ステーブルコイン「テラ」暴落 なぜ?【経済コラム】

日本で大型連休が明けた5月9日以降、暗号資産の1つ「テラUSD」が急落。それをきっかけに、ほかの暗号資産にも値下がりが広がりました。1テラが1ドルとほぼ同等の価値となるよう設計されたいわゆる「ステーブルコイン」として人気を集めていましたが、価値が10分の1以下になってしまいました。ステーブル(=安定的)とされていたテラに一体なにが起きたのでしょうか?(経済部記者 篠田彩)

テラの暴落

テラは、2020年の誕生以降1テラがほぼ1ドルで推移してきましたが、5月9日から急速に下落し、21日は5セント台まで値下がりしました。わずかな期間で、価値が10分の1以下になった形です。

この暴落について、ある専門家は「価値のないものでは、価値を担保できなかったから」と厳しく指摘しています。

ステーブルコインとは?

ステーブルコインは、法定通貨などとの間で一定の価格維持を目指す暗号資産のことです。

代表的な暗号資産にビッドコインなどがありますが、価値の変動が激しいため、決済などでは使い勝手がよくありません。こうした弱点を補おうと考え出されたのが、ステーブルコインです。

大きく2つの種類があり、法定通貨やほかの暗号資産を担保とする「担保型」と、そうでない「無担保型」があります。無担保型は、供給量をアルゴリズム(計算)に基づいて調整し価値を安定させることをねらっていて、「アルゴリズム型」とも呼ばれます。

テラは無担保型で、別の暗号資産「ルナ」との裁定取引を行うことで供給量を調整し、「1テラ=1ドル」に価値を安定させようという仕組みでした。

きっかけは…

テラの大きな特徴は、「アンカープロトコル」と呼ばれる独自のサービスです。これは、投資家がテラを預け入れると、年利およそ20%の利回りを得ることができるとされ、テラを保有する投資家のうち6割から7割程度が利用していたとみられます。

暴落のきっかけの1つとなったのが、このアンカーでした。

5月に入って、アンカーから大量の引き出しが発生したとの情報がSNSで駆け巡り、それが投資家の相次ぐ引き出しにつながり、いわば取り付け騒ぎのような状況となったのです。テラやルナへの不信感が広がり、売りが売りを呼ぶ形となって、ドルとの連動性を保てなくなったのです。

暗号通貨の今後は

テラ急落の背景には、金融市場の潮目の変化があるとみられます。

超低金利時代には、リスクはあっても高い利回りが見込める暗号資産が投資の対象と見なされました。
しかし、インフレ抑制のため、FRBなどが金融引き締めに転換し、金利は上昇局面にあります。世界経済の先行きへの懸念も出る中、投資家はリスクを避けようと、債権などより安全な資産に資金を振り向ける動きが強まっています。

そうした中で、暗号資産はリスクの高い商品として意識され、年明け以降すでに多くが値下がり傾向にありました。

専門家は「そもそも1ドルの価値とみなす根拠は何なのか?という不信感の高まりが原点だった。価値のないものでは、価値を担保できなかった、というひと言に尽きる。商品の構造が複雑化して分かりづらく、投資家にとってリスクの所在を知ることが困難だったことも暴落の要因の1つだろう」と話しています。

今回の件では、少なくとも無担保型のステーブルコインに対して、大きな疑問符がついた形です。

ただ、金融市場の大きな潮目が変化していることもあり、暗号資産そのものに対する投資家の見方も変わってくるかもしれません。

注目予定

30日には自動車メーカー各社の国内の4月の生産台数が発表されます。ゼロコロナ政策をとる中国・上海のロックダウンなどサプライチェーン停滞がどこまで影響したのか、注目されます。

6月1日にはアメリカのISM製造業景気指数、3日には雇用統計が発表されます。インフレへの警戒感が根強いなか、就業者の数や平均時給がどのように推移しているのか、人手不足に悩む企業の現状を見極めるうえで、マーケット関係者も注目しています。