NATO元最高司令官「すでにわれわれは第3次世界大戦のさなか」

NATO・ヨーロッパ連合軍の最高司令官を務めたアメリカ空軍の退役大将、フィリップ・ブリードラブ氏がNHKのインタビューに応じ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「すでにわれわれは第3次世界大戦のさなかにある」と述べ危機感を示しました。
そして、核兵器の使用も辞さない構えを見せるプーチン大統領を抑止するには、欧米が脅しに屈せず、より強い行動をとることが必要だと強調しました。

フィリップ・ブリードラブ氏は、2013年から3年間、NATO=北大西洋条約機構・ヨーロッパ連合軍の最高司令官を務め、任期中、ウクライナから軍事力を背景にクリミアを一方的に併合したロシアとも対じしました。

NHKのインタビューに応じたブリードラブ氏は、プーチン大統領が「シリアの虐殺者」とも呼ばれるドボルニコフ司令官を軍事侵攻の指揮官に任命したと伝えられたことについて「ロシア軍の部隊がブチャから撤収したあと、世界が目の当たりにした光景は恐ろしいものだったが、プーチン氏はこの部隊を表彰した。新たな指揮官に残虐性を求めたのは明らかだ」と述べ、同じスラブ民族どうしの戦いで士気が上がらないと指摘される中、将校たちの統制を強めるねらいがあったという見方を示しました。

また、ロシア軍の次の軍事的な目標については「マリウポリを掌握したあと、南部の海岸沿いに軍を進め、オデーサの制圧をねらうだろう。マリウポリとオデーサの両方の港湾都市を制圧し、ウクライナを海から切り離し内陸に閉じ込めることで、経済的に大きな打撃を与えるつもりだ」と述べました。

そのうえで「プーチン氏は当初、首都キーウを軍事的に制圧し、ゼレンスキー大統領の殺害または追放を望んでいたが、失敗した。南部の沿岸を制圧し経済に打撃を与えることでゼレンスキー大統領を失脚させ、かいらい政権を樹立しようとしている」と述べ、ねらいはゼレンスキー政権の転覆だと分析しました。

さらに、ロシア軍が駐留するモルドバの沿ドニエストル地方で電波塔や軍の施設で爆発が起きたことについて、ロシアによる自作自演だという見方を示しました。

そして、ブリードラブ氏は「沿ドニエストル地方のロシア軍の部隊は警戒レベルを引き上げ、態勢を整えている。もしウクライナでロシアの侵攻を食い止められなければ、次はモルドバ、モルドバでも食い止められなければ、次はジョージアだ」と述べたうえで「われわれはすでに第3次世界大戦のさなかにある」と述べ、ロシアが今後、モルドバやジョージアに侵攻するおそれがあると強い危機感を示しました。

また、プーチン大統領が核兵器の使用も辞さない構えを見せていることについて「われわれは真剣に受け止めなければならない。通常兵器が使われている戦場で、ロシアが核兵器を使うことは起こりうる」と述べ、警鐘を鳴らしました。

そして、プーチン大統領は何年も前から核兵器の使用に言及し、脅すことで欧米の行動を抑止しようとしてきたと指摘したうえで「欧米諸国は今、ウクライナでの行動をほぼ完全に抑え込まれてしまっている。われわれが『ウクライナに入って戦わない』とか『これもしない、あれもしない』と言っているのはすべて、プーチン氏による核兵器の使用を恐れているからだ」と述べました。

そのうえで「相手に主導権を握られ、その対応に追われるのではなく、自分たちが主導権を握り、相手に対応を強いるべきだ。懸念すべきことは第3次世界大戦ではなく、犯罪的な指導者が率いる『ならず者国家』をいかに阻止するのかということだ」と述べ、欧米が脅しに屈せず、より強い行動をとるべきだと強調しました。