マレーシア マハティール元首相 “IPEFは中国排除するもの”

マレーシアのマハティール元首相がNHKのインタビューに応じ、新たな経済連携、IPEF(アイペフ)=インド太平洋経済枠組みについて「中国を排除し、対抗しようとするものだ」として否定的な見方を示し、米中の対立の激化を避け、地域の安定を保つことが、東南アジア諸国の経済発展に必要だという考えを示しました。

国際会議に出席するため、24日から日本を訪れているマハティール元首相は、26日、都内でNHKの単独インタビューに応じました。

マハティール元首相は96歳。

日本の先進的な工業技術などを学ぶ「ルックイースト政策」を打ち出してから、ことしで40年を迎えたことについて「ルックイースト政策は、日本の技術や倫理観を学ぶことでマレーシアを発展させただけでなく、マレーシアと日本の間の相互理解を促し、対立も戦争もない、良好な関係を築くことにつながった」と成果を強調しました。

また、アメリカのバイデン大統領が提唱し、マレーシアを含め13か国が立ち上げに向けた協議に参加しているIPEFについて「これは中国を排除し、対抗しようとするものだ。中国に反対しアメリカに友好的な国をつくるという政治的な目的がある」として否定的な見方を示しました。

そのうえで「経済発展には安定が必要で対立は必要ない。アメリカは中国を締め出すことに熱心なようで、南シナ海に艦艇を送り込んでいる。いつか偶発的な事故が起きて暴力行為や戦争になるかもしれない。これはASEAN諸国の経済発展にとってよいことではない」と述べ、アメリカと中国の対立の激化を避け、地域の安定を保つことが、東南アジア諸国の経済発展に必要だという考えを示しました。

マハティール元首相 日本と深いつながり

マハティール元首相は、日本の工業技術や勤労精神を学ぶ「ルックイースト政策」を掲げるなど、日本との深いつながりがあり、親日家としても知られています。

自動車産業を育成しようとしていた1980年代には、自動車メーカー「プロトン」が設立され、日本企業の支援で、マレーシア初の国民車となる「SAGA」の生産が始まりました。

また、マハティール元首相が掲げた「ルックイースト政策」のもと、マレーシアから日本に留学生や研修生が派遣されて、人材交流が進み、これまでに2万6000人以上が日本で学びました。

マハティール元首相は第2次世界大戦後の日本の経済発展や、それを実現した日本人の働く姿勢を称賛しています。

2018年のNHKのインタビューでは「第2次世界大戦の敗戦で、日本は破壊されたが、茶わん1杯のごはんとしょうゆしか手に入らないような貧しい暮らしの中、急速な復興を実現してきた」としたうえで「日本には、技術革新の能力や高い生産性など学ぶべきところが今もある」と話していました。

1961年に初めて日本を訪れて以降、たびたび来日し、2018年の再任後も初めての外国の訪問先として日本を選び、当時の安倍総理大臣と会談しました。

この年の秋の叙勲で、日本とマレーシア間の関係強化や友好親善に寄与したとして桐花大綬章を受章しています。