【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(5月17日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる17日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

バイデン大統領 スウェーデン・フィンランド首脳と会談へ

アメリカのホワイトハウスは、バイデン大統領が19日にスウェーデンのアンデション首相とフィンランドのニーニスト大統領をホワイトハウスに招いて、NATO(北大西洋条約機構)への加盟申請や、ヨーロッパの安全保障について協議すると発表しました。スウェーデンとフィンランドはロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって安全保障環境が根本的に変わったとして、NATOへの加盟申請を近く行うとみられています。

ロシア国防省「ウクライナ側兵士など265人が投降」

ロシア国防省は17日、「この24時間で、ウクライナ側の戦闘員や兵士、265人が武器を捨てて投降し、このうち51人が重傷を負っていて治療のため病院に送られた」などと発表しました。

製鉄所をめぐる状況について、ロシアの新聞「イズベスチヤ」は17日、「ロシア軍が製鉄所を確実に包囲したあとは、ウクライナ側の投降は時間の問題だとみられていた」としてロシア軍が製鉄所をまもなく制圧するという見方を伝えています。

また、ロシア国防省は、▽西部リビウ州の鉄道駅付近で、欧米側から供与され、東部に輸送する準備中だったとする兵器を巡航ミサイルで破壊したとしたほか、▽北東部スムイ州や北部チェルニヒウ州でも訓練センターを攻撃し、兵士たちを殺害したと発表するなど、北部や西部でも攻撃を続けていると強調しました。

プーチン大統領「EUのロシア制裁 ヨーロッパをかえって困難に」

プーチン大統領は17日、エネルギー関係閣僚との会合で「EUはアメリカからの圧力で経済制裁を行っているが、それが自国の経済への打撃となっている。エネルギー価格の上昇によってヨーロッパの多くの産業の競争力が回復できないほど弱まる可能性がある」と述べ、ロシアへの制裁がエネルギー価格の上昇などにつながり、ヨーロッパ各国はかえって困難な状況に直面していると主張しました。

ウクライナ国外に避難 626万人 UNHCR(16日時点)

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、16日の時点でおよそ626万人に上っています。

主な避難先は
▽ポーランドがおよそ337万人、
▽ルーマニアがおよそ91万人、
▽ハンガリーがおよそ61万人、
▽モルドバがおよそ46万人などとなっています。

また▽ロシアに避難した人はおよそ85万人となっています。

深刻な栄養失調の子ども 増加のおそれ ユニセフ

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で穀物の輸出が滞り、世界的な食糧価格の高騰に拍車がかかるなか、ユニセフ=国連児童基金は17日、声明を発表し、深刻な栄養失調の子どもの数が増加するおそれがあるとして警告しています。

ユニセフによりますと、世界では現在、5歳未満の子どものうち少なくとも1360万人が深刻な栄養失調に陥り、免疫機能が低下することなどから5人に1人が死亡しているということです。

栄養失調の治療には栄養価の高いペースト状の食品が使われるということですが、ロシアやウクライナからの穀物の輸出が滞り、原材料が高騰していることから、価格が今後6か月で最大16%上昇する予測だということです。

このため、栄養失調の治療を受けられない子どもは現在の少なくとも1000万人から最大でさらに60万人増えるおそれがあるということです。

ユニセフのラッセル事務局長は「急速な世界情勢の変化が子どもたちを栄養失調による死や苦しみに陥れている」と危機感を示したうえで、各国に対し支援の強化を呼びかけています。

ウクライナ軍“製鉄所での戦闘任務終了” マリウポリ攻防戦節目

ウクライナ東部の要衝マリウポリで、ロシア軍が包囲し、ウクライナ側に投降を迫っていた製鉄所について、ウクライナ軍は戦闘任務を終了したと明らかにしました。

多くの兵士らが親ロシア派が支配する町などに移送されたということで、マリウポリの攻防戦は大きな節目を迎えています。

ゼレンスキー大統領“マリウポリ兵士の救出作戦開始”

ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、新たな動画を公開し、東部マリウポリでロシア軍が包囲している製鉄所に関連し「マリウポリの兵士たちを救うための作戦がはじまった」と明らかにしました。

そのうえで、「兵士の中には重傷を負っている者もいる。英雄たちが生きることがウクライナにとってなによりも必要だということを強調したい」述べ、兵士の避難を急ぐ考えを示しました。

また、ウクライナのマリャル国防次官は16日、「53人の重傷者がアゾフスターリ製鉄所から医療施設に搬送され、211人が避難ルートを通じて、移送された」と述べ兵士の移送にあたってウクライナ軍が拘束したロシア軍の捕虜との交換が行われる可能性も示唆しました。

マリャル国防次官によりますと、重傷の兵士が搬送されたのは、東部ドネツク州にある親ロシア派の武装勢力側の医療施設だということです。

スウェーデン NATO加盟申請決定 “近くフィンランドとともに”

スウェーデン政府は16日、臨時の閣議を開き、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって安全保障の環境は根本的に変わり、安全を守るにはNATOへの加盟が最善の道だとして加盟を申請することを決めました。

アンデション首相は、「スウェーデンの安全保障が強化されるだけでなくNATO全体の安全保障にも寄与できる」などと述べ、隣国フィンランドとともに近く申請を行う計画だと説明しました。

首都ストックホルムの市民からは、「今の状況を考えると、正しい道だ。去年だったらNATOへの加盟は必要ないと思っていたが、状況は変わった」とか、「長年、NATOへの加盟を支持してきたが、200年にわたってこうした同盟には加わってこなかったので本当に特別なことだ」などと、決定を歓迎する声が聞かれました。

一方で、「スウェーデンのNATO加盟はヨーロッパでの対立を加速させかねない。政治家はもっと市民の声を聞くべきで拙速な判断だ」と懸念する声もありました。

チョルノービリ原発 汚染の実態調査始まる

ウクライナ北部のチョルノービリ原子力発電所、ロシア語でチェルノブイリ原発の周辺では、ロシア軍に一時占拠された際、軍の行動によって放射性物質による汚染が広がったおそれが指摘されていて、実態を調べる調査が進められています。

チョルノービリ原発は、ことし2月下旬から1か月余りにわたってロシア軍に占拠され、周囲では、ロシア軍が放射性物質を含む土を掘り返してざんごうを作るなどしたため放射性物質による汚染が広がったのではないかと懸念されています。

16日の調査では、担当者2人が原発から12キロほど離れたチョルノービリにある建物で、計測器を使って放射線量を調べていました。
研究所職員のアレクサンドル・バルスコフさんは「ロシア軍は、悪いことをした。きちんと調査を行うことで明らかにできる」と話していました。

EU外相会議 ロシアからの石油輸入禁止 合意に至らず

EU=ヨーロッパ連合は外相会議を開き、ウクライナに対して670億円余りの追加の軍事支援を行うことを決めましたが、ロシアからの石油の輸入禁止についてはハンガリーが反対を続けていて合意には至りませんでした。

会議のあとの記者会見でEUの外相にあたるボレル上級代表は、ウクライナに対して5億ユーロ、670億円余りの追加の軍事支援を行うことで合意したと明らかにしました。
一方、協議が難航しているのが、EUが今月4日に加盟国に提案したロシアからの石油の輸入を年内に禁止することを含む、ロシアへの追加制裁案です。
制裁を実施するにはすべての加盟国の同意が必要ですが、ロシアからパイプラインで石油の供給を受けているハンガリーが反対を続けています。
外相会議でも、輸入禁止に対応するためにハンガリーが必要だとする期間やコストなどをめぐって話し合いが行われたということですが、合意には至りませんでした。
見通しについてボレル上級代表は「これ以上長くかからないことを願うが、あと1週間かかるのか2週間かかるのか言うことはできない」と述べ、引き続き協議を行う考えを示しました。

プーチン大統領 CSTO加盟国首脳と相次ぎ個別会談

プーチン大統領は16日、CSTOの加盟国の首脳たちと相次いで、個別に会談しました。

このうち、ロシアと関係が深いベラルーシのルカシェンコ大統領とも会談し、ベラルーシの大統領府によりますと、両首脳は▽ロケット弾の製造など両国の軍事産業分野での協力について話し合い、▽近い将来、再び会談することで合意したということです。

一方、今回の首脳会議で、プーチン大統領は、加盟国の首脳たちに対して、ウクライナでの軍事作戦の状況を説明していて、個別の会談では、各国の首脳に作戦への協力を求めた可能性があります。

しかし、ロシアの軍事侵攻をめぐってはカザフスタンなど、一部の加盟国はロシアと距離を置いているともみられています。

ウクライナ検察当局 子ども229人死亡(16日時点)

ロシアの軍事侵攻で死傷した子どもの数について、ウクライナの検察当局は、16日の時点で少なくとも229人が死亡し、421人がけがをしたと発表しました。
死亡、またはけがをした子どもが最も多いのは
▽東部ドネツク州で140人、
次いで
▽首都があるキーウ州で116人
▽東部ハルキウ州で100人
▽北部チェルニヒウ州で68人などとなっています。
また、爆撃や砲撃による被害を受けた学校などの教育施設は1748か所にのぼり、このうち144か所は完全に破壊されたということです。

国連 ウクライナ市民 3668人死亡(今月15日まで)

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月15日までに、ウクライナで少なくとも3668人の市民が死亡したと発表しました。
このうち245人は子どもだとしています。
地域別でみると、東部のドネツク州とルハンシク州で2014人、キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで1654人の死亡がそれぞれ確認されているということです。
また、けがをした市民は3896人に上るとしています。
ただ国連人権高等弁務官事務所は、東部のマリウポリなど激しい攻撃を受けている地域での死傷者の数については、集計が遅れていたり、確認がまだ取れていなかったりしていて、実際は大きく上回るという見方を示しています。

米 北欧のNATO加盟「歓迎する」

北欧のフィンランドとスウェーデンが、NATO=北大西洋条約機構への加盟に向けた動きを進めていることについて、アメリカ・ホワイトハウスのジャンピエール報道官は16日、記者会見で「歓迎する。正式に加盟申請がなされれば強く支持するだろう。フィンランドとスウェーデンはともにアメリカおよびNATOの緊密かつ確かな防衛上のパートナーだ」と述べました。

また、アメリカ国防総省のカービー報道官も会見で、「NATOは防衛のための同盟であり、ロシアを含むほかのいかなる国にも脅威を与えてはいない。NATOに加盟するかどうかについてプーチン大統領やそのほかの第三者が拒否することはできない」と述べました。

そのうえでカービー報道官はプーチン大統領が将来、対抗措置を取ることも辞さない構えを示していることについて、「誰が本当の侵略者なのか、そして誰の行動がフィンランドとスウェーデンにNATOに加盟したいと思わせたのか、われわれは忘れてはならない。それはプーチン大統領とロシア自身だ」と述べて、ロシア側をけん制しました。

トルコ大統領 北欧のNATO加盟 重ねて否定的な立場示す

フィンランドとスウェーデンのNATO=北大西洋条約機構の加盟に向けた動きに、トルコが難色を示していることを受けて、ロイター通信は、両国の政府高官が、協議を行うため、トルコを訪れるとスウェーデン外務省の報道官の話として伝えました。
これについて、トルコのエルドアン大統領は16日、首都アンカラで会見し、「彼らは来週月曜日に説得しにくるというが、そんな手間は必要ない。我々に制裁をかしている国のNATO参加にイエスとは言えない」と述べ、両国の加盟の動きに重ねて否定的な立場を示しました。
そのうえで、両国がトルコがテロ組織に指定しているクルド人武装組織のメンバーの引き渡し要請に応じていないとして、「どうやって彼らを信頼すればいいのか」と述べ、クルド人武装組織への対応をめぐり不満をあらわにしました。

フランス大統領府 NATOへの加盟申請決定を支持

フランス大統領府は16日、フィンランドとスウェーデンがNATO=北大西洋条約機構への加盟申請を決定したことについて「ヨーロッパの非常に緊密なパートナーである両国の決定を歓迎する」という声明を発表しました。
そのうえで「両国のNATOへの加盟はその強力な防衛力によりバルト諸国やヨーロッパ、そして大西洋地域の安全保障をより強化することになる。フランスはハイレベルの戦略協議や軍事的な交流を通じて、両国との安全保障上の協力を強化する用意がある。主権国家に対する侵略や脅しによってヨーロッパの連帯を試そうとする国は、フランスが両国の側に立つことを確信しなければならない」として、ロシアをけん制しました。

米国防総省 “ロシア軍 ハルキウ周辺から国境近くまで後退”

アメリカ国防総省の高官は16日、ウクライナ軍が第2の都市、ハルキウの周辺に展開していたロシア軍の部隊をロシアとの国境近くまで押し返したとする分析を明らかにしました。

この高官によりますと、ハルキウではロシア軍が空爆や砲撃を続けていますが、ウクライナ軍が周辺で占領された地域を取り戻し続けているということです。そして周辺に展開していたロシア軍の部隊を北に押し返し、ロシアとの国境までおよそ3キロから4キロの位置にまで後退させたと指摘しました。
またウクライナ東部ではロシア軍とウクライナ軍との間で砲撃の応酬が続いていて、ロシア側が大きく支配地域を拡大することはできていないとの見方を示しました。東部ルハンシク州ではロシア軍の部隊がウクライナ側の抵抗でドネツ川にかかる橋を渡ることができずにいるとしたうえで、この高官は「ロシア軍は部隊を再配置するか、川を渡るためにウクライナ側の守りの手薄な地域を見つけるまで東部地域で大きな成果を上げることは難しい」と述べました。

一方、この高官によりますと東部ドネツクの近くでは激しい戦闘の末、ロシア軍の部隊がわずかに前進したということです。この部隊が前進している方向には東部マリウポリを離れて北上したあと動きを停止しているロシア軍の部隊がいるということで、これらの部隊に合流しようとしている可能性があると指摘しました。

ゼレンスキー大統領 ロシア国境に到着した部隊に感謝

ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、公開された動画の中で第2の都市ハルキウ近くのロシアとの国境に到着したウクライナ軍の部隊に向けてメッセージを述べました。
この中でゼレンスキー大統領は「感謝の気持ちでいっぱいです。あなたたちはすばらしい仕事をしている」などと述べ、軍の部隊をたたえました。

英国防省 “ベラルーシ 軍の特殊作戦部隊を国境に展開”

イギリス国防省は16日、最新の戦況分析を公表し、ロシアの同盟国ベラルーシが軍の特殊作戦部隊をウクライナとの国境沿いに展開させることなどを発表したと明らかにしました。

そのうえで「国境近くでのベラルーシ軍の存在によってウクライナ軍の部隊は足止めされ、東部ドンバス地域での作戦支援のために展開することが難しくなる可能性が高い」と分析しています。

一方、ベラルーシ領内はロシア軍が当初、ウクライナの首都キーウなどに侵攻する際の中継地点や、空爆やミサイル攻撃の拠点として使われたものの、「ベラルーシ軍はこれまで戦闘に直接関与はしていない」という見方を示しています。

これについてイギリス国防省は、ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ロシアの軍事侵攻への支持と、欧米の制裁やウクライナ側の報復といったリスクを伴う直接的な軍事参加は避けたいという思惑とのバランスをとっていると見られるとしています。

「ロシア軍 住宅街無差別砲撃への依存高めるか」英国防省

ウクライナでの戦況についてイギリス国防省は17日、ロシア軍の部隊が撤退した首都キーウ北部のチェルニヒウではおよそ3500の建物が完全に破壊されるなどし、その80%が住宅だったと指摘しています。

そしてロシア軍が住宅街をねらった無差別な砲撃への依存を高めていく可能性があると分析しています。

そのうえで「ロシア軍が東部ドンバス地域で勢いを取り戻すため、今後数週間集中的な砲撃に大きく頼るおそれがある」と警告しています。