新型コロナ 急性脳症で5歳未満の子どもが重症に 栃木

今月、栃木県内に住む基礎疾患のない5歳未満の子どもが、新型コロナウイルスへの感染が原因で「急性脳症」を発症し重症化していたことが病院への取材でわかりました。
新型コロナによる子どもの重症化はまれですが、栃木県内では「急性脳症」で死亡した子どもも確認されていて、治療にあたった医師は「新型コロナへの感染を防ぐことが大切だ」と話しています。

自治医科大学附属病院によりますと、新型コロナが原因で「急性脳症」を発症したのは、栃木県内に住む基礎疾患のない5歳未満の子どもです。

今月、自宅で激しいけいれんを起こし、自治医科大学附属病院で詳しい検査を受けたところ新型コロナに感染していることがわかり、さらに「急性脳症」を発症していました。

子どもは一時自発的な呼吸ができなくなるなど重症化し、一命は取り留めましたが、脳の広い範囲に障害が起きたためいまも体の一部にまひが残った状態で入院しているということです。

子どもが新型コロナで重症化するのはまれですが、5月1日には基礎疾患のない10歳未満の子どもが新型コロナへの感染による「急性脳症」で死亡したと栃木県が発表しています。

一方、「急性脳症」は、新型コロナに特有の疾患ではなく、さまざまな感染症によって「炎症性サイトカイン」という体の免疫機能の物質が過剰に出ることで起きるということです。

治療にあたった自治医科大学附属病院の村松一洋医師はNHKの取材に対し、「搬送時、お子さんは激しいけいれんと高熱で命の危険があった。急性脳症は子どもにとってリスクが高い疾患なので、まずは新型コロナへの感染を防ぐことが大切だ」と話しています。

小児科医でつくる日本小児神経学会によりますと、新型コロナの感染によって基礎疾患がないとみられる子どもが急性脳症になったという報告は、全国でこれまでにおよそ10例あるということです。

今後、全国の医療機関を対象に聞き取りなどを行い、コロナの感染による「急性脳症」のリスクについて調査を急ぐことにしています。

急性脳症 後遺症も 子どもにとってリスクが高い

「日本小児神経学会」によりますと、ウイルスへの感染がきっかけで「急性脳症」になる18歳未満の子どもは国内では年間500人から800人いると推計されています。

このうち5%が死亡し、36%になんらかの後遺症が残るということで、子どもにとってはリスクが高い疾患です。

ただ発症のメカニズムについては解明されていない部分も多いということで、今後、臨床データを集めるなどさらなる研究が必要だということです。

「日本小児神経学会」のメンバーで東京都医学総合研究所の佐久間啓 医師は、「新型コロナへの感染にどれほど急性脳症になるリスクがあるかは今後の研究テーマだ。6月2日から開かれる学会でも意見交換したい」としています。