【詳しく】「クアッド」とは? 中国にどう対抗? ねらいは?

日本とアメリカ、オーストラリア、それにインドの4か国でつくる「クアッド」の首脳会合が24日、バイデン大統領の訪日に合わせて、東京で開かれます。

アメリカがロシアによるウクライナへの軍事侵攻の対応に追われる中、インド太平洋地域で経済的・軍事的に影響力を増す中国とどう向き合うのか。ロシア、中国に対する各国の思惑について、詳しく解説します。

(ワシントン支局 辻浩平、ニューデリー支局 平沢公敏、シドニー支局 青木緑)

そもそも「クアッド」ってなに?

「QUAD(クアッド)」は英語で「4」を意味することばで、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国でつくる連携や協力の枠組みです。

「クアッド」に参加する4つの国は、民主主義などの価値観を共有していて、それぞれ連携を強めることで、インド太平洋地域で存在感を高める中国の行動を抑えたいねらいがあるとみられます。

クアッド主導するアメリカは

アメリカは中国に対抗する上で価値観を共有する同盟国や友好国との連携を重視していて、クアッドをその枠組みの1つと位置づけています。

このため、バイデン大統領は閣僚レベルの枠組みだったクアッドを首脳レベルに引き上げて、去年3月にオンラインの首脳会合を開催。

9月には対面での首脳会合を初めて開き、今後は毎年開催することで合意しています。

アメリカは日本とオーストラリアとはそれぞれ同盟関係にあり、インドは同盟国ではないもののアメリカが関与を深めるインド太平洋地域の大国で、中国に対抗する上での大切なパートナーと位置づけています。

日本は今回の会合にどう臨む?

オンラインも含めると、4回目となる今回の首脳会合。ワーキングランチが行われる会合は初めてで日本政府は、個人的な信頼関係を深め、結束や連携を確認する場としたい考えです。

また、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、日本外交の基軸となるアプローチ、「自由で開かれたインド太平洋」の価値が重要な局面を迎える中でのタイムリーな会合だとしています。

覇権主義的な動きを強める中国などを念頭に、法の支配に基づく国際秩序を維持するとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取り組みを一層推進していく方針を確認するねらいもあります。
また、弾道ミサイルの発射を繰り返し、長距離弾道ミサイルの発射や核実験に踏み切る可能性が指摘されている北朝鮮への対応でも連携を確認したい考えです。

ウクライナ情勢をめぐっても意見が交わされる見通しで、岸田総理大臣は、3億ドルの追加の借款など日本の対応を説明し、G7=主要7か国などと連携して支援を継続していくことを強調する方針です。

ただ、インドは長年のロシアの友好国であり、ロシアへの制裁を強める欧米などとは一線を画していることから、今回の軍事侵攻も念頭に世界のいかなる地域でも力による一方的な現状変更は認められないという認識を共有できるかが焦点となりそうです。一方、4か国で進めるワクチンをはじめとする新型コロナ対策など6分野の作業部会での議論の進捗状況を確認し、さらなる協力に向けた話し合いも行われる見通しです。

オーストラリアのねらいは?

オーストラリアは、「この数十年で最悪」とも言われるまでに関係が冷え込む中国に対抗するため、クアッド各国との連携を重視しています。

オーストラリア政府がおととし「新型コロナウイルスの発生源を解明するための独立した調査が必要」との見方を示したのに対し、中国は強く反発。オーストラリアからの輸入品を制限する措置を相次いでとりました。

さらにことし4月には、中国が、オーストラリアの北東およそ2000キロに位置する南太平洋の島国、ソロモン諸島と安全保障に関する協定を結んだことが明らかになりました。
中国が太平洋地域で影響力を拡大させる中、オーストラリアとしては、アメリカや日本に加えて、地域で経済的にも軍事的にも存在感を高めているインドとの連携が、中国と対抗していく上で今後のカギを握ると考えているのです。

インドのねらいは?

クアッドの4か国の中で唯一、中国とおよそ3500キロにわたって地続きで向き合うインドは、中国に対抗するという点ではほかの3か国と一致しているとみられます。

経済的な結び付きは強いものの、国境が画定していない地域をめぐって長年対立していることや、中国がインドの周辺地域で軍事的・政治的・経済的な影響力を拡大させていることなどが理由です。

ただ、大きく異なるのは表向きはほかの3か国のような、いわゆる「対中包囲網」とは一線を画していることです。

インドはどういう立場なの?

クアッドでは「包摂的」ということばを強調し、対外的には「特定の国に対抗するものではない」としています。

これは、環境問題や多国間の枠組みでは中国と協調する場面もあることや、クアッドが同盟関係のように受け止められたり、東南アジアを含む周辺地域に必要以上の緊張が生じたりしないよう配慮していることがあるとみられます。

経済成長が続き、中国に匹敵するおよそ14億人の人口を抱える核保有国・インドは、大国の思惑に左右されずに自分のことは自分で決める「戦略的自律性」を維持しつつ、中国に向き合おうとしています。

これに対してアメリカは?

アメリカはこれまでの会合で、こうしたインドの懸念に配慮してきました。

会合の議題では新型コロナワクチンの供給など合意が得やすいテーマを中心にしてきたのです。

クアッドの枠組みでは新型コロナウイルスや気候変動への対策に加え、中国が強化を図っている宇宙やサイバー、それに高速・大容量の通信規格、5Gといった先端技術などの分野でも連携を深めようとしています。

ウクライナ問題は影響するの?

ウクライナ情勢をめぐるロシアへの対応でも、日米豪3か国とインドの立場には隔たりが見られます。

インドはロシアの伝統的な友好国で、大量の兵器を購入し、政治的なつながりも深いことから、国連総会などで行われたロシアに関する採決では一貫して棄権しています。

軍事侵攻を直接的には非難しない立場をとり続けるインドは、今回の首脳会合でも、ロシアとの友好関係を崩すわけにはいかないという、みずからの立場への理解を求めるものとみられます。

中国への対抗姿勢だけでなく、ウクライナ情勢をめぐるロシアに対しても、4か国がどこまで足並みをそろえられるかが焦点となっています。