ウクライナからの避難者 支援に必要な手続きの迅速化が課題

ウクライナへの軍事侵攻から24日で2か月となります。これまでに日本に避難してきた人は680人を超えていますが、住民登録などに必要な在留資格の変更を行った人はおよそ3人に1人で、支援に必要な手続きを迅速に進められるかが課題となっています。

政府はウクライナからの避難民を積極的に受け入れる方針で、日本に避難してきた人は23日までに680人を超えています。

避難してきた人たちには90日間の「短期滞在」の在留資格が付与され、本人が希望すれば就労が可能で1年間滞在できる「特定活動」の在留資格に変更できます。

この在留資格に変更すると、住民登録をして国民健康保険に加入したり、銀行口座を開設したりすることができますが、出入国在留管理庁によりますと、今月20日の時点で在留資格を変更した人は214人と全体のおよそ3分の1だということです。

また、出入国在留管理庁には自治体や企業などから住居や就労先などの支援の申し出が、今月21日の時点で1271件寄せられているということですが、これらの情報提供に基づいて本格的に支援が始まるのは来月以降になる見通しです。

軍事侵攻から2か月がたち、避難生活の長期化が予想されるなか、国と自治体が連携して、支援に必要な手続きを迅速に進められるかが課題となっています。

在留資格を変更した避難者は

埼玉県に住む娘のもとに先月、避難してきた夫妻は日本での生活の長期化を見据え、在留資格を変更し、25日、市役所で住民登録を行う予定です。
一方、避難生活が1か月を超えるなか、日本語が話せない人たちを受け入れている親族も、手続きへの付き添いや生活のサポートに疲労やストレスを感じ始めています。

ウクライナ東部に住んでいたリボフ・ヴィルリッチさん(59)は、のセルヒィ・ヴィルリッチさん(66)、孫のブラッド・ブラウンさん(12)とともに埼玉県坂戸市に住んでいる娘の根本ユリアさん夫妻を頼って、先月10日に入国し、一緒に生活しています。

3人は、住民登録や銀行口座の開設などに必要な在留資格の変更を先月下旬に申請し、およそ1か月たった22日、変更が認められました。

そして、ユリアさん夫妻の車で、およそ1時間かけてさいたま市にある入国管理局の出張所に向かうと、窓口で3時間待ったあと、在留カードを受け取ることができました。3人は25日、市役所で住民登録を行う予定です。

リボフさんは「少し時間がかかりましたが、ようやく在留カードを手にすることができました。何か仕事をやりたい気持ちが強いので本格的に仕事を探したいです」と話していました。
一方、ユリアさんは5歳の子どもの育児にも追われていて、避難生活が1か月を超えるなか、日本語が話せない両親たちのサポートと育児の両立に疲れやストレスを感じています。

両親が病院や役所の手続き、買い物などに出かける際には、必ず付き添っているということです。

ユリアさんは「家族の命が一番大事なので、近くいて無事でいてくれるのはうれしいですが、常にサポートが必要な状態なのでストレスや疲れがたまっている部分もあります。少しでも支援があると負担が少なくなると思います」と話していました。

東京23区 支援の現状は

ウクライナから避難してきた人への支援などについて、今月21日と22日に東京23区に聞いたところ、「避難者の人数などの把握ができないため支援策がつくれない」といった声が出ていて、避難してきた人を把握し支援につなげるために必要となる在留資格の変更などが進んでいない状況が浮き彫りになっています。

このなかで、ウクライナから避難してきた人がいるか東京23区に聞いたところ、7つの区が「居住している」と回答した一方、16の区は「居住していない」「把握していない」などと回答しました。

そして避難してきた人への区独自の支援については「ある」が10の区、「検討中」または「ない」が13の区となっています。

「ある」とした区は独自の支援としてウクライナ語の通訳を置いた相談窓口の設置や一時金の支給、自動翻訳機の貸し出しなどを挙げています。

また、独自の支援を「検討中」または「ない」とした区からは「避難者の人数などの把握ができないため支援策がつくれない」といった声が出ていて、自治体が避難してきた人を把握して支援するために必要となる在留資格の変更などが進んでいない状況が浮き彫りになっています。

江戸川区生活振興部の後藤隆部長は「独自に友人や知人を頼ってきた人は把握が難しい状況にあり、支援につなげにくい。在留資格を変更し住民登録をしてもらえれば病気やけが、子どもの学校など区民としてサービスを受けられるので、申請をお願いします」と話していました。
難民や移民に関する政策に詳しい名城大学法学部の近藤敦教授は「避難者がどこに住んでいるかを自治体が把握したり、支援団体が情報を伝えたりするうえでも、できるだけ速やかに住民登録が行われることが望ましい。そのためにも国は在留資格を切り替えることの重要性を避難した人たちに積極的に情報発信して伝えることが重要だ」と指摘しました。

そのうえで、「避難してきた人のサポートを家族や知人だけで担うのは非常に難しい。住民登録を速やかに行ったうえで、自治体や企業、民間団体が連絡を取り合ってその人に応じたサポートのメニューや体制を作ることが必要だ」と話しています。

受け入れ先がない人たちへの支援は

ウクライナから避難した人たちのうち、日本に親族や知人などの受け入れ先がない人については、政府が一時滞在先のホテルを確保し、政府の委託を受けた公益財団法人の「アジア福祉教育財団」の難民事業本部が食事の提供など生活支援をしています。

ホテルに滞在中は、1日当たり1人1000円、その後は1日当たり2400円などの生活費や一時金が支給され、医療費や就労支援などにかかる費用についても必要に応じて国が実費を負担する方針です。

日本に親族などの受け入れ先がある人については、日本財団が3年間で50億円余りを拠出し生活費として年間1人100万円などが支給されます。

日本財団には、今月20日の受け付け開始から22日午後5時までに142人分の申請が出され、書類審査などを経て準備が整えば、来月以降、支給を始めるということです。