ウクライナ 軍事侵攻で小麦の輸出困難に 農家の懸念深まる

世界有数の小麦の産地であるウクライナでは、ロシアによる軍事侵攻で農地が荒らされたり、黒海沿岸の港が封鎖されたりして小麦の輸出が困難となり、農家からは一刻も早い事態の打開を求める声が上がっています。

ウクライナは世界有数の小麦の産地で、FAO=国連食糧農業機関によりますと世界第5位の輸出量ですが、ロシアによる軍事侵攻で東部や南部を中心に農地が荒らされたり、黒海沿岸にある貿易の拠点、オデーサの港が封鎖されたりして輸出が困難になっています。

こうした事態に首都キーウ近郊の農地で小麦やトウモロコシなどの穀物を中心に生産を行っている農家のバシル・ソローカさんも懸念を深めています。

ソローカさんは、およそ130ヘクタールの土地で小麦を栽培し、去年の秋にまいた小麦が20センチほどの背丈に成長しています。

しかし、ことし2月にロシアによる軍事侵攻が始まると、夜間外出禁止令が出て農作業やトラクターの点検などに充てる時間が減ったほか、直接の被害はなかったもののミサイルによる攻撃の音が頻繁に聞こえ、不安な毎日が続いたといいます。
ソローカさんは「侵攻が始まった日には航空機が飛んできて爆弾を落とす音も聞こえた。3日目には自宅の近くにヘリコプターが飛んできて、妻がとても怖がっていた。毎日、戦争が続いているので大変だ」と話しました。
また、ソローカさんがもっとも懸念しているのは、去年収穫を終えた小麦の多くが出荷できないまま倉庫に保管されていることです。
このままだと、ことし収穫する小麦を保管する場所も確保できず、小麦が売れないと収入もなくなるため、農業そのものを続けていくことが難しくなるといいます。

ソローカさんは「戦争のせいだ。ロシアの軍事侵攻で港が封鎖されているからだ。おなかをすかせた人たちがたくさんいるのに売ることができないでいる」と指摘し、一刻も早い事態の打開を訴えました。

一方、ソローカさんは、激しい戦闘が続く東部や南部では農家が置かれた状況はさらに深刻だとして「彼らの将来がどうなるかわからない。何も作付けできなければ、どうやって生きていくのか。彼らを支えるために小麦を送りたい」と話していました。

ウクライナの小麦の輸出に関連してFAOは6日、港が封鎖されたりインフラが破壊されたりしたことでおよそ2500万トンの穀物が輸出できなくなっていると明らかにしました。
また、国連のWFP=世界食糧計画も6日、「世界的な食糧危機を引き起こさないためにウクライナ南部の港の再開を求める」とする緊急声明を出すなど、国際機関も問題の深刻さを指摘しています。