【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(5月3日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる5月3日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア国防省 “マリウポリで攻撃再開”

ロシア軍が包囲するウクライナ東部マリウポリにあるアゾフスターリ製鉄所について、ロシア国防省は3日、ウクライナの「アゾフ大隊」が攻撃を仕掛けてきたことから、これに応戦するため攻撃を再開したと発表しました。

ウクライナ側は、3日も、製鉄所の中にとどまっている市民の避難が計画されているものの、ロシア軍が攻撃を再開したため、避難が困難になっているとしていました。

ウクライナ キーウ市長 “首都いまも優先的な攻撃目標”

ウクライナの首都キーウのクリチコ市長は3日、NHKの単独インタビューに応じ「ウクライナ軍がロシア軍を首都周辺から撃退したものの、ロシア軍はウクライナ東部だけでなく、いまもキーウを優先的な攻撃目標にしている」と述べ、ロシア軍による攻撃の脅威が続いているという認識を示しました。

キーウでは、ロシア軍が先月上旬、キーウ近郊から撤退したあとも、先月28日には中心部の住宅街にミサイルが着弾するなどロシアからの攻撃が続いています。

その上で「市民の安全を確保することが最優先の課題になっている。ミサイル攻撃に備えて地下の避難設備などの整備を進めている」と述べ、市民の安全確保に全力を尽くしていると強調しました。

さらに「ウクライナが不安定化すればヨーロッパも不安定化し、大きな戦争になりかねない。この戦争は、あらゆる人に影響を及ぼしかねず、ウクライナを支援してほしい」と述べ、日本を含む国際社会に対して支援の強化を呼びかけました。

フランシスコ教皇 “プーチン大統領と対面で会談を”

ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は、3日付けのイタリアの新聞のインタビューで、戦闘の停止を直接働きかけるため、ロシアのプーチン大統領と対面で会談したいという考えを示しました。

この中で「プーチン大統領は、会うことができない、あるいは会いたくないのかもしれないが、どうすればこの残虐行為を止めることができるだろうか。まずはモスクワに行って、プーチン大統領に会わなければならない」と述べています。

また、インタビューでは、軍事侵攻が始まって20日ほどたってから、フランシスコ教皇がプーチン大統領に対し、モスクワでの会談を申し入れたものの、これまでのところ回答がないことも明らかにしました。

ウクライナ ドネツク州知事“ロシア軍の攻撃で9人死亡”

ウクライナ東部のドネツク州のキリレンコ知事は、3日、自身のSNSで、2日夜から続いたロシア軍の攻撃で、州内でこれまでに9人の死亡が確認されたと明らかにしました。

ミサイル攻撃があったオデーサの状況は

ウクライナ南部のオデーサでは、2日、ロシア軍によるミサイル攻撃があり、ゼレンスキー大統領は、14歳の少年が死亡し、17歳の少女がけがをしたと明らかにしています。

オデーサで2日に撮影された映像では、攻撃を受けたとみられる建物の外壁が大きく崩れている様子や、窓ガラスが割れている様子が映っています。また建物からは炎がのぼっていて、消防が放水をして消火にあたっている姿なども確認できます。

この建物の住民は「爆発したとき、壁が崩壊し、停電になった。いたるところがほこりや煙まみれで、息が苦しかった」と当時の状況を話していました。

ドイツ経済・気候保護相 ロシアからの石油禁輸「反対しない」

ベルギーで2日開かれたEU=ヨーロッパ連合のエネルギー相会議に参加したドイツのハーベック経済・気候保護相は記者団に対し、EUが新たな制裁として検討している、ロシアからの石油の輸入禁止について「ドイツは反対しない」と述べ、容認する姿勢を示しました。

アゾフ大隊 副司令官 “製鉄所の中に数百人がいる”

ロシア軍と抗戦を続けるウクライナの「アゾフ大隊」の副司令官は2日、ロイター通信のインタビューで、拠点としている製鉄所の中におよそ20人の子どもをはじめ、女性や高齢者を含む数百人がいると明らかにしました。

一方、副司令官は「1日から2日にかけて艦隊などからの砲撃があり、2日も一日中、飛行機が爆弾を落としている」と述べました。さらに攻撃で破壊されたがれきの下に人が残されているとして、救出するための機材が必要だと訴えました。

“ウクライナ東部 町全体で火災” 今の被害をデジタル地図に

東京大学大学院の渡邉英徳教授の研究チームは、アメリカやヨーロッパの政府機関や企業などが撮影している衛星画像などを収集して正確な位置を割り出し、今回の軍事侵攻に際し、どこで何が起きたか伝えるデジタルの地図を作り、インターネットで公開しています。

渡邉教授によりますと、人工衛星から赤外線を使って収集したデータをもとに火災の発生状況をみると、東部ルハンシク州のポパスナやルビージュネなどの都市で、ロシア軍の攻撃とみられる火災がこの1か月、相次いで起きていて、攻撃が激化している様子が確認できるということです。

また、ウクライナ第2の都市ハルキウに近い小さな集落でもほとんどの住宅で火災が起きていて、渡邉教授は「軍事目標とはいえない集落がロシア軍に無差別に攻撃されている。町全体を焼き尽くそうとしていて、人道を全く配慮していない、せん滅戦を行っている印象だ」と指摘しました。

そのうえで、渡邉教授は「特定の都市だけでなく、報道では注目されていない地域も攻撃を受け、戦場になっていることを、デジタル地図を通じて知ってほしい」と話していました。

ゼレンスキー大統領「避難の計画続いている」

ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、ビデオメッセージを公開し「私たちは、マリウポリから住民を救うためにできるかぎりのことをする。避難の計画は続いていて、あすはベルジャンシクなどからの人道回廊も計画されている」と述べ、3日にもマリウポリや周辺の地域からの避難が計画されていると説明しました。

一方、南部のオデーサで2日、ロシア軍によるミサイル攻撃があり、寮が破壊されて14歳の少年が死亡し、17歳の少女がけがをしたと明らかにしたうえで「子どもたちや寮が、ロシアにとって脅威になっているというのか」と怒りをにじませました。

米大使 “ロシアがウクライナ東部併合を計画”

OSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構を担当するアメリカのカーペンター大使は2日、国務省で会見し、親ロシア派が事実上支配しているウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州の一部の地域について「最新の報告によると、ロシアが併合を試みようとすると考えられる。5月半ばにロシアへの編入の賛否を問う住民投票を行う計画もあるということだ」と述べました。情報源などは明らかにできないとしながらも「報告は非常に信頼できるものだ」としています。

さらにカーペンター大使はロシアが掌握したと主張している南部のヘルソンでも同様の計画があると指摘したうえで「このような見せかけの住民投票は正当なものとは認められず、ウクライナの領土を併合しようとする試みにも正当性はない」と述べました。

また、カーペンター大使は、東部マリウポリやその周辺にロシア側が設置した4つの収容所があるという情報が寄せられており、南部や東部のほかの地域にも収容所が存在しているという見方を示したうえで、子どもや高齢者を含む住民が強制的に連行されている可能性があるとして、懸念を示しました。

マリウポリ アゾフスターリ製鉄所から黒煙立ち上る

ウクライナ東部のマリウポリにあるアゾフスターリ製鉄所で、2日に撮影された映像では、製鉄所から黒い煙が立ち上り、何かが爆発するような音が一帯に鳴り響いている様子が確認できます。

この前日の5月1日には、およそ100人が製鉄所から避難し、ゼレンスキー大統領は、2日も避難が行われる予定だとしていましたが、マリウポリでロシア軍と抗戦を続けている部隊の担当者は、現地テレビ局のインタビューで「製鉄所から最初の市民が避難し終わると、ロシア軍はあらゆる武器を使って攻撃を再開した」と述べていました。

米国防総省高官「ロシア軍の前進 わずかにとどまる」

アメリカ国防総省の高官は2日、ウクライナ東部でのロシア軍の動きについて、ハルキウ州のイジュームの東側などで前進したものの、わずかにとどまっているという見方を示しました。

そのうえでロシア軍は、指揮系統や、作戦に必要な物資の維持に依然として問題を抱えているほか多くの部隊で士気の低下に悩まされていると分析しています。さらに「地上での動きは非常に用心深く、率直に言って貧弱としか言いようがない例もある」と述べ、ロシア軍の部隊に戦闘での危険や犠牲を避ける傾向がみられるとしています。

一方、ロシア軍に対するウクライナ側の抵抗も続いていて第2の都市、ハルキウの周辺に展開していたロシア軍の部隊が、東におよそ40キロの地点まで押し返されたということです。

この高官は、ロシア軍がハルキウを掌握し、そこを足がかりとして東部地域への攻勢を強めたいと考えていたという見方を示し「ウクライナ側がそれを難しくした」と述べました。

さらに、軍事侵攻が始まって以降、これまでに2125発を超えるミサイルがロシア軍により発射されたと明らかにし、マリウポリなど東部では現在も空爆が続いているという認識を示しました。

このほかこの高官は、ロシア軍の制服組トップのゲラシモフ参謀総長が先週、数日間にわたってウクライナ東部を訪れたのを確認したと明らかにしました。高官は、ゲラシモフ参謀総長がすでにロシアに戻っているとしたうえで「ウクライナ東部で何が起こっているのか、自分自身で確認するための訪問だった可能性がある」と述べました。

ウクライナ外相 マリウポリからの市民の避難「すべてがぜい弱」

ウクライナのクレバ外相は2日、首都キーウで行われた記者会見で、マリウポリにあるアゾフスターリ製鉄所からの市民の避難について「国連とICRC=赤十字国際委員会による絶え間ない努力を称賛する。しかし、すべてがぜい弱で、いつ崩壊してもおかしくない」と述べ、避難が順調に進むのか、予断を許さない状況だという見方を示しました。

そのうえで「今回の避難は市民を対象としており、大けがをした兵士などウクライナを守る人たちは残されたままだ。爆撃を続けるロシア軍に彼らの命を委ねてはならない。われわれはマリウポリで1人でも多くの命を救う努力をする」と述べ、市民と合わせてけがをした兵士の避難も進めるべきだと訴えました。

英首相 3日にウクライナ議会でオンライン演説へ

ジョンソン首相は3日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって以来、首脳としては初めて、ウクライナ議会でオンラインによる演説を行い、さらなる軍事支援などを表明することにしています。

ジョンソン首相は演説の中で、電磁波をめぐる作戦「電子戦」に対応できる装備やGPSの電波を妨害するシステムなどを含む3億ポンド相当、日本円で、およそ490億円相当の軍事支援を表明するほか、ウクライナ政府から要望があった物資を運ぶための無人航空機や、市民を避難させるためなどに使われる特別仕様の車両を近く提供することも明らかにします。

またジョンソン首相は、第2次世界大戦中にイギリスがナチス・ドイツによる侵攻の脅威にさらされていた時、国民に結束を呼びかけた当時のチャーチル首相のことばを引用し「今こそが、ウクライナにとって、最も輝かしい時だ。自由であり続けようとする人々の道義的な力に対して、侵略者の暴力は何の価値もないことをウクライナは世界に示した」などと呼びかけることにしています。

ウクライナの隣国 モルドバ 市民の間に不安が広がる

モルドバの沿ドニエストル地方は、1990年にモルドバからの独立を一方的に宣言し、ロシア軍が駐留するなど、ロシアの強い影響下に置かれています。
モルドバ政府などによりますと、沿ドニエストル地方では先月、2つの電波塔が破壊されたほか、軍の施設でも爆発が起き、モルドバ政府はロシア寄りの地元当局などによる自作自演の可能性を示唆しロシアへの警戒を高めています。
モルドバ東部の町と沿ドニエストル地方の境界周辺では1日、緑色のネットで囲った戦車が配置され、ロシア軍の兵士が警戒にあたっていました。

“子どもの犠牲 少なくとも219人” 地元検察当局(2日時点)

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で犠牲になる子どもが増え続けていて、ウクライナの検察当局は、2日の時点で少なくとも219人の子どもが死亡したと発表しました。また、少なくとも405人がけがをしたとしています。

死傷した子どもが最も多いのは東部ドネツク州で139人、次いで首都があるキーウ州で115人、東部ハルキウ州で95人、北部チェルニヒウ州で68人などとなっています。
また爆撃や砲撃による被害を受けた学校などの教育施設は1570にのぼり、このうち111の施設は完全に破壊されたということです。

一方、国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まった、ことし2月24日から今月1日までに、ウクライナで少なくとも3153人の市民が死亡したと発表しました。このうち226人は子どもだとしています。

地域別でみると、東部のドネツク州とルハンシク州で1638人、キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで1515人の死亡が確認されているということです。

また、けがをした市民は3316人にのぼるとしています。

一方、国連人権高等弁務官事務所は東部のマリウポリなど激しい攻撃を受けている地域での死傷者の数については集計が遅れていたり、確認がまだ取れていなかったりして統計には含まれておらず、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るとの見方を示しています。

避難ルートの村 マリウポリの製鉄所から避難車両が次々に到着

東部 マリウポリのアゾフスターリ製鉄所から市民をザポリージャに避難させるルートにある村で撮影された映像では、赤十字のマークがついた車両に先導されて、市民を乗せたバスが次々と到着しています。
車内に座る複数の人の姿が確認できるほか、大きな荷物を持っている人もいて、乗客のなかには、子どもや高齢者の姿も見られます。

製鉄所から避難したという37歳の女性は「ロシア軍は地下シェルターの近くを激しく砲撃し続けていました。シェルターの中は酸素が十分ではありませんでしたが、新鮮な空気を吸うために外に出るのも怖かったです。生き残ることができないかもしれないと思いました」と話しています。

また44歳の女性は「地下シェルターでの避難は数日程度だと思っていて、2月24日からずっとそこにとどまることになるとは思いませんでした」と話しています。

ロシア外相「ヒトラーにもユダヤ人の血」発言にイスラエル反発

イスラエルのベネット首相は2日に声明を発表し「発言の内容は事実ではなく、その意図も正しくない。今日のいかなる戦争もホロコーストと比較することはできない。ホロコーストを政治的に利用するのは直ちにやめるべきだ」と強く反発し、イスラエル政府はイスラエルに駐在するロシア大使を呼んで謝罪を求めました。

ラブロフ外相の発言をめぐっては、ドイツ国内からも「荒唐無稽だ」などと非難する声が上がっています。

「米大統領夫人 ウクライナ隣国を訪問へ」と発表

アメリカのホワイトハウスは2日に声明を発表し、ファースト・レディーのジル・バイデン大統領夫人が今週5日から9日までの日程で、ウクライナの隣国、ルーマニアとスロバキアを訪問すると発表しました。

このうち8日の「母の日」には、スロバキアでウクライナから避難してきた家族と面会する予定だということです。ルーマニアとスロバキアは、いずれもNATO=北大西洋条約機構の加盟国で、ウクライナからの避難民も受け入れていて、ジル夫人は両国の政府関係者などとの会合にも出席するということです。

アメリカ政府としては、先月ブリンケン国務長官やオースティン国防長官を相次いでウクライナなどに派遣したのに続いて、ジル夫人も周辺国を訪問することで、ウクライナや周辺国との結束をアピールするねらいがあると見られます。