ロシア軍 ウクライナ東部で攻勢強める 穀物輸出めぐる攻防も

ロシア軍はウクライナ東部ルハンシク州の最後の拠点とされる都市、セベロドネツクへの攻勢を強めていて、親ロシア派の武装勢力は都市の3分の1を支配したと主張しました。また、ロシアのプーチン政権は欧米による制裁の解除と引き換えに、穀物などの輸出港の封鎖を解くことを示唆し、ウクライナは反発しています。

ロシア軍はセベロドネツクを包囲しようと攻勢を強めていて、ルハンシク州の親ロシア派の武装勢力の指導者パセチニク氏は31日、ロシア国営のタス通信に対し「すでにセベロドネツクの3分の1を支配下においた」と主張しました。

イギリス国防省は31日、「セベロドネツクの郊外では市街戦が行われている可能性がある」と指摘するとともに「ロシア軍がセベロドネツクを掌握すれば、さらにクラマトルスクなどの掌握を目指すことになる」として、東部ドネツク州の主要都市クラマトルスクなどが次の標的になると分析しています。

一方ロシアのプーチン大統領は30日、トルコのエルドアン大統領と電話で会談し、ロシア大統領府によりますと「プーチン大統領はトルコとの協力のもと、ウクライナ南部に面する黒海やアゾフ海の港から穀物の輸出も含め、海上輸送を促進する用意がある」と伝えたということです。

一方で「ロシアへの制裁が解除されたら、多くの農産物や肥料を輸出することができる」とも強調し、欧米による制裁の解除と引き換えに、穀物などの輸出港の封鎖を解くことを示唆した形です。

これに対しウクライナのゼレンスキー大統領は30日、ウクライナから2200万トンの穀物が輸出できなくなっているとしたうえで「封鎖は世界規模で不安定な状況を生み出し、さまざまな国で食料が高騰している。アフリカやアジア、ヨーロッパの一部の国では飢餓のおそれがある」と述べ、反発しました。

EU=ヨーロッパ連合は31日にベルギーで行う首脳会議で、ウクライナから穀物などの輸出ができなくなっている状況や、食料安全保障などについて協議することにしています。

マリウポリから船が出港 金属製品積んでロシアへ

ウクライナ東部の要衝マリウポリの港から、ロシア軍が現地を掌握して以降、初めてとなる船がロシアに向けて出港したと、ドネツク州の親ロシア派の武装勢力の指導者プシリン氏が31日SNSに投稿しました。

それによりますと、船は2500トンの金属製品を積んでいて、31日にマリウポリの港を出て160キロほど離れたロシア南部のロストフ州に向かったとしています。

プシリン氏は、マリウポリの港はアゾフ海最大で冬でも利用できると強調したうえで「港の再開は復興と経済成長につながると確信している」と主張し、ロシアの支配下で復興を進めているとアピールするねらいもあるとみられます。

これに先立ち、ウクライナ側はロシアが占領した土地から略奪した大量の金属を運ぼうとしていると強く非難しています。