なぜ?新型コロナワクチン 期限切れ廃棄 次々と明らかに

使用されないまま有効期限を迎え、廃棄されることになった新型コロナのワクチン。
NHKの取材で、少なくとも5つの自治体でおよそ10万回分にのぼることがわかりました。

20政令指定都市と東京23区を取材

NHKは3回目の接種を進めている全国の自治体のうち、20の政令指定都市と東京23区に新型コロナワクチンの使用状況と廃棄の見通しを取材しました。

その結果、今月末までに有効期限を迎えるモデルナのワクチンのうち、使用のめどが立たず廃棄される見通しのものが、少なくとも5つの自治体で合わせて10万2290回分にのぼることがわかりました。

具体的には、すでに明らかになっている
▽大阪市のおよそ8万回分のほか
▽東京 中野区で1万3935回分、
▽目黒区でおよそ6000回分、
▽文京区で1575回分、
▽杉並区で780回分となっています。
一方、ファイザーのワクチンについては今月22日に有効期限が9か月から1年に延長され、浜松市では354回分が廃棄を免れましたが、杉並区ではすでに18回分が廃棄されていました。

廃棄の理由は…

廃棄の理由について多くの自治体は、当初の予測より接種が伸びていないことやモデルナの希望者が比較的少なかったことなどからワクチンが余ったことをあげています。
厚生労働省はワクチン1回分の金額を明らかにしておらず、今回廃棄されるワクチンの総額はわかっていません。

厚生労働省は今後、有効期限を迎えるワクチンが増える可能性があるとして「自治体は希望者に接種を呼びかけ、有効期限が迫ったワクチンから使ってもらいたい。自治体間で融通し合うこともできるので、廃棄ができるだけ減るよう有効活用をお願いしたい」としています。

3回目接種 想定よりも進まず

今月末までに有効期限を迎えるワクチンを抱える自治体は、自治体間で融通し合うなどしてきましたが、接種が当初の想定よりも進まなかったことなどで廃棄せざるをえない状態になっています。

このうち大阪市は今月25日に有効期限を迎えたモデルナのワクチン、およそ8万回分を廃棄する予定で、市はファイザーのワクチンの接種を希望する人が多かったことや、3回目接種を終えた人が対象者の半数程度にとどまっていることなどが背景にあるとしています。
松井市長は「国はすべての国民を対象にワクチンを用意しているが、打たない人がこれだけいる。ワクチンには期限もあり、期限を迎えたら廃棄せざるをえない」と話しています。
また、東京 中野区でも今月末に1万3935回分が期限を迎える見通しで、当初の想定よりも接種が進まず、都を通じてほかの自治体に打診したものの受け入れる自治体がなかったため廃棄せざるをえないとしています。

目黒区でも6000回分が期限を迎える見通しで、モデルナの接種を希望する人が少ないことなどから当初の想定よりも接種が進まなかったとしています。

管理の不備で廃棄するケースも

このほか、ワクチンを保管する集団接種の会場や医療機関で管理の不備によって廃棄するケースも相次いでいます。

このうち
▽東京 江東区では、地震による停電の影響や冷蔵庫の温度管理のミスなどで7728回分を廃棄したほか、
▽川崎市ではワクチンを保管していた冷凍庫の異常によって温度が上昇したことから6396回分を、
▽新潟市では事業者が解凍したワクチンを誤って再度、冷凍庫に保管するなどして3192回分を廃棄しました。
さらに世田谷区ではプラグの緩みによって冷蔵庫の電源が切れるなどして保存に適切な温度を上回るトラブルが相次ぎ、合わせて3645回分を廃棄しています。
世田谷区の保坂展人区長は定例の記者会見で「多くのワクチンを重ねて廃棄せざるをえない事態となっており、区としての責任を痛感し、大変重く受け止めています。申し訳ありません。原因を詳しく検証したい」と述べました。

また、ワクチンの希釈する際に割合を誤って使えなくなったり異物が混入したりしていて廃棄したケースもありました。

“密な連携”で廃棄を防ぐ 東京 墨田区

こうした中、ワクチンの廃棄を防ぐ取り組みを行っている自治体もあります。

このうち東京 墨田区は、新型コロナワクチンについて、有効期限内に使い切ることが難しい医療機関が出た場合、速やかに別の医療機関に移す態勢を整えるなど、区内での密な連携で、廃棄を出さないよう対応しています。
東京 墨田区によりますと、新型コロナワクチンについてこれまで区内では、有効期限切れで廃棄したケースは出ていないということです。

廃棄を出さないため、区では有効期限のチェックとともに、医療機関を対象にしたワクチンの説明会の場などで、期限の厳守のほか、使い切ることが難しい場合にはすぐに区に連絡をするよう呼びかけを続けています。

そして、クリニックなどから有効期限が近いワクチンが残っているという連絡が寄せられると、すぐに職員が調整を行い、接種回数が多い医療機関などへワクチンを移す取り組みを行うことなどで廃棄を防いできました。

一方、接種回数が増えるにつれ、接種を希望する人が減っていることや、5歳から11歳の小児用のワクチンは接種率も低迷が続いていることから、ワクチンの在庫の管理は難しい状況になっているということです。
墨田区保健所の岩瀬均次長は「今は臨機応変に工夫して対応している状況なので、今後はこの仕組みをよりシステム化したいと考えている。4回目接種も始まるが、皆さんの税金での接種なので、むだなくしっかりとやっていくことが行政の務めだと思っている」と話していました。