知床 観光船沈没 国交省が去年の特別監査の資料を立民に開示

北海道の知床半島沖で観光船が沈没した事故で、国土交通省は、運航会社が、去年、別の事故を起こした際に行った特別監査に関する資料を立憲民主党に開示しました。
立憲民主党は、会社側の改善の取り組みがずさんだったうえ、国土交通省のチェックも不十分だったと指摘しました。

今回の事故を受けて発足した立憲民主党の検証チームの初会合で、国土交通省は、運航会社が去年、座礁など2件の別の事故を起こした際に行った特別監査に関する資料を開示しました。

開示された資料のうち、会社側が業務改善に取り組んだことを示す資料として国土交通省に提出した日々の「運航記録簿」では、風速や波の高さなどが、毎日、同じ数値になっていました。

また、会社側が、船の通信設備として報告した衛星電話について、国土交通省は、実際に使えるか確認していなかったことも明らかになりました。

出席した議員からは、会社側の改善の取り組みがずさんだったうえ、国土交通省のチェックも不十分だったという指摘が相次ぎ、国土交通省の担当者は「われわれも反省点はある。きちんと確認する仕組みをどうするか検討している」と述べました。

検証チームの座長を務める大串衆議院議員は、会合後、記者団に対し「国の行政指導も、会社側の改善報告も極めて内容が薄い。国がもう少し厳しく指摘をしておけば、今回の事故は防げたのではないか。当時の対応が十分だったのか、行政監視の役割を果たしたい」と述べました。

開示された資料の詳細は

13日開かれた、立憲民主党による事故の検証チームの初会合では、去年「KAZU 1」が起こした2件の事故に関係する資料などが国側から開示されました。

1「船員法違反事件報告書」

北海道運輸局が作成した、去年6月の事故に関する報告書では「KAZU 1」が事故の発生時に適切な見張りを確保しておらず、船員法に違反したと指摘しています。

2「是正報告書」

これに対し「知床遊覧船」が是正報告書を提出し「船長と甲板員の2人で目視による確実な見張りを行い、暗礁などの近くを航行する際は甲板員が船首に立って見張りをする」などとしています。

3「輸送の安全確保に関する指導」

去年7月には、2度にわたる事故を起こしたことを受け、北海道運輸局があわせて10項目の、安全確保と再発防止の対策を講じるよう指導しています。

この中では、すべての従業員に対して「安全管理規程」についての教育を行い、安全確保を最優先する意識の定着を図ることや、航行中に陸上にいる運航管理者へ定時連絡を行うこと、運航管理者などは常に連絡を取れる状態を維持し、事故の発生時には必要な措置を講じられる体制を確立すること、運航の可否判断などの内容を運航記録簿に記すことなどと指導しています。

4「改善報告書」

「知床遊覧船」はその10日後、指導されたこれらの点について「全従業員が徹底して実行し、安全運航をしてまいります」などと記した「改善報告書」を運輸局に提出しました。

ただ、会社が乗客の家族に行った説明などによりますと、今回の事故では、確実につながる通信設備がない中で出航を決めるなど、安全確保が徹底されていなかったことや、船からの定時連絡はなかったうえ、運航管理者となっている桂田社長が当時、会社にはいなかったことなどが明らかになっています。

5「指導を受けた全体会議」

また「知床遊覧船」では去年7月、運輸局からの指導を受け、会社の事務所で全体会議を開き、全社員が安全管理規程を改めて読み直し理解に努めたほか、運航管理者の社長が不在でも、営業所に運航管理補助者を配置して船長と連絡体制を取ることを確認したとしています。

ただ、社長が不在の際の「運航管理補助者」が今回の事故当時、誰だったのかについては、13日の会合では明確に示されませんでした。

6「運航記録簿」

運輸局が行った特別監査の際に、確認の対象となった会社の「運航記録簿」では、それぞれの便について、風速や波の高さ、視界などのデータを記しているほか、乗客の数が記録されていて、記録者として豊田船長、確認者として桂田社長の印鑑が押されています。

ただ、連日の記録がいずれも、風速は「0.5メートル」波の高さは「0.5メートル」視界は「5000メートル」と、ほとんど同じ数字が記されているほか、乗客数は「KAZU 3」についてのみ記されています。

13日の会合では議員からの指摘に対し、国土交通省側は「適切ではないと思う。大いに猛省するところだ」などと述べ、チェックが不十分だったと認めました。

7「船内注意喚起アナウンス」

会社が作成した、観光船の運航の際に船内で放送するアナウンスは、断崖の近くを通るときは、船体が大きく横揺れするので手すりにつかまることや、乗船中は必ず救命胴衣を着用すること、高い波やうねりがある時は必ず着席することなどを乗客に呼びかける内容となっています。

8「抜き打ち検査の報告書」

去年10月「知床遊覧船」が事故のあと、指導内容が守られているか確認するため、運輸局が抜き打ちで会社に立入検査した際の報告書も提出されました。

それによりますと、桂田社長が不在だったため豊田船長に聞き取りなどを行い、その結果、記録簿の関係は求められているものが実施されているが、一部が確認できなかったと記載されています。

また、船長は「安全管理規程や各法令の順守の重要さを再認識した」という趣旨の話をしていたことや、運輸局の担当者に対し、社長が電話で「安全あっての商売」とか「安全運航に努める」と話していたことなどから「以前よりも安全と法令順守意識が向上したことを確認出来た」とまとめています。

9「運航管理者選任届出書」

去年3月、桂田社長が「運航管理者」となった際の北海道運輸局への届け出では、社長が「船舶の運航の管理に関して3年以上の実務経験を有する」としています。

そして、具体的な実務経験として、平成28年10月から4年5か月にわたって、船舶の運航管理補助を行っていたとしています。

ただ、13日の会合では、この届け出はあくまで会社側の自己申告に過ぎず、国土交通省はチェックが甘かった可能性があるという認識を示しました。

10「事業計画変更」

会社の事業計画の認可書や届け出書によりますと「KAZU 1」は昭和60年2月に進水し、平成18年4月から「知床遊覧船」の事業で使用されています。

船体はFRPと呼ばれる強化プラスチック製で、去年7月には老朽化を理由に、エンジンの載せ替えを行ったということです。

エンジンを交換して1年もたたないうちに、今回の事故でエンジンが停止した航行不能になったとみられ、海上保安庁が原因などを捜査しています。