ロシア “ウクライナ軍に抵抗した高齢女性”愛国の象徴に利用

ロシアのプーチン政権は、今月9日の「戦勝記念日」に向けて愛国心の高まりを演出しようと、ウクライナ軍に抵抗したとする高齢女性の逸話を政権をあげて拡散するなどプロパガンダに利用しています。

ロシアでは先月、ウクライナの村で、旧ソビエトの国旗を手にした高齢女性がウクライナ軍とみられる兵士に近づき、国旗を踏みつけられたことに抗議しているとする動画が、SNS上で拡散しました。

国営テレビは、「ロシアによる解放を待っていた女性がウクライナ軍に勇気を示した」などと伝えましたが、女性の名前や女性が住む村など詳しいことには触れていません。

また、先月11日には、ロシアのポリャンスキー国連次席大使が国連安全保障理事会の会合で取り上げ、「彼女の偉業と勇気は多くの人に感動を与えた。われわれにとって大切な戦勝記念日には、その旗が踏みつけられるようなおそれもなくなり、ウクライナをナチスから解放したわれわれの思い出をたたえられるようになるだろう」と主張しました。

さらに、ロシア軍が掌握したと主張する東部の要衝マリウポリでは女性の像まで建てられ、今月4日に現地を訪問したプーチン大統領の側近の1人、大統領府のキリエンコ第1副長官は、「この記念碑が意味するのは、われわれが必ず勝利するということだ」と強調しました。

国営のロシアテレビは、ウクライナ南東部のベルジャンシクで、この女性を描いたとする壁画を紹介するなど、政権側は、この女性を、9日の「戦勝記念日」を前に侵攻の正当性を主張したり愛国心の高まりを演出したりするプロパガンダに利用しています。

これに対してウクライナのメディアは、ウクライナ当局や軍の話として、実際には自宅を砲撃された女性がロシア軍に攻撃をやめてほしいと訴えたものだと伝え、ロシア側の主張を否定しています。