新型コロナ 大型連休どう過ごす?感染状況に地域差も

29日から始まる大型連休。
期間中は帰省や旅行で多くの人の行動が活発になることが予想されますが、感染拡大を防ぎながら過ごすにはどうすればいいのでしょうか。
専門家は「全国一律の行動制限ではなく地域の状況に応じて柔軟に対策を変えていく必要がある」と指摘しています。

大都市圏は減少傾向も…

厚生労働省のまとめによりますと、今月19日までの1週間の新型コロナの感染者数は前の週と比べて、
▽東京都で0.84倍、
▽大阪府で0.87倍、
▽愛知県で0.96倍など、
大都市圏を中心に減少傾向が続いています。

一方で、地方の中には、26日も鹿児島県や大分県で新たな感染者数が過去最多を更新するなど、地域差が生じています。

専門家「地域の状況に応じて柔軟に対策を」

厚生労働省の専門家会合のメンバーで国際医療福祉大学の和田耕治 教授は「オミクロン株は重症化リスクが比較的低く、去年の夏のような全国一律の行動制限ではなく地域の状況に応じて柔軟に対策を変えていく必要がある」と指摘しています。

そのうえで、都市と地方の往来が増える大型連休については「実家に帰って高齢者と会ったり冠婚葬祭などの行事に参加したりするなど先延ばしにしていたことや今しかできないことを少しでもしていただきたい。ただ、大人数での会食などのリスクが高い行動を避けたり、少しでも体調が悪い時は、延期するなどの基本的な対策は必要だ。遠方に出かけたり高齢者と会ったりする前には検査をうまく活用してほしい」と話していました。

<減少傾向>千葉の高齢者施設では対面での面会再開

減少傾向が続く地域では、学校行事や高齢者施設の面会を再開するなど行動制限を緩和し、日常生活を取り戻そうという動きが出始めています。

千葉市の特別養護老人ホーム「かなめ一倫荘」は去年8月の開所以来、面会の制限を続けてきました。
しかし、まん延防止等重点措置の解除や地域での感染が減少傾向となっていることを受け、今月1日から3回目のワクチン接種を済ませた人に限り、対面での面会を再開させました。

今月22日には早速、入所する91歳の女性の娘が面会に訪れました。
面会は入り口で検温と消毒をしてワクチンの接種歴を確認したうえで共有スペースで1回15分に限って行われました。

女性は認知症の症状がありますが、娘が直接体を触れながら「ひ孫が生まれたよ」などと近況を語りかけると、笑顔を見せながらうなずき、その様子を見て娘は目に涙を浮かべていました。
女性は2か月前に入所して以来、施設内での対面での面会は初めてだったということで、娘は「これまで電話で様子をうかがうことしかできず元気で過ごしているか心配で、しかたがありませんでしたが、直接顔を見て話すことができて安心しました」と話していました。

この施設ではことし1月に入所者と職員、合わせて19人が感染するクラスターが発生したこともあり、厳しい行動制限を続けてきました。しかし、制限による高齢者へのマイナスの影響も大きいと判断し、今月中旬には花見に出かけるなど、去年の開所以来初めて外出も行ったということです。

施設の現場責任者を務める大熊宏紀さんは「職員も電車で通勤するなどしている中、施設へのウイルスの持ち込みをゼロにすることは難しい。感染対策のために高齢者の生活をすべて制限するのではなく、少しでも両立できる方法を模索している」と話していました。

<減少傾向>千葉の中学校 対面でのグループ学習が再開

子供たちが学習機会を必要以上に失うことがないよう、千葉県内の学校で新型コロナウイルスの感染対策として行われていた学習や行事などの制限が独自に緩和されたことを受け、千葉市内の中学校では対面でのグループ学習が再開されました。

千葉県教育委員会は子どもたちが学習機会を必要以上に失うことがないよう今月15日から学習や行事などの制限を独自に緩和しました。これを受けて千葉市中央区の県立千葉中学校は、これまで自粛してきた対面でのグループ学習を再開しました。

国の学校での感染対策マニュアルでは「児童・生徒が長時間、近距離で対面形式となるグループワークは特に感染リスクが高い」とされています。
生徒たちは1グループ4人で対面でグループ学習を行い、理科の授業では互いに協力しながら顕微鏡で微生物を観察したほか、英語の授業ではゲーム形式で英会話をしていました。

1年生の女子生徒は「分からないことをみんなと話すことができて楽しいです。協力するからこそできることは多いので、グループ学習ができてうれしいです」と話していました。
茂呂崇 副校長は「子どもたちがグループで一緒に話したり、教え合ったりして、支え合う関係は大切なことで、制限緩和はプラスになっている」と話していました。
学校はこれまで自粛してきた対面での給食や県外での校外学習なども今後、再開することにしています。

<増加傾向>鹿児島の中学校では生徒が率先して感染対策

一方で、新規感染者の増加傾向が続く鹿児島県。
26日の感染者の数が974人と過去最多を更新し、その4割以上を10歳未満と10代の若者が占めていて学校での感染の広がりが懸念されています。
こうした中、全校生徒180人の鹿児島市の郡山中学校では生徒会の「保健体育安全部」の生徒たちが率先して、感染対策に取り組んでいます。

休み時間には毎日、校内放送で感染対策を呼びかけていて、放送では先週、給食時間の前に大きな声が聞こえたことをとりあげ「気の緩みは感染への近道です」と注意を促していました。

また給食のおかずなどを取りに来た生徒一人ひとりの手に消毒液を振りかける活動も毎日続けています。28日は全校生徒が市内の公園などを巡っておよそ17キロの道のりを歩く「遠行」という行事が予定されていて、生徒たちは感染者が増えて行事が中止にならないよう活動に力を入れています。

3年生で保健体育安全部の部長を務める請園大斗さんは「楽しめる行事なので、感染対策をして一人もかからないようにしたい。自分たちのことなので先生に言われる前に生徒どうしで気をつけたいし、同じ生徒どうしで言い合う方がわかりやすいと思う」と話していました。

新型コロナ対策分科会が示した「大型連休の感染対策」は…

27日に開かれた新型コロナ対策分科会では、政府がまとめた大型連休の感染対策を呼びかける文書が示されました。

この中では大型連休で多くの人の行動が活発になり接触機会が増えることが予想されるとしたうえで、感染拡大を防ぎながら社会経済活動を維持・回復するために
▽基本的な感染対策の徹底、
▽日常生活の中でも積極的に検査を受けること、
▽若い世代を含めてワクチンの3回目の接種を早めに受けることが必要だとしています。
そして、特に旅行や帰省などで移動する際の注意点として
▽かぜの症状があるなど体調不良の場合は外出や移動を控えること、
▽移動先では感染リスクの高い行動を控えること、
▽特に帰省をする場合には高齢の親族など多くの人との接触があるためワクチンの3回目接種をしていない人は、出発前に抗原検査キットなどで検査を受けることなどを呼びかけています。
このほか、
▽飲食店では大人数や大声、長時間の利用や密集・密閉・密接の「3密」を避けて換気を徹底すること、
▽家庭でも移動先から戻ったあとなどで体調不良の人がいる場合は速やかに医療機関を受診するか、検査することなどを呼びかけています。