と現在、契約を結んでいて、増加傾向にあるといいます。

人材サービス会社「リアステージ」広報部の稲葉愛さんは「コロナ禍で就職活動を続ける学生が友人や先輩に相談できる機会が減り、そのかわりに就活エージェントを利用するケースが多いと思う。就職活動の悩みを相談できる場として学生に活用してもらっていてその環境を引き続き提供していきたい」と話していました。

サービスを利用した学生は

サービスを利用した大学4年生の男性は、大学の授業の多くはオンラインになるなど対面で相談できる機会が減ったため、就職活動をどう進めたらよいか不安でした。

男性は企業の情報を得るとともに就職活動の相談をしたいと考え、去年12月ごろから「就活エージェント」の利用を始めました。

自分を担当する「アドバイザー」に相談しながら自分が希望する業種や就職で何を重視するのかを考え面接の指導なども受けました。最初は営業職を希望したいと思いましたが、資格を取得したいと考え、紹介されたIT会社の「システムエンジニア」の採用面接を受け、内定を得ました。

男性は「就職活動についてわからないことが多かったので無料でこうしたサービスを利用できてありがたいです。コロナで就職活動の情報を得る機会が減っていると感じていたのでとても感謝しています」と話していました。

希望と違う企業をすすめられたケースも

一方、こうしたサービスをめぐっては、自分の希望と違う企業をすすめる会社の対応に困ったという学生の声も聞かれます。

大学3年生だったおととし3月から「就活エージェント」を利用した女性は、紹介された企業から内定を得たといいます。しかし、そのおよそ1週間後に待遇や福利厚生の面から自分で探した別の企業からも内定を受けたため、人材サービス会社の担当者に内定の辞退をしたいと話しました。

その翌日に担当者から再び電話があり、およそ1時間半にわたって考え直すように説得されたといいますが、対応に困ったとしています。

女性は「自分がなにかを言えば、それに対してこっちのほうがもっと成長できるのではと、こちらの希望を無視して反論され続けました。それまではいい関係が築けていたと思いますが、その時は担当者もイライラしているような感じがありました。学生の中には断れない人もいると思います」と話していました。
また「就活エージェント」を利用して内定を得た会社に就職してみると、担当者から聞いていた労働条件と違ったという声もありました。

取材に応じた男性によりますと、人材サービス会社の担当者からは1か月の残業は20時間程度と聞いていましたが、働き始めると毎月およそ60時間残業をしなければなりませんでした。また残業した時間だけ残業代が支払われると聞いていましたが、まったく支払われない月もあったということです。

大学 “会社だけに任せるのではなく 自分で考えて”

「就活エージェント」を利用する学生から対応に困っているという相談が寄せられているとして、トラブルになるのを防ぐために大学が注意を呼びかける動きも出ています。

東京 豊島区の学習院大学では去年、「就活エージェント」の利用について注意を呼びかける動画を作成しました。動画では「就活エージェント」のビジネスの仕組みのほか、自分が就職を希望する企業の勤務条件や業種などを明確に人材サービス会社に伝えることや、会社だけに任せるのではなく自分で考えて就職活動を進めることなどの注意を呼びかけています。

また大学では、学生が「就活エージェント」を利用し内定を得たとしても、その後、別の会社への就職を希望する場合は内定は辞退できることを伝えています。

自分で考えて納得できる就職活動を

学生の就職活動に詳しい採用コンサルタントの谷出正直さんは「就活エージェント」について、利用する学生にとってはより多くの企業を知ることができるなど、メリットがあるとしつつ、人材サービス会社は、ビジネスとして学生に無料でサービスを提供していることをきちんと理解して利用することが重要だと指摘します。

谷出さんは「就活エージェントを通じていろいろな考えの人たちのアドバイスを聞くことも大事だが、納得できる就職活動をするためにも、どんな仕事をしたいとか、どういう会社で働きたいのか、自分できちんと考えて就職活動を進めることが重要だ」と話していました。

また、就活エージェントを利用してトラブルになったり悩んだりしていることがあれば、大学のキャリアセンターなどに相談してほしいとしています。