ウクライナ東部 3方向から圧力 戦闘長期化か 米国防総省高官

ウクライナの東部2州の完全掌握を目指していると見られるロシア軍について、アメリカ国防総省の高官は、3方向から圧力をかけようとしていると分析し、戦闘が長期化する可能性があるとしました。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は停戦交渉について「ロシアが完全に打ち切るリスクは非常に高い」と述べ、先行きに厳しい見方を示しました。

ウクライナ東部の戦況について、アメリカ国防総省の高官は29日、ロシア軍がハルキウ州のイジュームから南に向け徐々に前進しているものの、ウクライナ側の激しい抵抗に直面しているという分析を示しました。

そして、ロシア側が北と東と南の3方向から圧力をかけるため、要衝マリウポリに展開していた部隊を北へ移動させているのが確認できるとしたうえで、双方がともに東部の地形に精通していることや長距離の攻撃を仕掛けていることなどから、長期化する可能性があるという認識を示しました。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、東部の戦況について「ハルキウ州では厳しい状況の中、わが軍は戦術的な成功を収めることができている。ドンバス地域では、ロシア軍がインフラや住宅地への攻撃を続け、一帯からあらゆる命を消し去ろうとしている。私たちの防衛は文字どおり、命をかけた闘いとなっている」と述べました。

また、停戦交渉について、ポーランドメディアの取材に「約束したことが何度も覆されるため、信じることができない。ロシアで権限を持っているのは1人だけで、その人物と直接交渉し、合意することでしか、約束は果たされない」などと不信感をあらわにしたうえで「ロシアが完全に打ち切るリスクは非常に高い」と述べ、先行きに厳しい見方を示しました。
一方、ロシア側はラブロフ外相が中東の衛星テレビ局アルアラビヤとのインタビューで、ウクライナ側が、NATO=北大西洋条約機構への加盟を断念する代わりとなる新たな安全保障の枠組みをめぐり、先月の合意内容から要求を変えたなどとして「交渉が行き詰まっているのはウクライナ側が支離滅裂で、毎回、適当にあしらおうとしているからだ」と主張しました。

ウクライナ東部での戦闘の長期化が懸念される中、停戦交渉の行方は見通せない状況となっています。