【解説】クアッド首脳会合終わる 日本・アメリカの受け止めは?

日米豪印4か国の枠組み、クアッドの首脳会合が開かれました。
共同声明では中国を念頭に、緊張を高めるあらゆる威圧的で一方的な行動に強く反対すると発表。
また、インフラ分野で今後5年間に500億ドル以上の支援や投資を目指すことで合意しました。
日本とアメリカの受け止めについて政治部の太田雅志記者とワシントン支局の辻浩平記者の解説です。

Q1 日本にとってクアッドの成果と言えるのはどんな点?

(太田記者)
ロシアによる軍事侵攻が続く中、日本政府は、現状変更の動きがアジアにも波及しかねないという警戒感を強めています。

そうした中で、ロシアや中国を念頭に「力による一方的な現状変更はいかなる地域でも許してはならない」という認識を共有し、結束した姿勢を示せたことは一定の成果と言えると思います。
ウクライナ情勢をめぐっては、インドがロシアの伝統的友好国ですので、4か国の枠組みでどの程度一致できるかが焦点でした。

最終的に、共同声明は、ロシアを名指しせずに、現状変更の試みに訴えることのない平和的解決を求める形になっていまして、インドも受け入れられる落としどころを探るギリギリの調整が行われたものとみられます。

Q2 インドとの連携という点でアメリカはどう受け止めた?

(辻記者)
中国やロシアへの対応をめぐって温度差も指摘される中、アメリカは最低限の足並みはそろえることができたと受け止めていると思います。

インドのモディ首相との会談で、バイデン大統領は「一緒にできることはたくさんある。私はインドとの友好関係を、地球上で最も緊密なものにすることを約束する」と、両国の協調を呼びかけました。
ウクライナをめぐって力による現状変更が現実に行われようとしている中、アメリカは国際秩序の乱れがインド太平洋地域に波及することがあってはならないと、危機感を強めています。

今回の首脳会合で、民主主義や法の支配などの価値観を共有するクアッドの強い結び付きを示せたことは、「最大の競争相手」と位置づける中国に対しても明確なメッセージを送ることができたと評価しているものと見られます。

Q3 アメリカは今後インド太平洋地域にどう関与?

(辻記者)
バイデン大統領はきょうの首脳会合で「アメリカはインド太平洋地域の国家だ。われわれは同じ地域を共有し、深く関わっている」と述べて、関与への強い決意を示しました。

首脳会合を毎年開催し、定例化していくとしているクアッドや、きのう立ち上げた新たな経済連携IPEFは、いずれもその決意を形にしたものだと言えます。

さらにアメリカはイギリス、オーストラリアとともに去年新たに作ったAUKUSと呼ばれる枠組みで、原子力潜水艦をオーストラリアに配備する支援もしています。

アメリカは、同盟国や友好国は外交上の大きな資産だとしています。そうした国々と安全保障面だけでなく、5Gといった先端技術や、サイバー、サプライチェーンなどさまざまな分野を扱う枠組みを設け、連携することを通じて、中国に対抗していく考えです。

Q4 国際情勢変化するなか日本はどう対応?

(太田記者)
日本政府は、引き続きクアッドの枠組みでの協力を推進していく方針です。

立場に違いはあるものの経済など幅広い分野で具体的な協力を積み上げていくことで、4か国の存在感を高め、中国の影響力を低下させたいというねらいがあります。

また、来月ドイツで開かれるG7サミットは、岸田総理をはじめG7の首脳が一堂に会してロシアへの厳しい対応を改めて確認する場となる見通しです。

来年は、日本がG7の議長国を務めることになっていまして、岸田総理は、きのう、バイデン大統領にG7サミットを広島市で開催する意向を伝えました。

岸田総理としては、アジア唯一のG7メンバーとして、自由や法の支配といった基本的価値の重要性を訴え、国際社会の平和と安定に貢献していきたい考えです。