中日 大野雄大 9回完全投球も延長10回に… 西口「僕と一緒」

プロ野球・中日は、6日夜、本拠地で阪神と対戦し、エースの大野雄大投手が9回まで1人のランナーも出さない完璧な投球を見せましたが、味方の援護がなく延長10回にヒットを許し完全試合の大記録を逃しました。試合は延長10回中日がサヨナラ勝ちし大野投手が2勝目をあげました。

大野投手は3年前、名古屋市の本拠地の同じ阪神戦でノーヒットノーランを記録しています。

6日も力強い速球に加え、落ちる変化球を巧みに操り、阪神打線に9回まで1人のランナーを出さない完璧なピッチングを見せました。

しかし、課題の打線が阪神の先発・青柳晃洋投手を攻めきれず得点を奪えないまま試合は0対0で延長に入りました。

大野投手は10回もマウンドに上がりましたがツーアウトから阪神3番の佐藤輝明選手にツーベースヒットを打たれ、完全試合の大記録を逃しました。

それでも得点は与えず、続く10回ウラに打線がワンアウト満塁のチャンスを作り、3年目の石川※タカ弥選手がセンター前にヒットを打ちサヨナラ勝ちしました。

中日は阪神に1対0で勝利し、大野投手が10回をヒット1本に抑え完封で今シーズンの2勝目をあげました。

※「タカ」は「日」の下に「迎」のしんにょうなし

大野「1点勝負 先頭バッター切っていこうと」

10回ツーアウトまで完全投球を続けた大野雄大投手は「相手の青柳投手が、すごいピッチングをしていたので、1点勝負のゲームだなと思いながら投げました。もちろん走者を出してないことに気づいて何とか先頭バッターを切っていこうという気持ちでした。本当にみんなよく守ってくれたと思いますし、ありがたかったです」と試合を振り返りました。

その上で10回も続投してマウンドに上がったことについては「9回を投げ終わった時に監督に『代わるか』といわれたんですけど、柳投手だったら絶対投げるだろうと思ったんで『僕も投げます』と言いました」と話しました。

その上で「これからどんどん勝っていって、チームをどんどん上位に上げていけるように、最後まで投げ切れる試合を1つでも増やしたい」とさらなる活躍を誓いました。

阪神 唯一のヒット 佐藤「速い球に合わせていった」

阪神の矢野監督は中日の大野雄大投手から延長10回の途中まで1人のランナーも出せなかったことについて「左バッターのアウトコースにいいボールが来ていて、ストレートも高さがよかった。右バッターにもしっかりとした高さに投げることができていたし、甘いボールもあったが、打ち損じてしまった」と振り返りました。

そのうえで「今夜の敗戦はベンチと打線の責任です」と話していました。

また、30人目の打者として迎えた10回に唯一のヒットとなるツーベースを打った佐藤輝明選手は「大野投手は、コントロールがよかった。10回は、速い球に合わせていった。いいピッチャーなので、しっかりコンパクトにとコーチから言われていた」と話していました。

9回無失点と好投しながら10回に1点を奪われ、負け投手となった青柳晃洋投手は、「大野投手がすばらしいピッチングをしていたので、それに乗せられていいピッチングができた。回を増すごとに大野さんを見ていたら、1点が負けにつながると思い、緊張感があった。最後はサヨナラ負けとなり、そこだけは情けない」と話していました。

西武 西口ファーム監督「僕と一緒ですね」

中日の大野雄大投手について、自身も平成17年に9回を完璧に抑えながら延長10回にヒットを打たれて完全試合を逃した経験を持つ西武の西口文也ファーム監督は「僕と一緒ですね。自分の時も0対0で延長に突入しましたが、記録よりも点を与えないことに集中していました。とにかく勝ちたかったので、10回表に1本打たれた後の方がさらにギアが入った、と記憶しています。大野投手も同じ気持ちだったんじゃないですかね」と球団を通してコメントしました。

ファン「ヒットを打たれた瞬間 あーっとため息」

完全試合に迫った大野投手の投球について球場で観戦していたファンからは投球をたたえるとともにねぎらいのことばが聞かれました。

名古屋市の34歳の男性は「10回にヒットは打たれましたが相手に点が入らなくてよかったです。大野投手は素晴らしい投球をしていたのでもうちょっと打線に頑張ってほしかったです。完全試合は達成できませんでしたが僕は大野投手と同じ年なのでこのようなピッチングを見れて励みになります」と話していました。

三重県四日市市の53歳の男性は「完全試合が達成できず残念でしたけどよく頑張ったと思います。もう少し打線がつながっていればよかったんですが、幻の完全試合でした」と話していました。

愛知県一宮市から来たという中学1年生の男子生徒は「あと一歩で完全試合だったと思うとすごいです。ヒットを打たれた瞬間、ドームの中はあーっとため息が出ていました。なかなかこういう試合は経験がないので、見ることができてうれしいです」と話していました。

大野雄大 チームへの純粋な思い

完全試合という偉業を惜しくも逃した大野雄大投手。

それでも1安打完封という完璧なピッチングを見せ負ければ勝率が5割を切る試合でチームに貴重な白星をもたらした。

この3年間、打線の援護がなく、勝ちがつかない試合は幾度もあった。

そんな時も大野投手は決して感情をあらわにすることなく「チームが勝つことが大事。自分たちが打線に助けられることもある」と冷静に語ってきた。

この試合、10回ツーアウトまで29人を完璧に抑える投球を続けながら、ツーベースで大記録の夢は絶たれた。

並のピッチャーなら気持ちがプツンと切れて失点につながってもおかしくない場面だが、大野投手は「自分は大丈夫だ」といわんばかりに冷静に両手をあげてチームメートに落ち着くように促した。

そこにあったのは「勝つことが最も大事」というチームへの純粋な思いだ。

その証拠にヒーローインタビューで出てきたのは「チームが勝てたから」という言葉だった。

思いの源はドラフト指名を受けた2010年にまでさかのぼる。

当時、大野投手はケガをかかえていたが、中日からドラフト1位で指名を受けた。

その時のことを多くは語らないが大野投手がどれだけ恩義を感じているのかは2020年にフリーエージェント権を取得した際、権利を行使せずに残留を決めたことでもよく分かる。

昨シーズンは3年ぶりに負け越したエースは、今シーズンからキャプテンに就任しキャンプから率先してチームをひっぱてきた。

ここまで6試合で2勝3敗とまだ納得のいく数字ではないかもしれないが、求めるのは自分の数字ではなく、このチームが勝つことだ。

大記録を逃しても涼しくそのあとを抑え、ヒーローインタビューでは自分の記録よりもチームの勝ちを喜んだ大野投手は最後にこう締めくくった。

「勝ち星を伸ばしていってチームをどんどん上位に上げていけるよう、これからも腕を振って最後まで投げきれる試合を1つでも増やせるようにやっていきます」。

エースの言葉はいつもチームに向けられる。

改めてそう思わされた完全試合を逃した夜だった。