米 国防総省高官「マリウポリ周辺ロシア軍部隊 徐々に前進か」

ウクライナ東部のマリウポリの周辺に展開していたロシア軍の地上部隊について、アメリカ国防総省の高官は、北西方向に移動し始めているのを確認したと明らかにしました。
この高官は、東部でロシア軍が徐々に前進しているという見方も示していて、旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利した「戦勝記念日」にあたる来月9日に向けて、東部や南部への攻勢が強まることが予想されます。

ロシアが攻勢を強めるウクライナ東部の戦況をめぐり、アメリカ国防総省の高官は28日ロシア側が掌握したと主張するマリウポリの周辺に展開していたロシア軍の部隊がこの場所を離れ、ザポリージャ州がある北西方向に移動し始めているのを確認したと明らかにしました。

移動している部隊の具体的な規模はわからないとしながらも「かなりの部隊が離れ始めている」と指摘しています。

ただ、マリウポリに対する空爆やミサイル攻撃は今も続いており、高官は「ロシアがマリウポリを掌握したとは考えていない」と強調しました。

さらに、この高官は、東部ではロシア側とウクライナ側で一進一退の状況が続いているとする一方、ロシア軍の地上部隊が「むらがありながらも、徐々に前進している」と指摘していて、旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利した「戦勝記念日」にあたる来月9日に向けて、東部や南部への攻勢が強まることが予想されます。

こうした中、国連のグテーレス事務総長は28日、ウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と会談し「ロシアによる侵略は明らかな国連憲章違反だ」と厳しく非難したうえで、マリウポリに取り残されているとみられる市民の避難に向け、国連として全力を尽くす姿勢を強調しました。

そのキーウでは28日夜、ミサイル攻撃によるとみられる爆発があり、ウクライナ当局によりますと、この爆発で10人がけがをしたということです。

国連の関係者によりますと、攻撃があったあと、安全を確認するため、グテーレス事務総長は首相府に数時間にわたって足止めされました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、28日に公開した動画で、会談が終わった直後に、5発のミサイル攻撃があったと明らかにし「ロシアが国連を侮辱していることを示しており、強い反応を示すことが必要だ」と主張しました。

また「会談では、マリウポリの市民をどう救出するかについて、多くの時間を割いた。国連の助けによって、救出作戦を整えることができるはずだ」と述べ、国連と連携して避難を実現させたいという考えを示しました。

ただ、国連の報道官は、NHKのインタビューで「国連やICRC=赤十字国際委員会それにロシア政府などによる協議は極めて複雑だ」と述べ、マリウポリでの市民の避難には多くの課題があるという認識を示しており、避難が実現するかは依然不透明な状況です。