米 バイデン政権 “ウクライナに7億ドルの追加の軍事支援”

ロシア軍は、ウクライナ東部ルハンシク州でウクライナ側の最後の拠点とされるセベロドネツクへの攻勢を強めています。
こうした中、アメリカのバイデン政権はウクライナに対して、より精密な攻撃が可能だとされる「高機動ロケット砲システム」を含む7億ドル、日本円でおよそ900億円の追加の軍事支援を行うと発表しました。

ウクライナ東部2州の掌握をねらうロシア軍は、ルハンシク州でウクライナ側の最後の拠点とされるセベロドネツクへの攻勢を強めています。

ルハンシク州のガイダイ知事は5月31日、「ロシア軍がセベロドネツクの化学工場にある硝酸の貯蔵タンクを攻撃した」とSNSに投稿し、住民に対して有毒なガスが出ているとして避難場所から出てこないよう呼びかけています。

この攻撃によるけが人などの情報は明らかになっていませんが、ウクライナのゼレンスキー大統領は31日、新たに動画を公開し「セベロドネツクには大規模な化学工場があり、ロシア軍の攻撃は狂気の沙汰だ」と述べ、ロシア軍の攻撃を非難しました。

セベロドネツクのストリュク市長は31日、NHKのオンラインインタビューに応じ「敵の砲撃は住宅や公共施設など避難に使えるすべての場所を標的にしている。市街地の真ん中で戦闘が行われているため、住民を移動させることも不可能だ」と述べ、街の防衛のためにはロシア側の砲撃の拠点を攻撃する長距離砲などが必要だと訴えました。

こうした中、アメリカのバイデン政権の高官は31日、ウクライナに対して7億ドル、日本円でおよそ900億円の追加の軍事支援を行うと発表しました。

この中には、対戦車ミサイル「ジャベリン」やヘリコプターなどに加えて、これまで供与してこなかった「高機動ロケット砲システム」と呼ばれる兵器が含まれ、より精密な攻撃が可能になるとされています。

ただ、今回、供与する弾薬の射程はおよそ80キロで、政権高官は「ロシア国内の標的に向けた攻撃には使わないとの約束をウクライナ側から取り付けている」としています。

これについてバイデン大統領は31日、有力紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、「さらなる侵攻を抑止し、みずからを防衛できる民主的かつ独立したウクライナにしたい」としたうえで、「われわれはウクライナが国境を越えて攻撃することを後押しするわけではないし、可能にすることもない」としてロシアを過度に刺激する意図はないとしています。

ただ、ロシアのプーチン大統領は、欧米からウクライナへの相次ぐ兵器の供与について「事態のさらなる不安定化と人道危機の悪化を招く」と警告していて、強い反発も予想されます。