マリウポリ市民避難進まず ロシア軍9日までの掌握ねらいか

ウクライナ東部のマリウポリに取り残された市民の避難をめぐって、ウクライナ側は、ロシア軍の激しい攻撃によって、避難は思うように進んでいないと訴えました。
ウクライナ大統領府のアレストビッチ顧問は、ロシア軍のねらいについて、今月9日の「戦勝記念日」までにマリウポリを完全に掌握しようとしているという見方を示し、プーチン政権を非難しました。

ロシア国防省は5日、空軍がウクライナ側の軍事施設45か所を攻撃したと発表し、このうち東部ではルハンシク州で指揮所や武器庫を破壊するなど、攻勢を強めています。

東部の要衝マリウポリでは、ロシア軍が包囲するアゾフスターリ製鉄所に今も数百人の市民が取り残されていると見られ、ロシア国防省は5日から7日までの3日間、一時的に戦闘を停止し、市民が避難するための「人道回廊」を設置すると発表しました。

これに対してウクライナの「アゾフ大隊」の副司令官は5日「ロシアが停戦の約束を守らず、市民に避難の機会を与えていない」と述べ、激しい攻撃によって、避難は思うように進んでいないと訴えています。

こうした中、5日にはウクライナ情勢をめぐる国連の安全保障理事会の会合が開かれ、グテーレス事務総長は、アゾフスターリ製鉄所やその周辺の地域から、これまで2回にわたり、合わせておよそ500人を避難させたと説明しました。
そして「成功するまで詳しい内容は話せないが、避難に向けた3回目の活動が進行中だ」と明らかにしたうえで「地獄のような光景から人々を救い出すため、できるかぎりのことをやり続けなければならない」と述べ、今後も国連として市民の避難の実現に向け積極的に関与する考えを強調しました。

東部の戦況について、ウクライナ大統領府の顧問を務めるアレストビッチ氏は5日、メディアのインタビューに応じ「ロシア軍は、プーチン大統領に“勝利”を提示するため、今月9日までにマリウポリのアゾフスターリ製鉄所を掌握しようとしている」という見方を示しました。

そのうえで「製鉄所の敷地内での戦闘が3日連続で行われていることからも、彼らの必死さがわかる」と述べました。

アレストビッチ氏は、ロシア軍が、プーチン大統領を満足させようと、戦果を急いでいると非難しており、第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利した、今月9日の「戦勝記念日」が近づく中、マリウポリで、ロシア軍の攻勢が一層、強まることが懸念されます。

ゼレンスキー大統領「製鉄所にまだ女性や大勢の子ども」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、5日、新たに動画を公開し、東部のマリウポリで、国連やICRC=赤十字国際委員会の支援を受けて、5日も市民の救出活動が行われたことを明らかにしました。

そのうえで、ゼレンスキー大統領は「今週、アゾフスターリ製鉄所から150人以上、マリウポリやその周辺から300人以上が人道回廊によって避難し、医療や財政的な援助など必要な支援を受けている」と述べました。

一方で「今も、ロシア軍はアゾフスターリ製鉄所への攻撃をやめていないが、まだ女性や大勢の子どもが残っており、助け出す必要がある。この地獄を想像してほしい。2か月以上も砲撃や爆撃、すぐそばで人々が亡くなる状況が続いている」と述べて、救出を急ぐ必要があると訴えました。