【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(5月11日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる11日の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ヘルソン州親ロシア派勢力 ロシア編入要請へ ウクライナは反発

国営のロシア通信などによりますと、ロシアが軍事侵攻後、掌握したと主張しているウクライナ南部のヘルソン州で、11日、親ロシア派勢力の幹部が記者会見を開き、今後、プーチン大統領に対して、ヘルソン州をロシアに編入するよう要請する方針を示しました。

会見を開いたのは、ロシア側が擁立した親ロシア派勢力の幹部、ストレモソフ氏で、ロシアへの編入に向けて、年内に法的な枠組みを準備するということです。

これについてロシア大統領府のペスコフ報道官は11日、記者団に対し「ロシアの一部になるかどうかは、ヘルソンの住民が決めることだ」と述べました。

ウクライナのポドリャク大統領府顧問は11日、ツイッターに投稿し「ヘルソンにいる『裏切り者』は、いずれ法廷で断罪され、許しを請うことになるだろう」と非難しました。
そのうえで「占領者は火星や木星にも編入を求めればいい。何を言おうともウクライナ軍はヘルソンを解放する」と強く反発しています。

オデーサ在住ジャーナリスト「ミサイル迎撃の装備が不足」

ウクライナ南部にある黒海沿岸の都市オデーサに住むジャーナリストのマイケル・シュトケルさんが11日、NHKのオンラインインタビューに応じ、現地の被害の状況などを語りました。

シュトケルさんは「私たちは今、オデーサやその近郊にミサイル攻撃が増え続けているのを目の当たりにしている。標的の大部分は居住地域の住宅だ。それが市民の死亡やけがにつながっている」と証言しました。

そして「電気や水道などはいまのところ問題ないが、市民は地下シェルターに避難するなどして暮らしている」と述べ、多くの市民がロシア軍の攻撃におびえながら生活せざるをえない状況が続いていると訴えました。

またシュトケルさんは「ウクライナ軍はオデーサを防衛するために精いっぱい戦っている」としながらも「ミサイルを迎撃するための装備が不足していて、極超音速ミサイルを含むロシア軍の攻撃を防ぐことは難しい」と述べ、国際社会にさらなる軍事支援を求めました。

岸田首相とフィンランド首相“ロシアにきぜんと対応継続”一致

岸田総理大臣は、初めて日本を訪れているフィンランドのマリン首相と、11日夜、総理大臣官邸で会談しました。

岸田総理大臣は「ロシアによるウクライナ侵略は、ヨーロッパのみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為だ。歴史の岐路に立ついま、フィンランドをはじめとする普遍的価値を共有する国々との結束が求められている。自由で開かれたインド太平洋に向けても連携していきたい」と述べました。

これに対しマリン首相は「私たちは共通の価値を共有している。ロシアのウクライナに対する戦争は、ヨーロッパの安全保障だけでなく、グローバルな環境に大きな変化をもたらした。中国はみずからの力をどう使うか画策しているのではないかと思う」と述べました。

そして、両首脳は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を強く非難するとともに、両国を含む普遍的価値を共有する国々できぜんとした対応を続ける方針で一致しました。

そのうえで、ヨーロッパとインド太平洋の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更は世界のどこであっても認められないという認識を共有しました。

林外相“ウクライナでの大使館業務再開 現地情勢見極め検討”

ウクライナ情勢をめぐっては、日本を含めた多くの国が首都キーウにある大使館の職員を一時的に国外に退避させましたが、フランスやカナダなどの欧米各国では、現地での大使館業務を再開させる動きが出てきています。

これについて、林外務大臣は記者会見で「日本としては、現在、在ポーランド日本大使館などを拠点に、在留邦人への情報提供や安全確保、それに出国支援に最大限取り組んでいる。在ウクライナ大使館の再開については、現地の情勢などを不断に注視し、総合的に検討したい」と述べました。

ロシアを“テロを支援し実行する国家”と非難 リトアニア議会

バルト3国の1つ、リトアニアの議会は10日、ロシアによる軍事侵攻を「ウクライナ人に対する集団虐殺」とする決議案を、全会一致で採択しました。
決議ではロシア軍が意図的かつ組織的に、ウクライナの市民を爆撃の標的にしていると指摘したうえで、ロシアを「テロを支援し実行する国家」だと非難しています。
そしてロシアがウクライナに対して行った集団虐殺や戦争犯罪を調査し裁く、国際的な特別法廷を設置するよう国際機関や各国政府などに求めました。

リトアニア議会の決議に対してロシア外務省のザハロワ報道官は11日、SNSに動画を投稿し「挑発的な過激主義であり、政治的な偽善にすぎない」と反論しました。

ウクライナ軍 東部ハルキウ州の4集落を奪還と発表

ウクライナ軍は10日、東部ハルキウ州の4つの集落をロシア軍から奪還したと発表しました。
一方、ウクライナ東部ではロシア軍の攻撃が増しているとしていて、特にマリウポリでは、ロシア軍がアゾフスターリ製鉄所へ攻撃を集中させているということです。

“がれきの下から44人の遺体” 東部ハルキウ州の知事

ウクライナ東部のハルキウ州の知事は10日、SNSの「テレグラム」で、ことし3月にハルキウ州イジュームでロシア軍の攻撃を受けて破壊された5階建ての建物のがれきの下から、44人の遺体が見つかったと明らかにしました。
知事は「市民を標的にした、恐ろしい、新たな戦争犯罪だ」としてロシアを非難しています。

“ロシア軍への抵抗の象徴” 記念切手がウクライナで人気

ウクライナの南部オデーサ州の沖合にあるズミイヌイ島は、ロシア軍への抵抗の象徴として記念切手にも描かれ、ウクライナで人気を集めています。

この切手は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった直後のことし2月下旬、黒海にあるズミイヌイ島を防衛していたウクライナの国境警備隊がロシア側から投降を求められたのに対し「ロシアの軍艦よ、くたばれ」と言い返したという話をもとに作られました。
切手には、ズミイヌイ島に立つ国境警備隊の隊員が、ロシアの黒海艦隊の旗艦「モスクワ」に向けて中指を立てる様子が描かれていて、ウクライナでは、ロシア軍への抵抗の象徴となっています。
先月14日、切手に描かれている旗艦「モスクワ」が実際に沈没したことを受けてさらに注目が集まり、ウクライナの郵便局によりますと、これまでにおよそ100万枚を発行したということです。

さらにズミイヌイ島に関連した切手を近く販売するということですが、すでに沈没した「モスクワ」についてはデザインから省かれるということです。

ウクライナ国内で避難 800万人以上に(5月3日時点)

IOM=国際移住機関が10日発表した報告書によりますとロシアによる軍事侵攻を受けて、ウクライナ国内で避難生活を余儀なくされている人の数は今月3日時点の推計で802万9000人に上るということです。
前回公表された4月17日時点と比べて32万人余り多くなっています。
避難先として最も多いのが、リビウなどがある西部の地域に全体の3割以上を占める290万人が避難しているということです。
また、避難している人に必要な支援を尋ねたところ「資金面の支援」と答えた人が最も多く「衣類など食料以外の物品」「医薬品と医療サービス」が続いています。
一方、避難先から戻った人たちは271万5000人に上るということです。

米下院 ウクライナ支援に約400億ドル 追加予算案を可決

ウクライナへの兵器の供与や人道支援などを強化するため、アメリカ議会下院はバイデン大統領が当初求めていた額から70億ドルさらに上乗せしたおよそ400億ドル、日本円にして5兆2000億円の追加の予算案を可決しました。

予算案にはウクライナへの兵器の供与やアメリカ軍が提供する兵器の補充、ウクライナ政府への経済支援、それに人道支援などが含まれていて、近く上院でも可決される見通しです。

“ロシア側作戦 2週間程度遅れ” 米国防総省高官

アメリカ国防総省の高官は10日、ウクライナ東部でロシア軍とウクライナ側との間で一進一退の攻防が続いていて、ロシア側の作戦が当初の目標よりも2週間程度、遅れているとの見方を示しました。

この高官はロシア軍の部隊は東部ハルキウ州のイジュームの南側で集中的に地上作戦などを展開しているものの、地上部隊の動きは引き続き、遅いと指摘しました。

そのうえで、ウクライナ側との間で砲撃の応酬が続くなど一進一退の攻防が続いていて、ロシア側の作戦が当初の目標よりも2週間程度、遅れているとの見方を示しました。

そしてロシア側とウクライナ側がともに東部地域に精通し、お互いに長距離からの攻撃を仕掛けていることなどから戦闘が長期化する可能性があるとの認識を重ねて示しました。

一方、この高官はマリウポリを含む東部地域でミサイル攻撃が続けられ、南部のオデーサに対しては散発的に行われているという認識を示しました。

そのうえで、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が先月沈没して以降、ロシア軍の艦艇はオデーサから距離をとっていると指摘し、水陸両用作戦が行われる兆候は見られないと指摘しました。

“3459人死亡 3713人けが” 国連人権高等弁務官事務所

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月9日までに、ウクライナで少なくとも3459人の市民が死亡したと発表しました。

このうち238人は子どもだとしています。

地域別でみると、東部のドネツク州とルハンシク州で1834人、キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで1625人の死亡が、それぞれ確認されているということです。

また、けがをした市民は3713人に上るとしています。

一方、国連のウクライナ人権監視団のマチルダ・ボグナー団長は10日、スイスのジュネーブで会見し、ウクライナでの市民の死者数が実際には人権高等弁務官事務所が発表している数字を数千人上回るという見方を示しました。

ボグナー団長は、とりわけ東部の要衝マリウポリで情報を集めることが難しいとしたうえで、「戦闘により何千人もの市民が犠牲になったと推測しているが、確証を得ることができず、公式の統計に追加することができない」としています。

さらに、「ロシア軍が占領していたキーウ北部のブチャやその周辺では、300人以上が違法に殺害されたという報告がある。私たちがより多くの地域を訪れることで、犠牲者の数はさらに明らかになるだろう」と述べ、今後、他の地域でもより多くの死者が確認される可能性があると指摘しました。

ドイツ外相がウクライナ訪問

ドイツのベアボック外相は9日、ドイツの閣僚としては初めて、ロシアが軍事侵攻を始めたあとのウクライナを訪れました。

ベアボック外相はまず、多くの市民が殺害されているのが見つかった首都キーウ近郊のブチャを訪れたあと、キーウでゼレンスキー大統領らと会談しました。

ベアボック外相はクレバ外相との共同記者会見の中で、市民の殺害を「ロシアによる戦争犯罪だ」と強く非難したうえで、「こうした悲惨な犯罪が戦闘が続く東部でも繰り返されないよう、ウクライナに兵器を送る」と述べ、先にウクライナへの供与を発表した自走式のりゅう弾砲について、ウクライナ軍が扱うための訓練を数日以内に始めることを明らかにしました。

そして、「ウクライナの自由と自立はわれわれの目的でともに戦う」と述べ、支援を続ける姿勢を強調し、停止していたキーウでの大使館業務を近く少人数で再開すると発表するとともに、「ロシアへのエネルギー依存を永遠にゼロにする」と述べ、エネルギーのロシア依存からの脱却を徹底的に進める考えを示しました。

ドイツはこれまでロシアの天然ガスなどに大きく依存してきましたが、最近はEU=ヨーロッパ連合の中でもロシアに厳しい姿勢を示し、ウクライナへの軍事支援も相次いで打ち出しており、ウクライナのクレバ外相は「ドイツの多くの政策転換に感謝している」と述べ、支援に期待を示しました。

中仏首脳が電話会談

中国の習近平国家主席とフランスのマクロン大統領は10日、電話で会談し、両政府によりますと、両首脳はウクライナ情勢をめぐりロシアとウクライナの話し合いによる平和的な解決を支持することで、一致したということです。

一方で、中国外務省によりますと、習主席はアメリカやNATO=北大西洋条約機構の加盟国などが、ウクライナへの軍事支援を加速させていることについて「集団的な対立は、世界にとってより大きな持続的な脅威となり、とりわけ警戒が必要だ」と述べたということです。

フランス大統領府によりますと、これに対してマクロン大統領は、ウクライナの市民がロシアの軍事侵攻によって深刻な状況に置かれているとしてウクライナを支持する姿勢を改めて示したということで、両者の立場の違いが浮き彫りになりました。

国連事務総長“モルドバに経済支援を”

国連のグテーレス事務総長はモルドバを初めて公式訪問し、10日、首都キシニョフの避難所を訪れました。

ウクライナから国外に避難した人の数は、9日の時点でおよそ591万人に上り、モルドバは国内人口の17%にあたる45万人を受け入れてきましたが、財政状況が厳しいことから、日本やアメリカが経済的に支援しています。

避難所の訪問を終えたグテーレス事務総長は「爆撃を受けて逃れた人々の話を聞いて深く心を動かされた。この悲劇は、戦争が無意味で止めなければならないことを示している」と述べました。
そのうえで「モルドバは厳しい経済危機に直面している」と述べ、モルドバへのさらなる経済支援を、国際社会に呼びかけました。

ウクライナ検察 “子ども226人が死亡”

ロシアの軍事侵攻で死傷した子どもの数について、ウクライナの検察当局は、10日の時点で少なくとも226人が死亡し、416人がけがをしたと発表しました。

死亡、またはけがをした子どもが最も多いのは東部ドネツク州で139人、次いで首都があるキーウ州で116人東部ハルキウ州で99人北部チェルニヒウ州で68人などとなっています。

また、爆撃や砲撃による被害を受けた学校などの教育施設は1657か所にのぼり、このうち132か所は完全に破壊されたということです。

ウクライナ国外避難 約591万人 国連発表

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、9日の時点でおよそ591万人にのぼっています。

主な避難先はポーランドがおよそ323万人、ルーマニアがおよそ88万人、ハンガリーがおよそ57万人、モルドバがおよそ45万人などとなっています。

また、ロシアに避難した人はおよそ73万人となっています。

農作物9000万トンが輸出できず

ウクライナのシュミハリ首相は9日、EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領とともに南部のオデーサを訪れ、ウクライナ最大の港、オデーサ港を視察しました。

現地のメディアによりますと、シュミハリ首相は、ロシアによって海上輸送が妨害されているため、アフリカやアジア、ヨーロッパ向けの農作物およそ9000万トンが輸出できなくなっていると明らかにしたということです。

これに伴う損失は、1日当たり1億7000万ドル、日本円でおよそ221億円にのぼるとしています。

シュミハリ首相は、ウクライナの貨物船を中心におよそ70隻が、ロシア軍の攻撃をおそれ港にとどまっていると指摘しました。

そのうえで、「ロシアのせいで小麦やトウモロコシなどの国際価格が高騰している。ロシアが引き起こす世界的な食糧危機を何としても防がなければならない」と非難したということです。

ウクライナは小麦やトウモロコシなどの世界有数の輸出国で、国連のWFP=世界食糧計画は6日、緊急声明を出し、「世界的な食糧危機を引き起こさないために、ウクライナの港の再開を求める」と危機感を示しています。

ウクライナ南部 ロシア軍占拠の島めぐり攻防

ウクライナの南の黒海では、ロシア軍が占拠している島をめぐる攻防が激しさを増しています。

ウクライナ南部オデーサ州の沖合30キロ余りに浮かぶズミイヌイ島は、大きさがおよそ400メートル四方で、ことし2月に軍事侵攻が始まった直後、ロシア軍に占拠され、防空ミサイルシステムなどの兵器が持ち込まれました。

今月8日に撮影された衛星写真では、島内の2か所で煙がのぼり、ロシアの軍事侵攻のシンボルとなっている「Z」の文字も見えます。

ウクライナ軍は、ズミイヌイ島の上空でロシア軍のヘリコプターを攻撃した時の映像を、8日SNSで公開しました。

映像では、空中で静止していたヘリコプターが突然、爆発し、周囲が煙に包まれる様子が確認できます。

ウクライナ軍は「われわれは止まらない。どんな小さな島であろうと、われわれの領土から敵を追い出す」と投稿しました。

ズミイヌイ島をめぐってウクライナ国防省は、島の近くでロシア軍の揚陸艇1隻を破壊したほか、島にあった防空ミサイルシステム2基を無人機で攻撃したと7日、ツイッターで明らかにしています。

一方、ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は9日「ウクライナ軍は、アメリカやイギリスと協力して島を占領するための大規模な挑発行為を計画した。しかし島にいるロシア軍によって阻止され、大きな損失をこうむった」と反論しました。

ロシア軍は、東部とともに南部に対しても攻撃を強めていて、ウクライナで3番目に人口が多く国内最大の港を持つ南部の中心都市オデーサの攻略に向けて、ズミイヌイ島を、重要な拠点と位置づけているものとみられます。