生活保護費引き下げを違法と判断 取り消す判決 熊本地裁

生活保護費が平成25年から段階的に引き下げられたことについて、熊本県の受給者が最低限度の生活を保障した憲法に違反するなどと訴えた裁判で、熊本地方裁判所は厚生労働省の判断の過程や手続きに誤りがあり、引き下げは違法だと判断し、取り消す判決を言い渡しました。

生活保護費のうち、食費などの生活費部分の基準額について、国は、一般の低所得世帯の支出水準や物価の下落を反映する方法で、平成25年から27年にかけて最大で10%引き下げました。

これについて熊本県内の受給者36人は「最低限度の生活を保障した憲法に違反する」などとして、取り消しを求める訴えを起こし、裁判では国が基準額を算定した際の手法や手続きに問題があったかどうかが争点となりました。

25日の判決で、熊本地方裁判所の中辻雄一朗 裁判長は「基準額の決定には高度の専門技術的な考察とそれに基づく政策的判断が必要だ」と指摘しました。

そのうえで、今回の引き下げでは、初めて用いられる指標があったにもかかわらず、専門家の部会での十分な議論を経ていなかった点などを挙げ「厚生労働省の判断の過程や手続きは統計などの客観的数値との関連性や専門家の知見などとの整合性を欠いている点で誤りがあり、裁量権を逸脱している」として引き下げを違法と判断し、取り消しました。

原告の弁護団によりますと全国29の裁判所で起こされた同様の集団訴訟の判決は今回が10件目で、原告の訴えを認め、引き下げを取り消したのは去年2月の大阪地裁に続き2件目です。

弁護団の事務局長「重い判断なので早く判決を確定させたい」

原告らは記者会見を開き、弁護団の事務局長を務める阿部広美 弁護士は「受給世帯の生活実態に基づいた正当で一歩踏み込んだ判断が出された」と今回の判決を評価しました。
そのうえで「長い間たたかってきた原告の努力が報われた重い判断なので早く判決を確定させたい」と述べ、控訴しないよう求める考えを示しました。

また、熊本市に住む原告の80歳の男性は「勝訴を聞いたときは半信半疑だった。病気で働けなくなり生活保護を受給しているが月に1万4000円引き下げられ、苦しい状態が続いていたので今回の判決はうれしい」と話していました。

熊本市「国と協議して控訴するか検討」

36人の原告のうち、最も多い27人が生活保護を受給し、裁判で被告の立場の熊本市は「判決文を読んで精査したうえで、国と協議して控訴するか検討したい」とコメントしています。