北朝鮮 新たに約27万人発熱症状 中国から輸送機で医薬品搬入か

新型コロナウイルスによるとみられる発熱者が相次いでいる北朝鮮では、新たに27万人近くに発熱の症状が確認され、軍を投入して24時間態勢での医薬品の供給が始まりました。
一方、北朝鮮の輸送機3機が16日、隣国の中国から医薬品を搬入したとみられることが分かりました。

北朝鮮では16日午後6時までの一日で、新たに26万9500人余りに発熱の症状が確認され、先月下旬以降の累計は148万3000人余りに上っていて、新型コロナウイルスによるとみられる発熱者が相次いでいます。

17日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の特別命令を受けて、首都ピョンヤンに投入される軍医らが16日、決起集会を行ったあと、市内のすべての薬局に展開して24時間態勢での医薬品の供給を開始したと伝えました。

一方、消息筋がNHKの取材に対し明らかにしたところによりますと、北朝鮮国営のコリョ(高麗)航空のイリューシン76型輸送機3機が16日午前、中国東北部・瀋陽の空港に着陸し、その日の午後に北朝鮮へ戻ったことが確認され、中国から医薬品を搬入したとみられるということです。

イリューシン76型輸送機は、かつてキム総書記が米朝首脳会談に出席した際などに専用車を運ぶのにも使われました。

キム総書記は感染を徹底して抑え込む「ゼロコロナ」政策を進める中国を見習うよう指示していて、北朝鮮の医療体制がぜい弱で医薬品が不足していると言われる中、後ろ盾の中国の支援を仰いだとみられます。

ただWHO=世界保健機関は16日の声明で、北朝鮮では新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まっていないとして「早急に適切な対策を講じなければウイルスが急速に広がるおそれがある」と懸念を示しています。

北朝鮮 韓国の人道支援の通知文 受け取るか明らかにせず

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は16日の国会での演説で「北が応じればワクチンを含む医薬品や医療器具など必要な支援を惜しみなく行う」と述べ、人道支援の用意があると表明しました。

これを受けて韓国統一省は、新型コロナのワクチンの提供などの支援に向けて、南北の実務者協議の提案を盛り込んだ通知文を送ることを北朝鮮側に打診しました。

しかし、北朝鮮はこれまでのところ、通知文を受け取るかどうかの意思を明らかにしていないということです。

一方、北朝鮮は17日、韓国との窓口機関である祖国平和統一委員会のウェブサイトで、ユン大統領が今月10日の就任演説で、北朝鮮に対し「実質的な非核化に転換するなら経済と市民生活を画期的に改善できる大胆な計画を準備する」と呼びかけたことを非難しました。

この中で北朝鮮は、核を放棄すれば大規模な経済支援を行うとしたイ・ミョンバク(李明博)元大統領の政策を挙げて「そのまま書き写したにすぎない。わが国の戦略的地位は当時と異なっていて、あきれざるをえない」と不快感をあらわにしています。

ロシア外務次官と北朝鮮大使が会談 感染対策など協議

ロシア外務省は17日、モルグロフ外務次官がモスクワに駐在する北朝鮮のシン・ホンチョル大使と会談したと発表しました。

会談では両国関係や新型コロナウイルスの感染対策に関する協力などについて協議したということです。

これに先立ってロシア大統領府のペスコフ報道官は13日「ロシアではさまざまなワクチン接種が行われ、感染対策について豊富な経験がある。北朝鮮から要請があれば速やかに検討されるだろう」と述べ、ワクチンの提供など医療支援の用意があることを明らかにしました。