ロシア軍 東部に部隊投入 南部では併合目指す住民投票の動きか

ロシア軍は東部マリウポリの掌握を宣言したあと東部を中心に部隊を投入し、これに対しウクライナ側は徹底抗戦する構えを見せています。また、ウクライナ側は、ロシアが南部ヘルソン州などでロシアへの併合を目指す住民投票を準備する動きがあるとして、警戒を強めています。

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、21日、東部の要衝マリウポリを掌握したと宣言し、その後もウクライナ側の部隊が残っている製鉄所の一帯の封鎖を続けています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は22日に公開した動画で「ウクライナ軍は、東部と南部でロシアの侵略者による攻撃を阻止し続けている。東部ハルキウ州のイジューム方面やドンバス地域、マリウポリなどは、この戦争の行く末と私たちの国の未来が決まる場所だ」と述べ、マリウポリでも引き続き徹底抗戦する構えを示しました。

ロシア軍はマリウポリから東部のほかの地域へ部隊を移動させるねらいとみられますが、イギリス国防省は23日「ロシア側がマリウポリを占領したと主張しているにもかかわらず激しい戦闘が続いて占領の試みが妨げられ、東部ドンバス地域でロシア側が想定していた進軍がさらに遅れている」と分析しています。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は22日、「ロシア軍は製鉄所に残る兵士や市民を飢えさせようとしている。市民を避難させようとはしていない」と指摘しています。

一方、ロシア国防省は23日、各地をミサイルなどで攻撃し東部ドネツク州でミサイルなどの貯蔵施設を破壊したほか、南部ミコライウ州でウクライナ軍の無人機15機を破壊したと発表し、東部や南部での攻撃を継続しています。

これに対しウクライナ国防省の報道官は22日、「ロシア軍は東部のドネツク州とルハンシク州の完全掌握と、南部クリミアからの陸上回廊の維持を目的に攻勢をかけている」という分析を示しました。

そのうえで「ロシアは南部へルソン州や南東部ザポリージャ州をロシアに併合しようと、いわゆる『住民投票』を準備している」と述べ、違法な手続きで領土を拡大しようとする動きに警戒を強めています。

ロシアのプーチン大統領は、旧ソビエトが第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した来月9日の「戦勝記念日」に向けて国内向けに勝利を強調したい思惑があるとされ、当面は東部2州からロシアが一方的に併合した南部クリミアまでの地域を支配下に置くことをねらい、侵攻を継続するものとみられます。