食材輸出促進 米ロサンゼルスに日本の業者支援「連絡会」発足

日本政府が、海外への食材の輸出額を2030年までに5兆円とする目標を掲げる中、日本の輸出業者に現地の情報を提供するなどして支援する連絡会が、アメリカ ロサンゼルスで発足しました。

日本政府は、日本の農林水産物や食品の輸出額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円とする目標を掲げています。

こうした目標の達成に向けアメリカ ロサンゼルスで、JETRO=日本貿易振興機構の現地事務所や日本食の製造・流通に関わる団体などが、海外進出を目指す日本の輸出業者を支援する連絡会を発足させ、26日に記念の式典が開かれました。

この中で、農林水産省の杉中淳輸出促進審議官は「何より重要なのは、輸出先の国における支援体制の強化だ。関係者と密接に連携し、具体的な活動を早期に本格化させたい」とあいさつしました。

そして、連絡会に参加する4つの団体が日本食の普及のために連携していくとした覚書に署名し、今後は、輸出業者向けに現地のニーズや各地の規制などについてまとめたリポートを作成したり、商談会を開いたりして、新たなビジネスの開拓を後押しすることにしています。

この連絡会は、アメリカではニューヨークにも設置されるほか、来年度までに中国やタイなど8つの国や地域に設置される予定だということです。

日本の輸出 課題は

国内市場の縮小が見込まれる中、政府は農林水産物や食品の輸出に力を入れています。

去年1年間の輸出額の合計は、1兆2300億円余りに達し、長年の目標だった1兆円を初めて超えました。

さらに官民の取り組みを強化して2025年までに2兆円、2030年までに5兆円に拡大するという目標を掲げています。

しかし、目標の実現には多くの課題もあります。

▽日本の農林水産物は、ほかの国と比べて輸出割合が低く、これまで国内市場向けが主流でした。
海外の消費者が求める品質や規格、価格や量を調査し、現地に合わせて輸出することができていないケースが多いと指摘されています。
海外で求められる産品を継続的に生産・輸出できなければ現地の小売店で日本産の産品を並べてもらう棚を確保できなくなり、輸出増加は難しくなります。

▽また、国ごとに異なる農薬の規制や、工場の安全基準などの詳細な情報を生産者が入手するのも容易ではありません。

▽さらに、輸出できても産地ごとにバラバラに出荷してしまい、海外で産地どうしの競争が起きたり、同じ産品なのに異なるパッケージや値段で販売して現地の消費者を混乱させてしまったりして商機を逃すケースがあるということです。

香港に在住し、日本の農産物の輸出を手がける「世界市場」を経営する村田卓弥さんは、輸出の現状について「日本で売っているものをそのまま現地に持ってきているケースが目立つ」と話しています。

このため、現地で食べ頃になるように出荷を調整する工夫や、現地の食文化に合わせた提案が足りないと指摘しています。

また、パッケージやこん包も日本と同じ形で輸出しているため、現地に着く頃には梱包材がしけってしまい荷崩れや商品が傷んでしまうことがあると言います。

村田さんは「今のプロモーションは日本での食べ方を紹介する形になっているが、現地のニーズや調理方法に合わせて提案することができれば、現地での消費は増えるだろう。日本の商品は人気が高いので、こうした工夫を積み重ねていけば多くの需要が喚起できる」と話していました。

また、輸出の拡大をめぐっては今も残る日本からの食品の輸入規制も課題です。

福島第一原子力発電所の事故を受けて依然、14の国と地域で日本からの食品の輸入規制が行われていて、農林水産省はそれぞれの国と地域に規制の撤廃を申し入れ、できるだけ早い時期の輸出再開を目指しています。

海外にりんご輸出 青森の農家は

農林水産物の輸出を支援する政府の組織が27日、アメリカで発足したことについて、海外にりんごを輸出している青森県の農家からは、販路拡大に期待する声が聞かれました。

青森県弘前市でりんごを栽培している農家の片山寿伸さんは、生産したりんごのおよそ3分の1を海外に輸出しています。

このうち台湾向けは98%を占めています。

ただ、台湾市場はすでに飽和状態になっているうえ、南アフリカ産など価格の安い産品が入ってきて競争が激化しているといいます。

片山さんは、国内では今後、人口減少から消費の落ち込みが予想されるため、輸出に力を入れたいと考えています。

台湾以外にタイやベトナム、シンガポールなどに輸出をしたいと考えていますが、ハードルは高いと感じています。

輸出先での通関や検疫の手続きが煩雑なうえに情報の入手も大変であること、スタッフの人数も限られ、語学の壁もある中で輸出先を拡大するのは簡単ではないと考えています。

こうした中、農林水産物の輸出を支援する政府の組織が発足したことについて、片山さんは販路拡大のチャンスが広がるのではないかと期待を寄せています。

片山さんは「海外のマーケットの状況はほとんど分からないのが現状だ。今後は政府の組織を通じて、どういった国が競合することになるかなど現地のマーケットの情報を詳しく把握して輸出の拡大につなげたい」と話していました。

ノルウェーの戦略

韓国やアメリカ、ノルウェーなどは、国をあげて農林水産物の輸出を支援する専門の組織を日本をはじめ各国に置いています。

食品の輸出のための調査やプロモーションを担うほか、生産者に流通業者を紹介したり、検疫や通関の支援を行ったりしています。

このうち、ノルウェーは、日本では大使館内に拠点をおいて生産者が日本にサーモンやサバなどの水産物を輸出する環境を整えてきました。

1985年から本格的に日本向けの輸出を始め、1991年には、ノルウェー政府が水産物の輸出拡大を担う専門の組織「ノルウェー水産物審議会」を設立しました。

この拠点にはノルウェーからの責任者と日本人のスタッフが常駐し日本のPR会社と契約していて、さまざまなキャンペーンを行ったり、流通業者を訪ねて細かいニーズの聞き取りを行ったりしています。

今月24日、都内で開かれたグルメ雑誌のイベントです。

「ノルウェー水産物審議会」は人気のイタリアレストランと協力して、低温で調理したサーモンを添えたパスタと少し火を入れたしめさばの切り身を提供し、特徴的な脂のうまみを楽しめるメニューだとアピールしていました。

隣にはノルウェー産の水産物の魅力を知ってもらおうと、ゲーム好きの日本人のために作られたオリジナルのスマホゲームが楽しめるブースも設けられました。

ゲームの中では「サーモンが水揚げされてから日本に到着するまでの最短時間は?」とか「サバのおいしい時期はいつ?」などという問題も出題され、多くの人が楽しんでいました。

一方、審議会では日本の消費者の水産物に対する意識調査の結果を発信するなど輸出業者が国ごとに違うニーズに合わせた商品を提供できる体制を整えています。

こうした現地のニーズを把握する努力の結果日本で広がったのが、サーモンのすしです。

日本でもかつてはサケは寄生虫の懸念から生で食べるのには向いていないとされていました。

そこに目をつけたノルウェーの漁業省などが1986年に寄生虫の懸念のない、ノルウェー産の養殖サーモンをすしのネタとして輸出し、人気が出たというのです。

日本で「ノルウェー水産物審議会」のディレクターを務めるヨハン・クアルハイムさんは「消費者や市場の動向を理解する市場調査で日本では新鮮さと脂っこいサバがトレンドに非常によく合うと分析している。私たちの夢は、日本人にノルウェー産のサーモンのさまざまな調理方法を楽しんでもらうことであり、漁業者と日本の消費者の懸け橋だと自負しています」と話していました。