フィリピン大統領選 マルコス氏が当選確実 地元メディア伝える

9日に投票が行われたフィリピンの大統領選挙で、地元のメディアは、選挙監視機関の集計などに基づき、かつて独裁政権を敷いた故マルコス元大統領の長男、フェルディナンド・マルコス氏の当選が確実になったと伝えました。
マルコス氏は、インフラ整備や麻薬犯罪の取締りなど、ドゥテルテ政権の政策を引き継ぐとしています。

フィリピンの大統領選挙は、日本時間の9日午後8時に投票が締め切られ、開票作業が進められています。

フィリピンの選挙管理委員会が公認する選挙監視機関の集計によりますと、現地時間の午前2時半すぎの時点で
▽故マルコス元大統領の長男で元上院議員のフェルディナンド・マルコス氏(64)が2931万9865票
▽現職の副大統領レニー・ロブレド氏(57)が1398万6496票などとなっていて、こうしたデータを基にフィリピンの地元のメディアは、マルコス氏の当選が確実になったと伝えました。

マルコス氏は北イロコス州出身の64歳。

かつて独裁政権を敷いた故マルコス元大統領の長男で、地元の州知事を務めたあと2010年から上院議員を1期6年務めました。

今回の選挙戦では、SNSを駆使して父親の政権初期のインフラ開発の実績などをアピールし、みずからもコロナ禍で疲弊した経済を立て直すと訴え、独裁体制を経験していない若い世代を中心に支持を広げました。
また、インフラ開発や麻薬犯罪の取締りなど、ドゥテルテ大統領の政策を引き継ぐ姿勢を示し、副大統領選挙に立候補したドゥテルテ大統領の娘、サラ氏と一緒に選挙活動を行い、現政権の支持者を取り込むのに成功しました。

しかし、父親の独裁政権下では、多くの市民が拘束され拷問などで死亡したことから、マルコス氏が当選すれば、こうした負の歴史が塗りかえられるおそれがあると懸念する声も出ています。

選挙結果は議会の承認を経て正式に確定し、マルコス氏は来月30日に大統領に就任する見通しです。

マルコス氏 選挙戦でSNSを巧みに利用

マルコス氏が勝利した背景には、選挙戦でSNSを巧みに利用し、若い世代を中心に支持を集めたことがあります。

マルコス氏は選挙期間中、一連の討論会を欠席し、ほかの候補との政策論争や大手メディアの取材を避ける一方、フォロワー数が600万人を超えるフェイスブックなどのSNSを巧みに使ってみずからの主張を映像で発信し、有権者に直接、支持を訴えました。

こうした映像の中には、かつてフィリピンで独裁体制を敷いた、父親の故マルコス元大統領の時代をインフラ開発の「黄金時代」だったと主張するものもあります。
父親の政権初期の実績である高速道路や病院建設などのほか、完成したものの一度も稼働することなく停止した東南アジア初の原子力発電所などを紹介し「のちの政権に政策が引き継がれなかったためにフィリピンは貧しくなったのだ」と説明しています。

また、独裁体制下で行われた人権侵害や不正蓄財などについては触れず、戒厳令下で拘束されたり、拷問されたりした人たちからは「歴史を塗りかえようとしている」などと強い反発の声があがっていました。

しかし、フィリピンでは40歳未満の人が人口の7割を占めていて、独裁体制を経験していない若い世代が増える中、マルコス氏の主張が広く受け入れられました。

さらにSNSへの投稿では、政治の話題にとどまらず、家族とのほほえましい団らんや対談などプライベートも積極的に公開していて、独裁者のイメージが強い父親とは打ってかわり、親しみの持てる優しいイメージを打ち立てたことで、有権者に警戒心を抱かせず、支持を広げる一因になりました。

マルコス氏 現政権の支持者を取り込むのに成功

マルコス氏が勝利した大きな要因の1つは、ドゥテルテ政権の継承者だとアピールし、現政権の支持者を取り込むのに成功したことです。

マルコス氏は選挙戦で、インフラ整備や麻薬犯罪の取締りなど、ドゥテルテ大統領の政策を引き継ぐと訴え、副大統領選挙に立候補したドゥテルテ大統領の長女のサラ氏と一緒に選挙活動を行いました。

ドゥテルテ大統領をめぐっては、関係者の殺害もいとわない強硬な麻薬犯罪の取締りが人権侵害に当たるとして国際的に批判されていますが、フィリピン国内では、治安の改善やインフラ整備による経済成長などが評価され、ことし4月の世論調査で67%の支持を得るなど、依然として人気は衰えていません。
これに対して現職の副大統領でありながら、ドゥテルテ大統領の強権的な手法に異を唱えて鋭く対立してきたレニー・ロブレド氏は、ドゥテルテ政権に対する批判票の取り込みに力を入れました。
しかし、元プロボクサーのマニー・パッキャオ氏など、他の候補もドゥテルテ大統領への対決姿勢を打ち出したため、政権への批判票が分散する形となり、追い上げを図ることはできませんでした。