コロナ禍長引き 企業の首都圏からの転出 転入を上回る

コロナ禍が長引く中、首都圏の企業が本社や本社機能を地方に移す動きが続いています。民間の信用調査会社がことしに入って確認できた首都圏からの転出企業は合わせて59社と、首都圏への転入企業を20社以上、上回っています。

民間の信用調査会社、帝国データバンクによりますと、ことし1月から先月までに、本社や本社機能を東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏の1都3県から地方に移したことを確認できた企業は合わせて59社でした。

これに対し、地方から首都圏に移したことを確認できた企業は合わせて35社で、首都圏では、転出企業が転入企業を24社上回る「転出超過」となりました。

こうした企業の“脱首都圏”とも言える動きは、コロナ禍が長引く中で次第にはっきりしてきたと、信用調査会社は見ています。

去年1年間、首都圏から地方に転出した企業は351社と、記録が残る1990年以降で最も多かった上、転入企業を23社上回って11年ぶりの「転出超過」となりました。

信用調査会社は、リモートワークが定着し、対面での営業スタイルも変わりつつあることなどで、必ずしも賃料の高い首都圏に本社を置かなくてもよいと考える経営者が増えているためではないかと分析しています。

増加幅 最も大きかったのは北海道

コロナ禍で続く企業の“脱首都圏”とも言える動き。

感染拡大前の2019年と去年を比較し、首都圏から移った企業が大きく増えた道府県を見ていきます。

このうち、増加幅が最も大きかったのは北海道でした。

2019年に首都圏から本社や本社機能を北海道に移した企業は7社でしたが、去年は26社増えて33社と、一気に5倍近くになりました。

調査を行った帝国データバンクは、密を避けられることに加え、豊かな自然の中で従業員の発想力を引き出したいと考える経営者が多かったのではないかと分析しています。

▽2位は大阪府で、去年、首都圏から移った企業は46社と、2019年より14社増えました。

▽3位は宮城県のプラス10社
▽4位は岡山県のプラス9社
▽5位は茨城県と兵庫県のプラス7社でした。

続いて、
▽7位は山梨県のプラス6社
▽8位は広島県と愛媛県のプラス5社
▽10位は静岡県、愛知県、岐阜県、石川県のプラス4社でした。

このうち、8位の愛媛県と、10位の石川県は、首都圏から移った企業がなかった2019年から一転して、プラスになりました。

“地方にとって 雇用が生まれるよいチャンス”

調査を行った帝国データバンクの上西伴浩情報統括部長は「首都圏の企業が転出する状況は、当面続くのではないか。地方にとっては人が流入して雇用が生まれるよいチャンスで、地元企業のビジネスに相乗効果が現れるかもしれない」と話しています。

そのうえで、企業誘致に向けた自治体の取り組みについて「まずは自分たちの地域にどんな産業があり、移転することでどんなチャンスがあるかを企業側に丁寧に説明することが大事だ。働き手の確保や通信インフラの整備などもカギになってくる」と指摘しました。