観光船の画像公開 船体に青い文字で「KAZU1」水深約120mの海底

北海道の知床半島沖で26人が乗った観光船が遭難した事故で、通報があった「カシュニの滝」近くの海域で、海底に船体が沈んでいるのが見つかり、船体に記された文字などから、遭難した観光船と確認されました。
海上保安本部は水中カメラで撮影された船体の画像を公開しました。

今月23日、知床半島の沖合で、乗客・乗員26人を乗せた観光船「KAZU1」が遭難した事故で、周辺の海域では28日までに14人が見つかり、いずれも死亡が確認されています。

海上保安庁や関係機関が行方不明者などの捜索を続けていますが、海上保安庁によりますと、観光船から通報があった「カシュニの滝」近くの海域で、29日午前、海底に船体があるのを、海上自衛隊の掃海艇が水中カメラの映像で確認したということです。

現場は「カシュニの滝」から1キロほど沖合の、水深およそ120メートルの海底で、「KAZU1」という船名のすべての文字のほか、観光船と同じ青色の塗装があったことなどから、遭難した観光船と確認されたということです。

第1管区海上保安本部は、海上自衛隊の掃海艇「いずしま」が水中カメラを使って撮影した画像を公開しました。

船体に青い文字で「KAZU1」と書かれているのが確認できます。

観光船は船底を下にして沈んでいるということで、海上保安本部などは今後、船体の状態や船内の様子を詳しく調べることにしています。

発見場所付近の海底 水深100メートルに達し 急激に深く

海上保安庁のウェブサイト「海洋状況表示システム」では、観光船が沈んでいるのが確認された「カシュニの滝」近くの海域は沖合1キロ余りで水深は100メートルに達し、その沖合は急激に深くなっていくことがわかります。

同じ北海道のオホーツク海側でも網走湾などでは水深が100メートルに達するのは陸から10キロから15キロほど沖合ですが、知床半島の付近では水深が深くなる間隔が大幅に狭まることがわかります。

これまでに亡くなった14人全員の身元確認

斜里町によりますと、28日見つかった3人の身元が新たに分かり、これでこれまでに亡くなった14人全員の身元が確認されたということです。

町では29日、すでに安置されていた遺体のうち3人が家族に引き渡され、30日も1人の引き渡しが予定されています。

また、斜里町の北雅裕副町長は観光船が海底で見つかったことについて「船自体が見つからないと全容が分からないと思っていたので、見つかったことでさまざまな部分がこれから解明される要素になると思います。一日でも早い救出と家族の元にかえしてあげたい気持ちでいっぱいです」と話していました。

14人が見つかった場所は

28日までに知床半島周辺の広い範囲で14人が見つかっています。

観光船が沈んでいるのが見つかった「カシュニの滝」付近から、北東に14キロほど離れた知床岬周辺の海上や岩場では、事故の翌日・今月24日の日中までに10人が見つかりました。

また、同じ24日の夜、知床岬の東およそ14キロの海上で子ども1人が見つかりました。

そして、事故から6日目の28日、知床岬から南南東におよそ23キロから24キロ、現場から知床半島をはさんだ羅臼町側の海上で3人が見つかっています。

日本水難救済会 遠山常務理事「通報後 自力航行できず沈没か」

海上保安庁で、警備・救難業務に長年携わった、日本水難救済会の遠山純司常務理事は、船体が見つかったことについて「通報があった海域からあまり離れていないため、通報後には自力で航行ができずに沈没した可能性が大きいと思う。これまでに見つかった方々が通報場所から10キロ以上離れた海域で発見されていることからすると、見つかった方々は船が沈む前か、沈むタイミングで海上に逃れて漂流したと考えられる」と話しています。

今後の船体の調査や捜索については「水深120メートルは、海上保安庁の潜水士が潜れる深さを超えている。まずは水中カメラを使って、どこまで船内の状況、特に人がいるかどうかを確認できるかということになる。それに限界がある場合は、サルベージ会社による確認を検討し、それもできなければ、船体の引き揚げも検討されるのではないか」と指摘しています。

仮に引き揚げる場合の水深などの影響については「過去に水深100メートルや、600メートルから船体を引き揚げた例もある。技術的には可能だと思うが、潮の流れの速さや、海底地形が作業に及ぼす影響も考えなければならないし、船体が強化プラスチック製であるため引き揚げに耐えうる強度かどうかも考慮をしなければならない」として、一定程度の期間が必要になるという認識を示しました。

そのうえで、今後の捜査や調査に与える影響については「これまでは沈没した原因を証明する証拠が全くなかったので、船体が見つかったことで沈没した理由を明らかにするうえで1つ大きな前進だと思う。ただ、仮に船体に傷があったとしても沈没前にできたものなのか、沈没後、海底に着く衝撃などで生じたのかなど、詳しく調べる必要がある」と指摘しました。

捜索活動に参加の漁業者「全員かえしてあげたい」

海底に船体が沈んでいるのが見つかり、遭難した観光船と確認されたことについて、捜索活動に参加している地元の漁業者からは安どの声とともに、今も行方不明になっている人を気遣う声が聞かれました。

斜里町にあるウトロ漁港では、29日朝も、捜索に参加する多くの漁業者が出港し、夕方、港に戻りました。

漁業者の1人は「船が見つかりよかったです。まだ見つかっていない人がいるので見つかればいいと思います」と話していました。

また、別の漁業者は「まずはよかったです。まだ見つかっていない人がいるので、それだけが残念です」と話していました。

29日の捜索活動では28日に3人が見つかった、知床半島を挟んで反対の羅臼町側の沖合も捜索したということで「やっぱり全員かえしてあげたいので捜索を続けたいです」と話していました。

斉藤国交相「船内に乗客残されていないかの確認作業 早急に」

29日夜に開かれた国土交通省の事故対策本部会議で、斉藤国土交通大臣は現場海域で観光船の船体が見つかったことを受け「船内に乗客の方がとり残されていないかを確認するための作業を早急に進めてほしい」と述べ、まだ行方が分かっていない12人の捜索を急ぐよう指示しました。

岸田首相「捜索・救助に全力」ツイッターに投稿

現場海域で観光船の船体が見つかったことを受け、岸田総理大臣は、みずからのツイッターに「事故にあった遊覧船が発見されたとの報告を受けました。まだ行方不明の方もいらっしゃいます。海上保安庁や地元関係者の皆さんには危険を伴う大変な任務となりますが、引き続き、捜索を続けていただきたい。行方不明者の捜索・救助とご家族のサポートに全力を尽くします」と投稿しました。