チョルノービリ原発 周辺で汚染の実態調査始まる

ウクライナ北部のチョルノービリ原子力発電所、ロシア語でチェルノブイリ原発の周辺では、ロシア軍に一時占拠された際、軍の行動によって放射性物質による汚染が広がったおそれが指摘されていて、実態を調べる調査が進められています。

チョルノービリ原発は、ことし2月下旬から1か月余りにわたってロシア軍に占拠され、周囲では、ロシア軍が放射性物質を含む土を掘り返してざんごうを作るなどしたため放射性物質による汚染が広がったのではないかと懸念されています。

このため、原発から半径30キロの制限区域を管轄する政府機関の研究所では、先月中旬からロシア軍の行動によって、汚染状況にどのような変化があったか確認する調査が始まり、NHKの取材班は、許可を得て調査に同行しました。

16日の調査では、担当者2人が、原発から12キロほど離れたチョルノービリにある建物で、計測器を使って、放射線量を調べていました。

この建物には、侵攻前から少量の放射性物質が保管されていましたが、ロシア軍による占拠のあとウクライナ軍との戦闘で火災が起きたということで、保管場所の近くでは基準を超える放射線量が確認されていました。

研究所職員のアレクサンドル・バルスコフさんは、「ロシア軍は悪いことをした。きちんと調査を行うことで明らかにできる」と話していました。

チョルノービリ原発は2月下旬から先月上旬までロシア軍に制圧されていましたが、12キロほど離れたチョルノービリにも侵攻し、多くの事務所などがロシア兵によって、占拠されたり略奪されたりしました。

チョルノービリは、原発事故後の制限区域の中にありますが、NHKの取材班は許可を取って、原発の運営会社の職員の案内で取材しました。

このうち、電気修理会社の事務所は、兵士たちの拠点にされ、事務所の一室には、10床ほどのベッドが持ち込まれ寝泊まりするために使われていました。

また別の部屋には、ロシア語が記されたチーズや肉の缶詰が残されていて、兵士たちが食事をとっていたことが分かります。

一方で、原発や周囲の汚染状況をモニターする原発の関連施設は略奪にあい、モニタールームは机や床にものが散乱し、モニター画面やコンピューターの一部がなくなり、ロシア兵によって盗まれたものとみられています。

ウクライナ政府機関と福島大学の共同研究の拠点施設も被害

ウクライナの政府機関の研究所と福島大学がチョルノービリ原子力発電所、ロシア語でチェルノブイリ原発の周辺で行っている事故後の汚染状況に関する共同研究の拠点施設が、侵攻してきたロシア軍によって一時占拠された際、コンピューターや計測機器などが破壊され、研究の継続が危ぶまれる状況になっていることがわかりました。

ウクライナ北部のチョルノービリ原発は、ことし2月下旬から1か月あまりにわたってロシア軍に占拠され、周辺の町にある関連施設にもロシア軍の兵士が押し入りました。

このうち、原発から12キロ離れた町にある、ウクライナの政府機関の研究所「エコセンター」と福島大学環境放射能研究所などが、JICA=国際協力機構の支援で原発の周辺で行っている共同研究の拠点施設もロシア軍によって被害を受けていることがわかりました。

具体的には、日本が供与した放射性物質の計測機器などが設置された部屋がロシア軍の兵士によって荒らされ、コンピューターなどが壊されたほか、福島大学の研究者が使用していた部屋でもオンライン会議用の機材がなくなったり、扉が壊されたりしています。

また、ロシア軍の兵士たちは、施設内で寝泊まりしていたとみられ、残飯も散乱していました。

こうしたことから、ウクライナの政府機関の研究所「エコセンター」では、これまでに集めてきた計測結果などのデータが多く失われ、研究の継続が危ぶまれる状況になっていると懸念しています。

「エコセンター」の職員アレクサンドル・バルスコフさんは、ロシア軍が撤退し、施設に戻った際の心境について、「最初に惨状を見た時は、非常に恐ろしい気持ちになった。日本の研究者たちとは連絡を取り合っており、できるだけ早く共同研究を再開させるためにも、早く戦争が終わってほしい」と話していました。