体操 東京五輪金の橋本大輝が連覇 全日本選手権男子

個人総合で争われる体操の全日本選手権は、東京オリンピックで2つの金メダルを獲得した橋本大輝選手が連覇を果たしました。

個人総合で争われる体操の全日本選手権は東京 渋谷区の東京体育館で、ことしの世界選手権などの代表選考会を兼ねて開かれ、大会最終日の24日は男子の決勝が行われました。

東京オリンピックで2つの金メダルを獲得し、22日の予選で全体のトップだった橋本選手は、最初の種目のゆかで難度の高い技を次々と決め14.366を出し、続く課題のあん馬でもミスなく演技し勢いに乗りました。

4種目めの得意の跳馬では大技の「ロペス」を出して、14.966の高得点をマークしました。
最後の鉄棒では予選よりも難度を上げた構成で臨み、新たに組み込んだF難度の大技「リューキン」などの難しい技を高い完成度でこなし、着地も完璧に決めて、15.433の高得点が出ました。

橋本選手は予選と決勝の合計で174.161として、2位と2.898の差をつけ連覇を果たしました。

2位は2019年の世界選手権代表、神本雄也選手で171.263、3位は土井陵輔選手で170.197でした。

橋本「内村さんを頭に思い描いて…」

大会連覇を達成した橋本選手は「予選ではミスが出たが、それでもトップに立てていたので、精神的に楽に決勝に臨むことができた。右の太ももに痛みがあり、試合をとおしきることを優先して、ゆかではG難度のリ・ジョンソンをやめる決断をした。前半は少し焦った部分もあったが、後半は落ち着いてできたと思う」と振り返りました。

最後の種目の鉄棒で着地をほぼ完璧に決めるなど試合を通して着地の減点が少なかったことについて「オフの間に課題の着地を絶対に止めるために徹底的に練習してきた。着地は技ではないが、1つの技だと思ってどんなに簡単な技の着地も完璧に決められるように意識してきた。最後の鉄棒では内村航平さんを頭に思い描いて絶対に止めてやるという気持ちで止めました」と時折、笑顔を見せながら話していました。

来月のNHK杯に向けては「この決勝ではできなかった技があるので、NHK杯ではより難度の高い演技構成で臨みたい。予選でミスをしてしまったし、まだまだ伸びしろはある。NHK杯やその先の大会に向けてより頑張っていきたい」と意気込みを話していました。

2位の神本「若い選手にはまだ負けない」

2位に入った神本雄也選手は「予選と決勝の2日間で大きなミスがなかった。納得のいく演技ができてとても満足している。今大会は会場に入る前から自分の状態がかなり仕上がっていたので、たとえミスが出たとしてもそれに左右されないくらいの自信があった」と手応えを口にしました。
そして、若い世代の選手が台頭してきたことについては「橋本大輝選手のような若い選手が出てきたと思ったらより若い世代がどんどん出てきて、押し出されるようにベテランの年齢になってしまった。ただ、若い選手にはまだ負けない。技の難しさでは勝てないが、技の質や出来栄え、着地などにこだわって、突き詰めてやっていきたい」と話していました。

3位の土井「内村さんの指導がとても大きかった」

3位に入った土井陵輔選手は「予選でミスをして得点が低かったので不安だったが、3位に入ることができて素直にうれしい。平行棒で、難しい技を抜いて確実に出来栄え点を取りにいくなど、予選から修正した種目がうまくいったのがよかったと思う」と笑顔で話しました。

飛躍の要因については先月、現役を引退した内村航平さんから指導を受けたことをあげ「内村さんの指導がとても大きかった。一つ一つの技の質を丁寧にあげていくことや、より自分に合ったトレーニングを教えていただいた。まだまだ出来栄え点が足りないので、NHK杯までの間で教えてもらう機会があれば、いろいろと聞きたい」と話していました。

そして、「同世代の橋本大輝選手や北園丈琉選手が東京オリンピックで活躍して悔しい思いをしていた。少しずつだが、追いついていけるとうれしい」と話していました。

5位の萱「しっかり上を見て調整をしていきたい」

5位に終わった東京オリンピック代表の萱和磨選手は「予選からミスが続き、自分らしくない試合をしてしまった。きょうも最初の種目の得意のあん馬で落下し、“何をやってるんだ”と思った。ただ、そこからは自分を奮い立たせて種目に臨みいい演技ができたと思う」と淡々と話しました。

来月のNHK杯に向けては「苦しい点差だが、まだまだわからない。東京オリンピックで経験は積んだが、まだまだチャレンジャー。点数は気にしすぎず、しっかり上を見て調整をしていきたい」と話していました。

10位の北園「自分が情けない」

10位に終わった東京オリンピック代表の北園丈琉選手は予選と決勝を通してミスが目立ったことを踏まえ「失敗を続けてしまって自分が情けない。ただ、これで終わりではなくまだNHK杯や種目別の大会が続くので、切り替えてやるしかない。この1か月で強くなれると思うので、期待していてほしい」と力強く話しました。

自身と同じ世代やより若い選手たちが台頭したことについては「小さい頃から一緒に戦ってきた選手たちとこういう舞台で競り合えて、まるでいつもの練習みたいだった。これからはこの世代を引っ張っていく存在になるので、自覚を持ってやっていきたい。まずは来月のNHK杯で6種目で安定した演技を見せる」と決意を話していました。

水鳥男子強化本部長「橋本 エースとして成長し続けている」

日本体操協会の水鳥寿思男子強化本部長は「選手がいろいろな構成に挑戦していたのでミスが出るか心配だった。将来を託したいと思っていた若手選手が力をつけてきている。それぞれ違う持ち味はあるが正確性や美しさがあり、日本の武器になる選手で今後もかなり期待できる」と大会を振り返りました。

また東京オリンピックの代表選手にミスが多く出たことについて「パリ大会での金メダルを目指している選手たちは、総合的な向上へ苦手な部分を改善しようと取り組む中、道半ばでのチャレンジだと思っているが、きょうやりきれなかったのは残念だ」と話しました。

そのうえで橋本大輝選手については「いろいろ苦しんでいたところもあったが、鉄棒でも世界トップレベルの演技を見せてくれた。エースとして成長し続けている」とたたえていました。
今大会、日本のエース、橋本選手は個人総合の金メダリストとして「世界一の自分を超える演技」を目指して臨み、そのことばどおりに精神面と技術面の両方で成長した姿を見せました。

22日の予選で橋本選手は「集中できなかった」と2種目めの平行棒で落下し、続く、得意の鉄棒で組み込む予定だったF難度の大技「リューキン」を入れることができませんでした。さらに着地も乱れるなど、前半の3種目を終えて8位と大きく出遅れました。

「心のひっかかりを何とかしなければいけない」と危機感を抱き後半の4種目めに入る前にこれまでしたことがなかった1分間のめい想をしました。
橋本選手は「その1分間でこれからの3種目をどう戦うか考え、さらに自分が何をやっているのかを考えることができた時間だった。体操の技術より、自分の体操を見つめ直す1分間になった」と振り返りました。
精神面の成長が冷静な対応を可能にし、気持ちを切り替えるすべを試合中に見つけました。

その結果が後半の追い上げにつながり、心の余裕を持って決勝に臨むことができたのです。さらに「世界一の自分を超える」という目標の中で、今大会では、課題としていた“着地”で自分を超えることができました。

去年の世界選手権、最後の種目となった得意の鉄棒でG難度の「カッシーナ」など手放し技を次々と決めたものの、着地がやや乱れ、わずか0.017届かず銀メダルとなった橋本選手。そこで感じた悔しさから、着地を11個目の技だと捉えて意識改革に励んできました。

これまで弱かったという体幹のトレーニングを練習前に必ず20分間行ったり、難度の低い技で着地を止める練習をひたすら繰り返すことで、着地での体重の乗り方が徐々にわかるようになってきたといいます。

その成果が発揮されたのが今大会の決勝でした。
最後の種目、鉄棒で着地をほぼ完ぺきに決めるなど大会を通して着地の減点が少なかった橋本選手。着地で世界一の自分を超えられたことが一番の収穫でした。

日本体操協会の水鳥男子強化本部長は「演技構成が難しい中で、着地までの意識はすごく難しかったと思うが、鉄棒でしっかり決めてくれた。着地の意識がさらに高まっただけでなく、全体的にレベルが上がってきている」と評価しました。

来月のNHK杯に向けて橋本選手は「NHK杯でも世界一をとった自分、去年の自分を超える演技をして連覇をしたい」とさらなる高みを目指しています。