知床 観光船沈没「飽和潜水」とは 船内捜索どう進める

北海道の知床半島沖で起きた観光船の沈没事故で、「飽和潜水」と呼ばれる深い海の水圧に対応できる方法で、19日初めて潜水士が船内の捜索を行いました。
その「飽和潜水」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

「飽和潜水」とは

「飽和潜水」は通常の潜水と比べて、より深い海でより長く作業ができるようにする潜水の方法です。
一般的な手順では、まず潜水士が船上にある加圧タンクに入り、高い圧力をかけた状態で一定期間を過ごし深海の高い水圧に体を慣らしていきます。
潜水作業に伴って体に異常が起こるのを防ぐためです。
準備が終わると潜水士は潜水用のカプセルで深海へ向かいます。
今回は観光船が沈んだ水深およそ120メートルの海底へカプセルを下ろします。
目標の深さに達したら、潜水士はカプセルの外に出て作業します。
潜水士たちは深海の低い水温に耐えられるよう特殊なウエットスーツを着用します。
体温を保つためカプセルからはホースで潜水士の特殊なスーツに温水が送り込まれます。
作業が終わった後は再び加圧タンクに戻り、少しずつ圧力を減らしていきます。
水深約120メートルの場合、4日から5日ほどかけるということです。

加圧タンクは生活できる環境

加圧タンクはどのような環境なのか。
飽和潜水に詳しい水難学会の斎藤秀俊会長に聞きました。
斎藤会長によりますと、海底での作業を行う期間と作業後の減圧が終わるまでの期間、潜水士は加圧タンクで生活します。
タンクの中にはベッドやシャワーがあり生活できる環境が整っているということです。
加圧タンクやカプセルの中は、酸素、窒素、ヘリウムを含むガスで満たされています。

海底での作業、何が危険?

水深120メートルの海底では地上の13倍の高い圧力が体にかかります。
斎藤会長によりますと、最も危険なのは高圧の海底での作業を終えたあとの「減圧症」だということです。
減圧症は高圧の環境下で体に取り込まれた窒素が、圧力が下がる際に体内で排出され泡になって血管を詰まらせるなどして起きる、手足のしびれや呼吸困難などの症状です。
飽和潜水では、潜水士がカプセルのなかでヘリウムを含むガスを吸い込むことで体に取り込まれる窒素の量を減らすなどして、減圧症を防いでいるということです。
また機器に異常があれば命に危険があるという状況は「宇宙遊泳に近い」と言います。
潜水中に温水が供給されなくなれば、潜水士は一気に体温を奪われるため命に関わります。

飽和潜水の経験ある元自衛官は

飽和潜水員として水深およそ100メートルの海に潜った経験がある元海上自衛官の大城和志さん(39)に話を聞きました。
大城さんによりますと、潜水士は濃縮されたガスを吸い、意識をして呼吸しないと入ってこないというイメージだということです。
『スープを飲むように呼吸をしろ』と表現されることもあるといいます。

「光は100mまでいくとほぼ入ってこない。暗い深いところを想定しているのでヘルメットにライトとカメラがついている。そんなに遠くまで見えるわけではないが、近づけば見える」

「深いので危険な潜水だと思われがちだが、実際は飽和潜水のシステムは安全にできているので事故がないように進んでいってもらえればと」

飽和潜水での捜索 20日も

第1管区海上保安本部が明らかにしたスケジュールによりますと、捜索活動は20日までの2日間程度行われ、20日は5時間ほど海底で作業にあたる予定だということです。
潜水士は行方不明者の捜索を最優先で行ったうえで、その後、船体の引き揚げに向けた調査にもあたることにしています。