東部マリウポリ 市民約100人避難もロシア軍が攻撃再開か

ウクライナでは、ロシア軍が包囲する東部マリウポリの製鉄所からおよそ100人の市民が避難し、南東部の別の都市に到着しました。
しかし、ウクライナ側はロシア軍が攻撃を再開したと主張していて、このあと残された市民の避難が順調に進むのか予断を許さない状況です。

ロシア国防省は2日、ウクライナ国内の36か所の軍事施設をミサイルで攻撃し、東部ドニプロペトロウシク州でウクライナ軍の地対空ミサイルシステムや武器・弾薬庫を破壊したほか、東部ハルキウ州やドネツク州、さらに黒海のズミイヌイ島で無人機を撃墜したと発表しました。

ロシア軍は東部2州の完全掌握に向け攻勢を強めていますが、ウクライナ軍の激しい抵抗を受けているものとみられ、旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを記念する今月9日の「戦勝記念日」までにロシア側が目的を達成するのは難しいものとみられています。

こうした中、ロシア軍に包囲された東部マリウポリの製鉄所にとどまっているとされる市民数百人のうち、5月1日におよそ100人が製鉄所から避難し、ウクライナ軍は2日に一行が南東部のザポリージャに到着したことを明らかにしました。

製鉄所のツキティシュビリ社長はNHKのインタビューに対し「避難のための人道回廊が機能したことは、ゼレンスキー大統領や各国のリーダーなどが働きかけた成果だ」として感謝の意を示しました。

一方で「製鉄所には、爆撃で負傷し手足を失った人もいるが、ロシア側は製鉄所に救急車を向かわせることも拒否した。薬も不足しており、けが人の避難を最優先にしてほしい」と訴えました。

ゼレンスキー大統領は2日も製鉄所からの避難が行われる予定だとしていましたが、マリウポリの防衛にあたっているウクライナ軍の担当者は「最初の市民が避難し終わると、ロシア軍はあらゆる武器を使って攻撃を再開した」と主張していて、このあと残された市民の避難が順調に進むのか、予断を許さない状況です。

米国防総省高官「東部でのロシア軍の前進 わずかにとどまる」

アメリカ国防総省の高官は2日、ウクライナ東部でのロシア軍の動きについて、ハルキウ州のイジュームの東側などで前進したものの、わずかにとどまっているという見方を示しました。

そのうえでロシア軍は、指揮系統や、作戦に必要な物資の維持に依然として問題を抱えているほか、多くの部隊で士気の低下に悩まされていると分析しています。

さらに「地上での動きは非常に用心深く、率直に言って貧弱としか言いようがない例もある」と述べ、ロシア軍の部隊に戦闘での危険や犠牲を避ける傾向がみられるとしています。

一方、ロシア軍に対するウクライナ側の抵抗も続いていて第2の都市、ハルキウの周辺に展開していたロシア軍の部隊が、東におよそ40キロの地点まで押し返されたということです。

この高官は、ロシア軍がハルキウを掌握し、そこを足がかりとして東部地域への攻勢を強めたいと考えていたという見方を示し「ウクライナ側がそれを難しくした」と述べました。

さらに、軍事侵攻が始まって以降、これまでに2125発を超えるミサイルがロシア軍により発射されたと明らかにし、マリウポリなど東部では現在も空爆が続いているという認識を示しました。

このほかこの高官は、ロシア軍の制服組トップのゲラシモフ参謀総長が先週、数日間にわたってウクライナ東部を訪れたのを確認したと明らかにしました。

高官は、ゲラシモフ参謀総長がすでにロシアに戻っているとしたうえで「ウクライナ東部で何が起こっているのか、自分自身で確認するための訪問だった可能性がある」と述べました。