ロシア軍 「戦勝記念日」のあとも東部2州の完全掌握目指し攻勢

ロシア軍は、9日の戦勝記念日が過ぎたあとも、ウクライナの東部2州の完全掌握を目指して攻勢を強めているほか、南部の港湾都市にも攻撃をくわえました。
これに対してアメリカは、ウクライナに、より迅速に軍事物資を提供するための法律を成立させるなど、軍事支援を加速させています。

ロシアのプーチン大統領は9日、戦勝記念日の演説でウクライナへの軍事侵攻を重ねて正当化した一方、一部で指摘されていた「戦争状態」の宣言や、国民の大量動員には言及せず、軍事侵攻の具体的な成果にも触れませんでした。

イギリス国防省は10日の分析で、ロシアがウクライナの抵抗を過小評価し、最小限の犠牲で性急に勝利を達成しようとしたことなどが、作戦の失敗につながったと指摘しました。

そのうえで、「戦勝記念日にあわせたプーチン大統領による重要な軍事的な成果の発表は阻止された」と指摘しています。

一方、ロシア国防省は10日、東部ドネツク州や南部オデーサ州などでウクライナ軍の無人機を撃墜したほか、ロシア軍の支援を受けた親ロシア派の武装勢力が東部ルハンシク州の町、ポパスナを掌握したと発表しました。

これによって、支配地域がルハンシク州の「行政上の境界線」まで拡大したと主張しています。

戦闘が激しさを増す中、南部の港湾都市オデーサでは9日、ロシア軍によるミサイル攻撃があり、現地の公共放送は1人が死亡、5人がけがをしたと伝えました。

オデーサには、EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領とウクライナのシュミハリ首相が会談のため滞在していて、シュミハリ首相は「ミサイル攻撃で会談が中断され、一緒に防空ごうに避難した」とツイッターに投稿しました。

またウクライナのゼレンスキー大統領も、新たに公開した動画で「これがロシアのヨーロッパに対する本音だ」と非難しました。

東部マリウポリの製鉄所を拠点にロシア軍と戦闘を続ける「アゾフ大隊」の司令官マキシム・ゾリン氏は、NHKのインタビューに対し「ロシア軍は歩兵などを使って突入しようとした」と述べ、9日にも激しい攻撃を受けたことを明らかにしています。

米 軍事物資のより迅速な貸与可能にする法律成立

これに対しアメリカでは9日、ウクライナに軍事物資を、より迅速に貸与することを可能にする「レンドリース法=武器貸与法」が成立しました。

署名したバイデン大統領は「ウクライナの人々が、プーチン大統領による残虐な戦争から民主主義を守るための、重要な手段を提供することになる。いまが極めて重要なときだ」と述べ、ウクライナへの支援を重視する考えを示しました。

9日には、アメリカ国防総省の高官が、ウクライナに供与したりゅう弾砲のほとんどが到着したことを明らかにしており、ロシアの攻勢が強まる中、欧米はウクライナへの軍事支援を加速させています。