アメリカ消費 堅調さの裏に借金?【経済コラム】

新型コロナに端を発した供給網の混乱に記録的なインフレ。
アメリカ経済を支える個人消費にどれぐらいブレーキがかかるのかがこのところの金融市場の大きな関心事でした。
現地の話を聞くと人気レストランは大にぎわい、アメリカ人の消費意欲は相変わらず強いようですが、ちょっと気がかりな借金のデータが出てきて、投資家たちをざわつかせているようです。
(経済部記者 仲沢啓)

堅調なアメリカの消費

アメリカ人が消費好きなのはよく知られています。

個人消費がGDP=国内総生産のおよそ7割を占めることもあって、数ある経済指標のなかでも個人消費に関連するものは特に投資家が注視しています。

日本時間の5月17日夜に発表された、アメリカの小売売上高もアメリカの消費を見るうえで大きな経済統計です。

結果、先月・4月の小売業の売上高は、記録的なインフレはどこ吹く風、前の月を0.9%上回り、4か月連続での増加と、好調さを示す内容となりました。

内訳を見ると、「雑貨店」が4%、「レストラン・バー」が2%の増加でした。

新型コロナウイルスの感染拡大でロックダウンが実施され、外出がままならなかった時期が長く続いたことで、今、アメリカ人の消費意欲が「爆発している」とも聞きます。
アメリカ・ニューヨークに駐在している岡三証券の吉田拡司さんは次のように話しています。
●岡三証券 吉田拡司さん
「通勤でタイムズスクエアの辺りを通ると、歩道を歩けないくらい人がごった返していて車道を歩いている。人気のレストランは全く予約がとれない。
航空券やホテルの金額も上がっていて、それでも需要は相当高い。
アメリカ人の消費意欲が非常に強いことを現地にいて感じている」

こうした、いわゆる“リベンジ消費”を物語るうえで、はやっているのが【YOLO】という英語のスラングです。

YOLOとは【You Only Live Once】を略したもので、“人生は一度きり”という意味です。

このところ、アメリカのSNS上で多く使われるようになっているそうです「人生は一度きりだから今を楽しもう!」こんな明るさが経済指標を押し上げています。

日本人からすれば、これだけのインフレであればまず節約を考えるのが普通だと思ってしまいますが、アメリカでは人手不足を背景に賃金が上昇傾向にあり、「将来的に給料が上がるから今使っても大丈夫だ」という先行き期待が好調な消費につながっていると指摘する市場関係者もいます。

リボ払い急増 大丈夫?

一方、気になるデータも出てきました。

それは個人のローンなどの借り入れを示す“消費者信用残高”です。

アメリカのFRB=連邦準備制度理事会が日本時間の5月7日に発表したことし3月の消費者信用残高は4兆5390億ドルと、前の月・2月から524億ドル増加していました。
これは、市場予想の倍以上の増加で、年率換算でも14%の大きな伸びだったこともあり、投資家たちのあいだに衝撃が走ったといいます。

特に、クレジットカードの“リボルビング払い”の伸び率は年率換算で35%と、1998年4月以来、24年ぶりの高い水準でした。

リボルビング払いは、旅行やレストランなどの支払いに使うことが多いことから、堅調な個人消費の裏側に金利負担の重い借金があるのではないか、と懸念が広がったのです。

かつて、好景気に沸いたアメリカで借金がブームとなり、低所得者に無理な住宅ローンを貸し付けたサブプライムローン問題が起きたことは記憶に新しいことです。

好調に見えるアメリカの個人消費は砂上の楼閣ではないのか、経済指標を細かく点検する必要性がいつも以上に求められるように感じています。

注目予定

23日には日米首脳会談が予定されています。

岸田総理大臣は、アメリカが主導して立ち上げを目指す新たな経済連携「IPEF(インド太平洋経済枠組み)」に参加を表明する方向で調整を進めています。

このほかセブン&アイ・ホールディングスの株主総会で、海外投資ファンドの主張をほかの株主がどう受け止めたかが注目されそうです。