【詳しく】ウクライナ前大統領が語るプーチン 交渉で見た実態

止まらない、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。

攻撃を指示するプーチン大統領に世界はどのように向き合ったらいいのか。

ウクライナの大統領として、何度もプーチン大統領との交渉を経験したペトロ・ポロシェンコ前大統領が、NHKとの単独インタビューで語ったのは「決して信用しないこと」、そして、「恐れないこと」でした。

プーチン大統領と交渉したポロシェンコ氏とは

ポロシェンコ氏は、2014年から2019年までの5年間、ウクライナの大統領をつとめました。

大統領に就任後、2014年以降のウクライナ東部での紛争に関して、プーチン大統領との間で長時間の交渉を行い、電話でも何度も話して、「ミンスク合意」と呼ばれる停戦合意を結びましたが、その後も戦闘は続いてきました。

〈以下、ポロシェンコ前大統領のコメント〉

交渉から見えたプーチン大統領 人物像は?

(ポロシェンコ前大統領)
「プーチンとの交渉の経験から導き出した結論は『決してプーチンを信用してはならない』、そして『プーチンを恐れてはいけない』ということです。

プーチンは約束を決して守らず、妥協すれば、その分入り込んできます。

プーチンと交渉する際にどのような姿勢で臨めばよいかといえば、答えは1つしかありません。

それは力強く出ることです。

力強く交渉すれば、プーチンを止めることができます。

しかし、弱い姿勢で臨むとプーチンに結果を奪われることになるでしょう。」

プーチン大統領は何を目指している?

(ポロシェンコ前大統領)
「彼の目的は、第2のソビエト連邦、あるいはロシア帝国を作ることだと思います。

自分自身を中世の皇帝のように考えているのです。

交渉によって、彼と何らかの形で折り合うのは不可能です。

なぜならば、プーチンはウクライナを世界地図から消し去りたいのに対して、われわれは、1000年の歴史を持つウクライナを守り、発展させたいからです。」

5月9日「戦勝記念日」までに戦果を示せなかったのは?

(ポロシェンコ前大統領)
「いくつかの要因がありますが、最も重要なのはウクライナ軍の功績です。

私は2014年以降、大統領として、ウクライナ軍をNATO=北大西洋条約機構のスタンダードに合わせて改革し、新しい兵器、新しい戦術を導入しました。

ロシア軍は旧ソビエトのスタンダードで戦っていますが、私たちは新しいNATOのスタンダードで戦っているのです。」

今後プーチン大統領はどう出てくる?

(ポロシェンコ前大統領)
「攻撃が激化する可能性があります。

プーチンは何回も首都キーウを攻撃し、奪おうとしてきました。

それ以外にいくつものウクライナの都市を狙いました。

しかし、実現できなかったのは、ウクライナがプーチンを止めたからです。

世界はそのことに驚きました。

だからこそ、プーチンが一層攻撃を強める可能性があるかと聞かれたら、私の答えはイエスです。」

事態はどこまで拡大するのか?

(ポロシェンコ前大統領)
「すでに戦争が起きていて、世界中が何らかの形で参加している事実がある以上、第3次世界大戦が近づいていると思います。

第3次世界大戦にならないためには、プーチンを食い止める必要があります。」

プーチン大統領を食い止めるために何が必要?

(ポロシェンコ前大統領)
「国際的に連携してプーチンと交渉することが極めて重要です。

私は、アメリカ、イギリス、日本、EU、オーストラリアに深く感謝しています。

経済や軍事で最も強い国々がプーチンを止めるために団結することこそが、プーチンとの交渉を効果的なものにするために最も大切な要因です。」

日本に期待することは?

(ポロシェンコ前大統領)
「ウクライナと日本は、地球上の別の場所にありますが、ロシアという共通の隣国があります。

そしてこの隣国はとても危険です。

日本からはぜひ、ウクライナの戦後の復興に参加してほしいし、人道支援も望んでいます。」

インタビューを終えて

予定していた時間を超えて30分に及んだインタビュー。

ウクライナ語ではなく、英語で話してくれました。

時には早口にもなり、そうした姿勢からは、日本の人たちに少しでも多く、ウクライナの状況や事情を知ってほししいという思いが伝わりました。

実際に、プーチン大統領と多くの交渉を経験した人物なだけに、そのシビアな見方を重く聞きました。

(聞き手:キーウ取材班 別府正一郎)