拉致被害者の家族 バイデン大統領と面会し直接訴えへ

北朝鮮による拉致被害者の家族が日本を訪れているアメリカのバイデン大統領と23日、面会します。高齢化が進み、被害者との再会を果たせないまま亡くなる家族が相次いでいること、そして、40年以上にわたって肉親と引き裂かれたままの苦悩を大統領に直接、訴えることにしています。

面会は東京の迎賓館で行われることになっていて、家族会の代表で横田めぐみさんの弟の拓也さん(53)や、母親の早紀江さん(86)、それに、田口八重子さんの長男の飯塚耕一郎さん(45)などが出席することになっています。

拉致被害者の家族がアメリカの大統領と面会するのは3年前、2019年のトランプ前大統領以来、5回目で、バイデン大統領との面会は初めてです。

面会では、家族の高齢化が進み、歴代大統領と面会した横田滋さんや飯塚繁雄さんなど、被害者との再会を果たせないまま亡くなる家族が相次いでいることを伝えることにしています。

そして、40年以上にわたって肉親と引き裂かれたままの家族の苦悩を訴え、すべての被害者の1日も早い帰国に向けてアメリカの協力を求めたい考えです。

家族会の代表を務める横田拓也さんはNHKの取材に対し、「40年以上、家族やきょうだいに会えない無念さや悲しさ、悔しさを伝え『この問題は許せない』と感じてもらいたい」と話しています。

被害者家族は、大統領との面会はゴールではないとしていて、23日の日米首脳会談で拉致問題についてどのようなやり取りが交わされるかを注視するとともに日本政府の主体的な取り組み、そして、日朝首脳会談の実現を求めていくことにしています。

横田めぐみさんの弟 拓也さん「心からの声をぶつけたい」

バイデン大統領との面会を前に拉致被害者の家族会代表で、横田めぐみさんの弟の拓也さんがNHKのインタビューに応じ、「被害者の家族が40年以上、苦しみの中にいること、そして、家族やきょうだいに会えない無念さや悲しさ、悔しさを直接、熱量を持って伝えたい。そのことによって、バイデン大統領に『この問題は許せない』と感じてもらえるように、心からの声をぶつけたい」と話しました。

また、「私の父はおととし亡くなり、家族会の飯塚前代表も妹の田口八重子さんと再会できないまま去年、亡くなったという現実がある。『40年以上たっても会えないなんて許されてはいけない』ということは伝えたいし、86歳になった母や90歳を超えた有本明弘さんが心から話せば、解決に向けて時間がないということは必ず伝わると思う。何とかアメリカの力を借りたいという気持ちを本音で話したい」と語りました。

さらに横田さんは「私たちがアメリカの大統領と面会することはキム・ジョンウン総書記にとってプレッシャーになると思う」と述べたうえで、日本政府に求めることとして「圧力を維持しながらも、対話によって拉致問題を解決すれば、互いの国にとって明るい未来になるというメッセージを発してほしい」と話しました。

横田めぐみさんの母親 早紀江さん「よい動きが始まれば」

中学1年生の時に拉致された横田めぐみさんの母親の早紀江さんは(86)23日午前、NHKの取材に応じ、「無残に連れ去られた子どもたちが40年以上もとらわれたままになっていること、解決に向けて協力してほしいということをバイデン大統領に伝えたい」と話しました。

そして「家族会で一緒に頑張ってきた人たちが相次いで亡くなっており、なんとか被害者と再会し『元気だったんだね』と言葉を交わす時間を与えてほしいという思いが強まっています。きょうの面会をきっかけに、よい動きが始まればいいなと願っています」と話していました。

市川修一さんの兄 健一さん「進展を信じる」

鹿児島県の拉致被害者、市川修一さんの兄の健一さん(77)は、23日午前、NHKの取材に応じ、「コロナ禍で活動もできず、外交面でこう着状態が続いているので、私たちの訴えによって何らかの進展があることを信じています。米朝首脳会談が開催されたら、バイデン大統領が拉致問題を提起してくれると思うので、それを日朝首脳会談につなげてもらいたい。そして、北朝鮮はすべての被害者を一括帰国させるという決断をしてほしい」と話しました。

松本京子さんの兄 孟さん「すがるような思い」

鳥取県の拉致被害者、松本京子さんの兄の孟さん(75)は、23日午前、NHKの取材に応じ、「被害者家族は高齢化しており、バイデン大統領が後ろ盾になって、私を含め、家族や被害者が元気なうちに帰国を実現してほしい。本当にすがるような思いで、そのひと言に尽きます」と話しました。

拉致問題解決に向け一刻の猶予も許されない

拉致問題は被害者との再会を果たせないまま亡くなる家族が相次ぎ、解決に向けて一刻の猶予も許されない状況となっています。

政府が認定している拉致被害者のうち安否が分かっていない12人の親で、子どもとの再会を果たせずに亡くなった人は、平成14年の日朝首脳会談以降だけでも8人に上っています。

3年前のトランプ前大統領との面会以降にも横田めぐみさんの父親の滋さんと、有本恵子さんの母親の嘉代子さんが亡くなりました。

今も健在な親は、横田めぐみさんの母親で、86歳の早紀江さんと、有本恵子さんの父親で93歳の明弘さんの2人です。

また、去年12月には、田口八重子さんの兄で、横田滋さんのあとを引き継ぐ形で家族会代表を務めた飯塚繁雄さんが亡くなりました。

こうした中、北朝鮮が拉致を認めた日朝首脳会談、そして、5人の被害者が帰国を果たしてから20年という節目の年を迎え、家族の間では、肉親と再会するという拉致問題の真の解決に向けて残された時間はわずかだという焦りが、これまでになく強まっています。

拉致被害者の家族と面会の米大統領 4人目に

拉致被害者の家族がアメリカの大統領と面会するのは今回のバイデン大統領で4人目となります。

最初の面会は2006年(平成18年)で、横田めぐみさんの母親の早紀江さんと弟の拓也さんが、ホワイトハウスで当時のブッシュ大統領と面会しました。

ブッシュ元大統領は、「就任以来、最も心動かされる会談だった」などと述べ、解決に向けて協力する姿勢を示しました。

2回目は、2014年(平成26年)、来日した当時のオバマ大統領との面会でした。

当時の家族会代表の飯塚繁雄さんと、横田めぐみさんの両親の滋さんと早紀江さんの3人が東京の迎賓館を訪れ、オバマ元大統領は「2人の娘を持つ親として、最愛の子どもを拉致された気持ちはよく分かる。支援したい」と述べました。

トランプ前大統領とは5年前の2017年と、3年前の2019年の2度、いずれも東京の迎賓館で面会しています。

3年前の面会では、2度の米朝首脳会談で拉致問題を提起したトランプ前大統領に対し、5人の家族がそれぞれ1分間、気持ちを伝え、すべての被害者の帰国に向けた協力を求めました。

面会の中でトランプ前大統領は横田早紀江さんに対し、娘のめぐみさんに「きっと会えるよ」とことばをかけたということです。