大手電力10社 6月分の電気料金は過去5年間で最高水準に

大手電力会社10社のことし6月分の電気料金は、比較できる過去5年間で最も高い水準となります。
ウクライナ情勢の緊迫化で、火力発電の燃料となるLNG=液化天然ガスなどの価格が高騰していることが主な要因で、今後も高止まりが続く見通しです。

10社のうち5社で値上がり

大手電力各社によりますと、ことし6月分の電気料金は10社のうち5社で値上がりします。

ウクライナ情勢の緊迫化を背景に、火力発電の燃料となるLNG=液化天然ガスや石炭の価格が高騰していることが主な要因で、10社の電気料金は比較できる過去5年間で最も高い水準となります。

このうち、5月分と比べて最も値上がり幅が大きいのは北海道電力で、使用量が平均的な家庭の電気料金は85円上がって、8464円となります。

また、東京電力が60円上がって8565円、中部電力が42円上がって8256円などとなっています。

電気料金は、利用者の負担が大きくなりすぎないよう、契約によっては燃料価格の上昇分を小売価格に転嫁できる上限が定められています。

これまでに北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、沖縄電力が上限に達していましたが、6月分からは東北電力もこの上限に達しました。

また、ガス料金も東邦ガス、東京ガス、大阪ガス、西部ガスの大手4社すべてで値上がりしています。

全社の値上がりは10か月連続で、燃料価格が高止まりする中、家計への負担が大きくなっています。

東京 品川区のクリーニング店は値上げ

原油価格の高騰やそれを背景とした電気料金やガス料金の値上がり。
その影響はさまざまな消費の現場に広がっています。

東京 品川区にあるクリーニング店では、アイロンやプレス機などを使うために多くの電気とガスが必要で、経営する小林史明さんは、去年の冬ごろから電気代やガス代の負担を実感しているといいます。

先月は、電気代とガス代が合わせておよそ13万円となり、去年の同じ月より3万円余り高くなりました。

ほかにも、原油価格の高騰の影響でプラスチック製のハンガーや衣類カバー、ドライクリーニングで使う溶剤などの仕入れ価格も値上がりしているということです。

さらに、この店では仕上がった衣類などを車で配達するサービスも行っていて、ガソリン代の高騰も負担になっています。

毎日、閉店後はブレーカーを落とすなどできるだけコストを抑える工夫をしていますが、それだけではまかえないとして、先月、クリーニング代の値上げに踏み切らざるをえませんでした。

値上げするのは10年ぶりで、例えばワイシャツは1枚当たり22円、ズボンは1本当たり55円、価格を引き上げたということです。

クリーニング店を経営する小林史明さんは「お客さんに負担を強いることがないよう努力してきましたがやむをえない判断です。値上がりしていないものを探すのが難しいぐらいあらゆるものの値段が上がっていて、国の対策の効果はまだ実感できませんが、頑張ってしのぐしかありません」と話していました。

東京 豊島区の銭湯は

ガス料金の高騰によって大きな影響を受けるのが、大量のお湯を沸かす必要がある銭湯です。

東京 豊島区にある銭湯では、新型コロナウイルスの感染拡大以降、感染防止の観点から客がいるか、いないかにかかわらず、少しずつお湯を足すことでお湯を入れ替える工夫を始めています。

それによって必要なお湯の量が増える中、ガス料金の値上がりが始まったということで、ことし2月のガス代は64万円余りと、去年の同じ月よりおよそ26万円高くなりました。

営業開始前にはお湯の上に保温のためのシートをかぶせるなど、できるだけの対策は行っていますが、ガス代の節約は簡単ではないといいます。

銭湯の入浴料は東京都が決めていて、それぞれの経営判断で値上げすることはできません。

また、新型コロナウイルスの影響で遠のいた客足は完全には戻っておらず、ガス料金の高騰が重くのしかかっています。

銭湯を経営する柳澤幸彦さんは「入浴料を値上げしてほしい思いはある一方で、気軽に銭湯を利用してほしいという思いもあって複雑です。これだけの高値が続くのは厳しいので、早く元の状態に戻ってほしい」と話していました。

東京 墨田区の菓子販売会社は

電気やガス料金の値上がりで、中小企業の経営にも大きな影響が出ています。

東京 墨田区にある菓子の販売会社は、原材料価格なども高騰していることから、来月以降、すべての商品を10%程度、値上げせざるをえないと考えています。

東京 墨田区にある明治43年創業の米菓の販売会社は、千葉県八千代市の工場であられやおかきなどを製造しています。

新型コロナの影響が長引き店舗での客足などが戻らず、売り上げが以前の水準まで回復しないなか、おかきを揚げたりせんべいを焼いたりするのに欠かせない電気やガスの料金は値上がりが続いています。

このうち、ガス料金はウクライナ情勢や円安の影響もあり、おととし4月時点と比べて、単価が倍以上になっているということです。

また、電気料金の請求額は、ことしに入って去年の同じ時期と比べると、製造量が大きく変わらないのに30%から60%高い状況が続いているということです。

この会社では、照明器具をこまめに消すなど節約を心がけていますが、油や調味料、包装に使うフィルムなどあらゆる原材料が高騰していることもあり、来月以降、およそ100種類ある商品のすべてで10%程度値上げせざるをえないと考えています。

「東あられ本舗」の小林正典会長は「これからどこまで電気、ガス代が上がるのか不安だし、さまざまな物の値上げで中小企業を取り巻く状況は厳しさが続くと思う。丁寧においしい商品を作って、値上げした分以上の満足を感じてもらえるよう一丸となって取り組んでいきたい」と話していました。