韓国 ユン大統領が就任 5年ぶりの保守政権が発足

韓国では10日、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が就任し、5年ぶりの保守政権が発足しました。
ユン大統領は、アメリカとの同盟関係を基盤として北朝鮮に対する抑止力を強化するとしているほか、冷え込んだ日本との関係改善にも意欲を示していて、検察官出身で政治経験が乏しい中、どれだけリーダーシップを発揮できるのか、その手腕が問われることになります。

ことし3月の韓国大統領選挙で当選したユン・ソンニョル氏は、10日午前0時をもって第20代大統領に就任し、ソウル中心部では大統領の交代を告げる鐘つきが行われました。

ユン大統領は、午前11時から国会前の広場で行われる就任式に臨み、およそ4万人の出席者を前に宣誓をしたあと、就任演説を行って今後の政権運営の方針を示すことになっています。

ユン大統領は、大統領府を「帝王的権力の象徴」ともされてきた青瓦台から国防省だった建物に移して執務を行うことを決めていて、午後には、就任式に出席するため韓国を訪れている、日本の林外務大臣をはじめ各国の要人と会談する予定です。

5年ぶりの保守政権を率いるユン大統領は、核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮に対し、アメリカとの同盟関係を基盤に抑止力を強化するとしています。

また、日米韓3か国の連携を重視する立場から、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題などで冷え込んだ日韓関係の改善にも意欲を示していて、検察官出身で政治経験が乏しい中、どれだけリーダーシップを発揮できるのか、その手腕が問われることになります。

ユン・ソンニョル大統領とは

ユン・ソンニョル大統領は、首都ソウル出身の61歳。

両親が大学教授という家庭で育ち、名門のソウル大学で学んだユン氏は、司法試験にたび重なる挑戦の末に合格して検察官となりました。

保守系のパク・クネ(朴槿恵)元大統領や、イ・ミョンバク(李明博)元大統領をめぐる贈収賄事件などを徹底捜査した手腕が、革新系のムン・ジェイン(文在寅)前大統領に評価され、2019年に検察トップの検事総長に抜てきされました。
するとユン氏は、ムン前大統領の側近で法相に起用されたチョ・グク氏の疑惑を追及するなどした結果、政権との対立が深まり、去年3月に検事総長を辞任しました。

政権と真っ向から対じした姿が支持されて政界入りへの待望論が高まり、去年7月、当時の保守系最大野党「国民の力」に入党し、大統領選挙の公認候補に選出されました。

ユン氏は、ムン政権を厳しく批判し「無能な政権を政権交代によって審判する。真の公正な社会をつくる」として、5年ぶりの政権交代の実現を訴え、ことし3月の大統領選挙で、当時の与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏にわずか0.73ポイントの差で勝利しました。
当選後、大統領府を「帝王的権力の象徴」ともされてきた青瓦台から国防省だった建物に移して執務を行うことを決めました。

また、外交と安全保障の司令塔となる大統領府の国家安保室長には「アメリカ通」として知られる大学教授を起用するなど、アメリカとの同盟関係を強化する姿勢を鮮明にしていて、今月21日にはソウルで、バイデン大統領と初めての首脳会談を行う予定です。
さらにユン氏は、日米韓3か国の連携を重視する立場から、冷え込んだ日本との関係の改善にも意欲を見せていて、先月には、アメリカに続いて日本に派遣した代表団を通じて、岸田総理大臣にみずからの親書を手渡しました。

北朝鮮 ユン大統領を名指しで非難

北朝鮮は、韓国で5年ぶりの保守政権を率いるユン・ソンニョル大統領について9日、韓国との窓口機関である祖国平和統一委員会が運営するウェブサイトで「倒れゆく経済に見向きもせず『超豪華な就任式』の準備に狂奔している」などと名指しで非難しました。

これに先立って、先月には、ユン大統領が就任を前に、日本やアメリカへ代表団を派遣したことについても「朝鮮半島の平和を完全に台なしにして、民族に災難だけをもたらす逆賊にほかならない」と指摘し、米韓同盟や日米韓3か国の連携を重視する新政権をけん制していました。
このほか、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の妹のキム・ヨジョン(金与正)氏は、先月の談話で、ユン大統領が、北朝鮮からの攻撃が差し迫った場合に備えて先制攻撃を含む抑止力を強化する考えを鮮明にしていることも念頭に「南が軍事的対決を選択する状況が来るならば、われわれの核戦闘武力は任務を遂行しなければならなくなる」として、状況によっては核兵器の使用も辞さない構えを示しています。

北朝鮮は、前の保守政権を率いたパク・クネ元大統領の就任式のおよそ2週間前に3回目の核実験を強行し、政権発足のおよそ1か月後には、ニョンビョン(寧辺)の原子炉の再稼働を表明した経緯があります。

今回も、同じ保守系のユン政権の発足を前にして、今月7日に日本海で、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルと推定される短距離弾道ミサイルを発射したほか、北東部の核実験場で新たな動きが確認されています。

キム総書記は、先月の軍事パレードでの演説で「核武力を最大限の速度で、さらに強化するための措置を取っていく」と強調していて、今月21日にユン大統領とアメリカのバイデン大統領の初めての首脳会談を控える中、関係国は、北朝鮮によるさらなる弾道ミサイルの発射や7回目の核実験への警戒を続けています。

新政権の日本に対する姿勢は

新政権の日本に対する姿勢について、先月、日本に派遣された代表団のメンバーで、次期駐日大使の候補として有力視されているユン・ドンミン(尹徳敏)元国立外交院長に聞きました。
この中でユン氏は、日本への代表団の派遣について「日韓関係がこれ以上、放置されてはならず、関係を改善すべきだという新大統領の強い意思を日本側に伝えることが目的だった」と説明しました。

そして、太平洋戦争中の「徴用」や慰安婦をめぐる問題について、代表団は具体的な協議をしていないとしたうえで「韓国だけでなく、日本も一緒に協力しながら解決方法をつくり上げてこそ、この問題は解決できる」と述べ、問題の解決には両国の外交努力が欠かせないという考えを強調しました。

また、新大統領が、日韓両国の首脳が相互に相手国を訪問する「シャトル外交」を再開させる意向を明らかにしていることについては「両国を正常で緊密な関係にするための枠組みだ。日韓交流を促す出発点になるほか、さまざまな懸案を協議して対応するきっかけにもなる」と述べました。

さらにユン氏は、北朝鮮が韓国と日本を攻撃できる新たな戦術核兵器の開発を進めていると指摘し、日米韓3か国の連携の延長線で日韓両国が戦略的に協力していくことが必要だという考えを示しました。

おことわり

NHKは新たに就任した韓国の大統領についてこれまで韓国の国立国語院の表記に基づいてユン・ソギョル氏としてきましたが、大統領自身が希望していることなどから、10日からユン・ソンニョル大統領と表記します。