肥料価格 多くの種類で過去最高に ロシアの軍事侵攻などが影響

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻などの影響を受けて、ことし10月までの肥料の価格が多くの種類で過去最高になります。

全農=全国農業協同組合連合会は、6月から10月までの肥料の各都道府県の組織に卸す価格を31日に発表しました。

それによりますと、化学肥料のうち、
▽輸入された尿素は、前の期である去年11月から5月に比べて94%の値上げ、
▽塩化カリウムは80%値上げします。

また、
▽窒素、リン酸、カリをすべて含む複合肥料のうち、価格指標となっている3つを15%ずつ含む製品は、55%値上げすることになりました。

多くの種類で、価格は2005年以降、過去最高だということです。

値上げの理由について、全農では、世界的な穀物需要の高まりで肥料の需要が増えていること、ロシアのウクライナへの軍事侵攻をうけて、尿素や塩化カリウムの生産国であるロシアからの供給が滞っていること、さらに、中国が去年10月から尿素など肥料の輸出制限をかけている影響などを挙げています。

塩化カリウムは、ロシアとベラルーシが世界の輸出量のおよそ4割を占めており、軍事侵攻で輸入を取りやめる動きが世界で広がり、価格が高騰しています。

全農は、生産者に対して、堆肥などの活用を推進していく考えです。

農業法人の代表「現状でも厳しいのに…」

JA全農は6月から10月までの肥料価格について、都道府県組織への卸売価格を31日発表しました。
円安やウクライナ情勢などを背景に前の期である去年11月から5月に比べて、中には最大で9割以上値上がりする化学肥料もあるということです。

山形県東根市の農業法人「ファーム片桐」はおよそ20ヘクタールの水田で稲作を行っています。
「ファーム片桐」では、この時期の田植えと同時に、水田に化学肥料をまいていますが、この肥料は中国での経済活動の活発化などを背景に、去年使った肥料よりも1袋当たり400円ほど値上がりしているということです。
ことしは化学肥料の使用量を減らそうと、従来使っていた肥料のうち3分の1については、1袋200円の鶏ふんを原料にした肥料に初めて変更したということです。
しかし、この肥料をまくには別の機械が必要なうえ、収穫量が減る可能性があるため使える量に限度があります。
こうした中、化学肥料が値上がりすると経費がさらにかさむ可能性があるということです。
さらに、新型コロナの感染拡大以降、コメの需要の減少が加速していることもあってコメの価格が上がる可能性は低く、今後、経営が圧迫されることを懸念しています。
農業法人の片桐忠一代表は「現状でも厳しい状況なのに、さらに肥料価格が上がると聞いて混乱しているというのが正直な気持ちだ。米価が上がりさえすればもうけは確保できるので、そういった政策を期待したい」と話していました。