ロシア 核弾頭搭載できるミサイルの模擬訓練公表 欧米をけん制

ロシア軍は、今月9日の戦勝記念日が迫る中、ウクライナ東部で支配地域の拡大に向けて攻勢を強めています。さらにヨーロッパに近い地域で核弾頭を搭載できるミサイルの模擬訓練を行ったことを明らかにするなど、ウクライナへの軍事支援を続ける欧米側を強くけん制しています。

ロシア国防省は5日、空軍がミサイルを発射し、ウクライナ南部ミコライウにある大型の弾薬庫や、東部ドネツク州のクラマトルスク近くの軍用飛行場で倉庫などを破壊したと発表しました。

東部ハルキウ州やドネツク州、ルハンシク州、南部ヘルソン州などでも、ウクライナ軍の無人機14機を撃墜したとしたほか、砲兵部隊がウクライナ側の部隊を攻撃して600人以上を殺害したと主張し、攻勢を強めています。

また東部の要衝マリウポリには、ロシア軍が包囲するアゾフスターリ製鉄所に今も数百人の市民が取り残されているとみられますが、ウクライナの「アゾフ大隊」の司令官は4日、「敵が製鉄所の敷地内に侵入してすでに2日目に入り、激しい、血みどろの戦闘が行われている」と説明しました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、ビデオメッセージで、製鉄所などに残されている女性や子どもたちの救出に向け交渉を続けているとしています。
これについてロシア国防省は、5日から7日までの3日間、現地時間の午前8時から午後6時まで、一時的に戦闘を停止し、製鉄所から市民の避難に向けた「人道回廊」を設置すると発表しました。

ただ、市民の避難は、これまでも戦闘行為によってたびたび中断されていて、実現できるかは予断を許さない状況です。
一方、ロシア国防省は4日、ポーランドやバルト3国のリトアニアと接する飛び地のカリーニングラードで、ロシア軍のバルト艦隊の部隊が短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の模擬発射訓練を行ったと明らかにしました。

イスカンデルは核弾頭が搭載でき、ロシアは、EU=ヨーロッパ連合に隣接する地域で訓練の実施を公表することで、ウクライナ軍への軍事支援を続ける欧米側を強くけん制しています。

また、ウクライナの北側と国境を接し、ロシアと同盟関係にあるベラルーシの国防省は4日、軍事演習を始めたことを明らかにしていますが、これについて、イギリス国防省は5日「ロシアとしては、ウクライナに対する脅威を増やすことにより、ウクライナ軍の部隊を北部にとどまらせ、東部ドンバス地域の戦闘に投入できないようにしている可能性がある」と分析しています。

第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利した今月9日の戦勝記念日が迫る中、ロシアは、ウクライナ東部での支配地域の拡大などできるかぎりの戦果を得るため、同盟国とも連携しながら、さらに攻勢を強めるものとみられます。