都内の感染状況「拡大傾向にないが警戒が必要」専門家

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況について、都の専門家は「拡大傾向にない」と分析する一方で、ここ数日の新規陽性者は「大型連休中に検査数が減少した影響などを受けた数値で評価には注意が必要だ」と指摘し、今後の推移に警戒すべきだとしています。

東京都の新型コロナウイルスのモニタリング会議が12日に開かれ、専門家は、都内の感染状況の警戒レベルを上から2番目で維持し「拡大傾向にないが警戒が必要である」と分析しました。

新規陽性者の7日間平均は、11日時点でおよそ3580人で「前の週から横ばいだ」と説明しました。

そのうえで「大型連休中の医療機関の休診による検査数の減少や、検査報告の遅れなどの影響を受けた数値で、報告数の評価には注意が必要だ」と指摘しました。

連休中に滞っていた都への報告が、ここ数日で行われている可能性などがあるということです。

そして「重症化リスクの高い65歳以上は、いまだ高い値だ」などとして、今後の推移に警戒すべきだとしています。

また、医療提供体制についても、上から2番目の警戒レベルが維持され、専門家は「通常の医療が制限されている状況である」と分析しました。

救急搬送が困難になったケースは引き続き高い水準で推移していて、救急医療体制に影響が残っているとしています。

一方で、新たに入院した患者や、入院患者全体の人数は減少傾向にあるとして「通常医療との両立を目指して病床を柔軟に活用する必要がある」と指摘しました。

感染者数の実態「判断しかねる」

東京都内で新型コロナウイルスに感染が確認された人は、11日まで5日連続で前の週の同じ曜日を上回っています。

これについて、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、モニタリング会議のあと記者団に対し「大型連休中の人々の行動の影響が出ているのか、連休中に報告されるべきだった発生の報告が週明けに出てきているのか、より分けができない」と述べました。

そのうえで、感染者の数が実態として横ばいなのか、増えているのかは「判断しかねる」と述べ、しばらく状況を注視する必要があるという認識を示しました。

“マスクの適切な着用” 今後検討へ

都の専門家は、マスクの着用について、感染症のリスクと、夏の熱中症のリスクにそれぞれに備える必要があるとして、今後、専門家ボードで適切なマスクの着用の在り方について検討していく考えを示しました。

都のモニタリング会議で、都の専門家ボードの座長で、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、海外でのマスクの状況について、着用の義務がない国や、医療関係施設などで着用を義務づけている国など、国ごとに対応が分かれていると説明しました。

また、国内では、専門家などから「屋外ではマスク着用を見直してもいいのではないか」など、さまざまな発言があることを紹介しました。

そのうえで、賀来特任教授は「マスクの正しい着用は、基本的な感染症対策として非常に有用だ。夏に向けては熱中症対策も重要で、感染症と熱中症の両方のリスクに備え、マスクとうまくつきあっていく必要がある」と述べました。

そして、今後、専門家ボードで議論して適切なマスクの着用の在り方について検討し、具体的な事例などを交えながら、メッセージを発信していく考えを示しました。