ロシア ネット検索で「反戦」に関することば減少 抑圧強化か

ロシア国内でインターネットで検索されたことばを調べたところ、「反戦」に関することばの検索がウクライナへの軍事侵攻が始まったことし2月に急激に増加したあと、先月には大きく減少していたことが分かり、専門家は「反戦運動を厳しく取り締まるなど、ロシアの市民社会への抑圧がより一層強まっていることを示している」と話しています。

分析結果は

インターネットのアクセスデータ分析の支援を行っている「シミラーウェブジャパン」は、ロシア国内にあるパソコンからロシア語で検索されたことばの回数について、ことし1月以降の変化を調べました。

ウェブサイトやアプリから匿名で収集したデータなどから、特定のことばの検索回数を推計したところ、「ウクライナ」は、主に「最新ニュース」といったことばとともに検索されていて、関連のことばと合わせた検索の回数は、軍事侵攻が始まったことし2月には、推計値で520万余りと1月のおよそ13倍に急増しましたが、その後は減少傾向となり先月(4月)には220万余りと2月の半数以下にまで減少していました。

また「反戦」ということばは、主に「抗議」や「請願」、署名サイトの名前などと合わせて検索されていて、関連のことばと合わせた検索の回数はことし2月には推計値で96万余りと1月のおよそ10倍に増加しましたが、同じくその後は減少していて先月にはおよそ11万と2月の8分の1以下にまで減少していました。

ロシア政治の専門家「市民社会への抑圧レベル上がった」

この結果についてロシア政治に詳しい法政大学の溝口修平教授は「ことし3月上旬にロシア軍の信用を失墜させる言動が法律で禁止され、3月中旬以降ロシア国内での反戦デモが大きく減少し、それに合わせて『反戦』についてのネット検索が減少しているとみられる」としています。

そのうえで「当初は反戦運動に参加したい人が一定程度いてデモの場所などを検索していたとみられるが、反戦デモに参加すること自体がリスクの高い行為になってしまった。ここ数年反政府運動の取締りが強化されもともと権威主義的な国だったロシアにおいて、市民社会への抑圧のレベルがより一層上がったことを示している」と話しています。

「検閲」は2か月で倍以上に

このほか「検閲」ということばの検索回数はことし2月には4000余りでしたが、先月(4月)にはおよそ1万に増加したほか、通信を暗号化して検閲を回避できるサービスである「VPN」の検索回数は3月にはおよそ36万と、2月の5倍以上に増加していて溝口教授は「ロシア国内の情報統制が強まるなかで検閲を逃れて海外の情報を得ようとする動きもあり、自由な市民生活がこれまで以上に制約され始めていると感じている人が多くなっているのではないか」としています。

そのうえで、溝口教授は「政権側にとっては今のところは市民による反戦の動きを抑え込むことに成功したことがみてとれる。しかし、これから制裁の影響やロシアの戦死者が拡大していけばそうした反戦の声をどこまで抑え込むことができるのか、今後、どの程度反戦運動が拡大していくのか注目していきたい」と話しています。