ロシアがウクライナ東部2州で攻勢強める 支配の既成事実化も

ロシア軍は、ウクライナ東部2州の完全掌握を目指して攻勢を強めています。一方、すでに掌握したと主張する東部や南部の一部の州では、ロシアの国籍を取得しやすくする措置を取るなど、ロシアによる支配の既成事実化を進めています。

ロシア国防省は25日、南東部ザポリージャ州の工場をミサイルで破壊したほか、東部ドニプロペトロウシク州では移動中のウクライナ側の部隊を攻撃したなどと発表しました。

ロシア軍は、東部のドネツク州とルハンシク州の完全掌握を目指し、このうちルハンシク州で、ウクライナ側が拠点とする都市、セベロドネツクへの攻勢を強めています。

これに対してルハンシク州のガイダイ知事は「ここ数日、ロシア軍による住宅地への攻撃が絶え間なく続いている」と25日、SNSで非難しました。

またウクライナ国防省の報道官も24日「ロシアの軍事作戦が最も活発な段階に入った。東部戦線は非常に困難な状況だ」と危機感を示しました。

ロシアは、すでに掌握を宣言したドネツク州の要衝マリウポリで、港に設置されていた機雷を撤去したということで、ロシア外務省のザハロワ報道官は船舶の運航が再開されたと25日、発表しました。

さらにロシアのプーチン大統領は25日、ウクライナ南部のヘルソン州と南東部のザポリージャ州の住民がロシアの国籍を取得しやすくするために、手続きを簡素化する大統領令に署名しました。

これを受けて、ロシアの国営テレビはすでに住民がロシアの国籍を取得する手続きを始めているなどと伝えています。

ロシアは、軍事侵攻によって、ヘルソン州と、ザポリージャ州の一部を掌握したと主張していて、現地の親ロシア派はロシアの通貨ルーブルの導入を始めたとしています。

また、ヘルソン州の親ロシア派の幹部は今後、プーチン大統領にロシアへの編入を要請する考えも示しています。

ロシアは、東部2州の完全掌握に向けて攻勢を強めるとともに、すでに掌握したとする地域では、支配の既成事実化を進めています。

ルハンシク州知事「住宅地への攻撃が絶え間なく続いている」

ウクライナ東部ルハンシク州のガイダイ知事は「ここ数日、ロシア軍による住宅地への攻撃が絶え間なく続いている」と25日、SNSで非難しました。

24日には、主要都市の1つ、セベロドネツクが攻撃され、6人が死亡、8人がけがをしたほか、住宅2棟が破壊され、州内で破壊された住宅はあわせて25棟にのぼるということです。

クレバ外相「数年にわたって食糧危機の可能性」

ウクライナのクレバ外相は25日、スイスで開かれている世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」に出席しました。

この中で、ロシア軍がウクライナの主要な港を封鎖し、穀物の輸出を妨げているとされることについて「この状況が続けば、ウクライナでは新たな作物を植えられず、数年にわたって食糧危機が続く可能性がある」と述べ、食糧不足や穀物価格の高騰が長期化するおそれがあると懸念を示しました。

また、ロシアが経済制裁の緩和の見返りとして、港の封鎖を解除することを提案していると指摘したうえで「国際社会への明らかな恐喝だ」と強く批判しました。

プーチン大統領 負傷した兵士たちを見舞う

ロシアのプーチン大統領は25日、首都モスクワの病院を訪れ、ウクライナでの戦闘に参加し、負傷した兵士たちを見舞いました。

国営テレビの映像では、プーチン大統領はショイグ国防相とともに病室を訪れ、治療中の兵士と握手を交わしました。

そして兵士のひとりが9か月の息子がいると話すと、「自慢のお父さんですね」とねぎらっていました。

その後、プーチン大統領は、関係閣僚を集めた会議に出席し「命をかけている兵士たちは英雄として扱われるべきだ」と述べ、戦闘で負傷した兵士や死亡した兵士の遺族に対する支援を急ぐよう、指示しました。

ロシア軍の人的損失をめぐってはイギリス国防省が5月23日の分析で、侵攻から3か月間で、およそ1万5000人の死者が出ている可能性が高いと指摘するなど、厳しい現状が浮き彫りとなっています。

プーチン大統領としては、ロシア国内で軍事侵攻に対する批判や不満が高まらないよう、兵士や遺族への配慮を示したい思惑もあるとみられます。

国連人権高等弁務官事務所「少なくとも市民3974人死亡」

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から5月24日までに、ウクライナで少なくとも3974人の市民が死亡したと発表しました。

このうち259人は子どもだとしています。

地域別では東部のドネツク州とルハンシク州で2234人、キーウ州や東部のハルキウ州などそのほかの地域で1740人の死亡が確認されているということです。

また、けがをした市民は4654人に上るとしています。

ただ国連人権高等弁務官事務所は、激しい戦闘が続いた東部のマリウポリなどでの死傷者については、まだ確認が取れていないなどとして、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るという見方を示しています。

UNHCR「664万人がウクライナ国外に避難」

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、24日の時点でおよそ664万人に上っています。

主な避難先は、ポーランドがおよそ354万人、ルーマニアがおよそ97万人、ハンガリーがおよそ65万人、モルドバがおよそ47万人などとなっています。

また、ロシアに避難した人はおよそ94万人となっています。