“敵位置把握から約1分で砲撃可” ウクライナ軍支えるシステム

ロシア軍が掌握を目指すウクライナ東部では、欧米の軍事支援を受けるウクライナ軍の反撃でロシア軍の勢いが失われているとみられています。

ロシア軍の“渡河作戦”失敗が戦況に影響も

ウクライナ軍の戦果の1つとして挙げられているのが、今月11日ごろ、東部のルハンシク州を流れるドネツ川を渡ろうとしていたロシア軍を攻撃して進軍を阻んだとみられる作戦です。
これについてウクライナ軍は、ロシア軍の戦車や装甲車など70台以上を破壊することに成功したと主張し、アメリカのシンクタンク、「戦争研究所」も「この作戦の失敗は、ロシアの軍事評論家の間にも衝撃を与えている。戦術的な判断の失敗が示された」と指摘しました。

ウク軍の背景に“大砲のウーバー”

イギリスの新聞「タイムズ」によりますと、この攻撃で威力を発揮したのが「GIS Arta(ジーアイエス アルタ)」というシステムです。

このシステムは、偵察用ドローンやGPSなどから送られた戦場のデータによって敵の位置を特定すると、計算ソフトが処理してその地域にあるどの兵器が攻撃に最も適しているかを判断するということです。
これまで敵の位置を把握してから発射するまでに20分以上かかっていた時間を1分程度に短縮したとされています。

システムは、ウクライナ人のプログラマーがイギリスの企業と開発したということで、ロシアが一方的に南部クリミアを併合した2014年からウクライナ軍で使用され、砲兵部隊で広く使われているということです。
アメリカの配車サービス大手のウーバーが最も近い運転手と乗客をマッチングすることになぞらえて“大砲のウーバー”とも呼ばれています。

イーロン・マスク氏が支援も

こうしたシステムの運用には高速のインターネット網が必要ですが、戦地では、アメリカの実業家、イーロン・マスク氏の宇宙開発企業の衛星を使った高速インターネット接続サービスが活用されているということです。
軍事侵攻が始まった直後のことし2月、ウクライナのフョードロフ副首相の要請を受けてマスク氏側が協力を始めたということです。

アメリカは、ロシア軍に抵抗するウクライナ側を軍事面だけでなく、民間企業による通信技術などの面でもサポートしています。