もう暑い!まさか私が熱中症?気温だけじゃないリスクとは

もう暑い!まさか私が熱中症?気温だけじゃないリスクとは
北海道から沖縄まで、全国で熱中症で搬送される人が相次いでいます。5月末までの1か月余りでなんと2500人以上。

「急にめまいがして視界がグルグル回り始めたんです。30秒ぐらいでいったん落ち着いたのですが、家に帰ってからも気持ち悪くなって…」

体力には自信があった10代の大学生が都内でボウリングを楽しんでいた時のことです。振り返ってみると、その日の「暑さ」以外に、「熱中症になってもしかたがなかった」と思う心当たりがありました。
(※熱中症の症状、対策についての詳しい記事もご紹介します)

暑かった5月最後の週末

この週末、5月29日の東京は31.2℃とことし初の真夏日。栃木県の佐野と群馬県の上里見は35℃以上の猛暑日でした。

冒頭の大学生もこの日について「ことし1番暑かった」と話していましたが、なぜ熱中症のような症状が出たと思うか聞いてみると、真っ先に挙げたのは気温以外の要因でした。

【心当たり その1】食事不足

一つ目は、十分な食事を取っていなかったこと。

この日、朝食はほとんど食べず、昼もフライドポテトを軽くつまんだだけだったと言います。また、水分補給の量もふだんよりも少なかったということです。

【心当たり その2】新生活の疲労

二つ目は、この春から始まった新生活の疲れです。
大学受験のための勉強漬けの日々から一転、4月からは大学の授業に出席し、アルバイトも始めました。生活のリズムや環境が大きく変わる中で、疲労を感じていたと言います。
(大学生)
「暑いと汗をよくかくほうなんですが、昨日は途中で汗が止まっていました。塩むすびを食べて水分をたくさん取って早く寝たら、今朝は体調が戻りましたが、健康には自信があったのでこんなことになるとは思いませんでした」

ふだんから体調管理を

この大学生は、激しいスポーツを続けてきたということですが、これまで一度も熱中症のような症状が出たことはないといいます。

熱中症対策に詳しい専門家は、暑さそのものへの対策だけでなく、次のような体調管理も大事だとしています。
▼水分補給は食事の時だけでなく時間を決めて行う
▼たんぱく質などの栄養を補給し、体調を管理する
▼ぐっすり寝て体力を回復する
特に子どもと高齢者は対策の遅れが命にかかわるため、注意が必要だということです。

冷房がきいていたのに

もうひとり、この週末に初めて熱中症のような症状を経験したという20代の会社員の男性が話を聞かせてくれました。5月28日、男性の会社がある高知市の最高気温は28.6℃でした。
(会社員)
「仕事の休憩時間に職場の駐車場に止めていた車の運転席のリクライニングを倒して横になっていたんですが…」
暑かったため、車内のエアコンを22℃に設定して十分に冷房をきかせていたという男性。短い時間なら問題がないだろうと、ドアを閉めきったまま冷房を切って休み始めると、車内が急激に暑くなってきたと言います。
すぐに我慢ならないほどの暑さになって、5分ほどで起き上がったところ、軽い頭痛と吐き気に襲われました。すぐ冷房の効いている職場に戻って水分をとりましたが、症状は1時間以上続きました。
(会社員)
「まだ5月だから10分くらいは冷房なしでも大丈夫だろうと思っていました。比較的軽い症状だったとは思いますが、それでもきつく感じました」

初夏でも危険な車内熱中症

5月25日には、1歳の男の子が新潟市内の駐車場でおよそ3時間にわたって車の中に置き去りにされて死亡するという痛ましい事故がありました。警察は熱中症の疑いがあるとみて調べています。この日、新潟市中央区の最高気温は27.5℃でした。

この時期から夏にかけての車内温度の急上昇について、JAF=日本自動車連盟が実施した実験では次のような結果になっています。
▼5月上旬、気温が23~24℃
 ⇒1時間で車内温度が40℃前後に達する
▼8月下旬、気温35℃
 ⇒エアコンを止めて15分で熱中症指数の「危険」レベルに
車にキーを置き忘れ、中からロックがかかってしまうトラブルが毎年、各地で起きています。JAFは「夏、特に子どもが閉じ込められたら命に関わる」と注意を呼びかけています。

ためらわずに119番を

夏本番はもう少し先ですが、すでに毎日のように熱中症で救急搬送される人が相次いでいます。総務省消防庁の集計では、5月29日までの1か月余りの間に全国で搬送された人は2572人と、すでに2000人を超えています。
▼最多は大阪府で162人、
▼次いで東京で149人、
▼愛知県で148人などとなっているほか、
北海道や東北地方でも救急搬送される人が増えています。

このうち3人が亡くなり、41人が3週間以上の入院が必要な「重症」でした。(搬送された人の7割近くは軽症)
総務省消防庁の担当者は、熱中症は職場環境など状況によって、本格的に暑くなる夏場でなくても起こると指摘し、今の時期から注意は必要だとしています。
(総務省消防庁 担当者)
「熱中症の救急搬送は、梅雨明け後、本格的に暑くなる時期に急増するので、熱中症を防ぐために早いうちに体を徐々に暑さに慣れさせてほしいと呼びかけています。もしも体調に異変を感じたり、一緒にいる人が呼びかけに対しておかしな反応を示すことがあったらためらわずに119番通報してください」
コロナで外出を控えていたものの、最近になって外出の機会が急に増えたという方も多いと思います。無理をせずに時間をかけて暑さに体を慣れさせる「暑熱順化」を試してみるのも熱中症の予防になるそうです。

気温だけじゃない…「暑さ指数」って?

熱中症のリスクを知りたい、そんな時、まずチェックするのはその日の「最高気温」ではないでしょうか。でも実は、熱中症対策としては、気温よりも「暑さ指数」を目安とすることが有効とされています。

暑さ指数は、アメリカで考案された熱中症の危険度を示す指標で、気温に加えて、湿度と「輻射熱(ふくしゃねつ)」の3つの要素を考慮しています。この中で最も重要とされるのが「湿度」なんです。

湿度が高い場所では汗が蒸発しにくく、体の熱を外に逃がすのが難しくなるため、熱中症のリスクがより高まるとされているんです。

例えば、実際に熱中症で搬送された人数でいうと、気温が同じ32.5℃でも、
▼最小湿度41%の日は50人だったのに対し、
▼最小湿度56%の日は94人と倍近くに増えたというデータもあります。

この「暑さ指数」は「危険」や「厳重警戒」など5段階に分けられていて、NHKのサイトで次の日までの予測を知ることができますので、ぜひチェックしてみてください。
特に暑さ指数が最高レベルの「危険」の基準を超えて33以上になると予測されると、「熱中症警戒アラート」が発表されます。

ことしもすでに5月29日と30日に沖縄県の八重山地方で発表されました。全国的には7月から8月にかけての夏本番に発表されることが多い情報です。

「熱中症警戒アラート」やサイトの予測などを参考にして、熱中症への備えは万全にしてください。