ロシア ウクライナ東部で攻勢 ゼレンスキー大統領が東部を訪問

ウクライナ東部では、ロシア軍がルハンシク州の完全掌握を狙い、ウクライナ側の拠点の包囲に向け攻勢を強めています。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は、軍事侵攻後、初めて戦闘が続く東部を訪れて前線の兵士を激励し、反転攻勢に乗り出したいものとみられます。

ロシア軍は29日、ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州でウクライナ軍の弾薬庫や兵器などをミサイルによる攻撃で破壊したと発表し、特に完全掌握を狙うルハンシク州ではウクライナ側の最後の拠点とされるセベロドネツクを包囲しようと攻勢を強めています。

これに対し、ルハンシク州のガイダイ知事は28日「セベロドネツクはウクライナのもとにあり、敵は戦果をあげていない。ロシア軍は拠点としている郊外のホテルにとどまっていて市内の中心部に前進できていない」と述べ、双方の激しい攻防が続いているとみられます。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、ウクライナ東部のハルキウ州を訪れました。

軍事侵攻が始まってからゼレンスキー大統領が首都を離れて東部を訪れるのは初めてとみられ、大きく破壊された集合住宅を視察したほか、前線で戦う兵士を激励しました。

ゼレンスキー大統領はこれに先立って公開した動画で、欧米によるさらなる軍事支援の必要性を訴えていて、セベロドネツクをめぐる戦況が劣勢に陥る中でも、東部で反転攻勢に乗り出したいものとみられます。
一方、ロシアのプーチン大統領はヨーロッパの首脳と相次いで会談し、28日にフランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相と3者の電話会談を行ったほか、29日にはロシアと経済面などで結び付きが深いセルビアのブチッチ大統領と電話で会談し、天然ガスを安定して供給していく考えを示しました。

プーチン大統領は30日にはトルコのエルドアン大統領と電話で会談する見通しで、エルドアン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領とも電話で会談する意欲を示していて停戦交渉に向けて両首脳に働きかける狙いとみられます。

一方、トルコは、北欧のフィンランドとスウェーデンのNATO=北大西洋条約機構への加盟をめぐって難色を示していて、その対応が焦点となっています。

このためプーチン大統領としては、エルドアン大統領との会談を通じてNATO拡大に向けた動きをけん制したい思惑もあるとみられます。